(484)【日刊Sumai再録】漏水補修工事の最難関は入居者さんとの交渉と日程調整だった

トラブルや失敗

今回は「日刊Sumai」の再録記事。

前回まで数回にわたってご紹介してきた部屋で起きた漏水トラブルの際に、上階の入居者さんとの交渉に苦戦した体験談です。公開時のタイトルも同じく「漏水補修工事の最難関は入居者さんとの交渉と日程調整だった」(2019年7月15日公開)。

「日刊Sumai」の連載については僕にタイトルの決定権がなかったので、掲載時に微妙な気持ちになることもしばしばでしたが、ことこの記事にかんしては直截なこのタイトルで文句はなく、そのままで再録いたしました。

なお、以下の記事は漏水トラブルに関する続き物の一部になります。冒頭の「前回」、末尾の「次回」はそれぞれ「日刊Sumai」掲載時のもので、このブログについてではありませんのでご注意くださいませ。また、写真については掲載時のフリー素材を削除し、アサクラが撮影した写真を挿入しています。

では、どうぞ。


***


【漏水補修工事の最難関は入居者さんとの交渉と日程調整だった】

水漏れ箇所をなんとか特定した前回に続き、今回は補修工事のお話。

どこから水が漏れたか特定できれば、あとはそこを直すだけだからそんなに大変じゃないよねと思っていましたが、とんだ誤解でした。実は、工事の日程調整こそ最大の難関だったのです。


■入居者さんに相談するも返事は「No!」

工事前のお風呂
※漏水の原因となった上階の浴室。防水の劣化が目立つ。

業者さんからは、日程を決めてもらえればいつでも防水屋さんを呼んで補修工事をすると言われていました。

ところが、ここで問題が持ち上がります。

もし万全な補修工事をおこなうなら、3日間ほどかけてお風呂場全体を防水工事するべきだというのです。しかし、3日間もお風呂が使えなくなるのはさすがに困ります。

なんとか応急措置的な補修でいいからできないかと相談し、該当箇所のみを防水してもらうことになりました。その場合でも、少なくとも1日はお風呂を使用しない状態にして補修箇所を乾いた状態にすることが必要です。

工事前日と当日の2日はお風呂を使えないということになります。しかし、もう一度漏水が起こってしまえば下の階の入居者さんにとっては致命的。

そこで、漏水元の部屋の入居者さんに相談することにしました。ふだんほとんどコミュニケーションを取っていない方だけに、いつ連絡したらいいかも手探り。

前回、朝に連絡していまひとつなリアクションだったので、今度は夜9時頃に電話してみましたが……、

「今、仕事中なんで、手短にお願いできますか」と先制パンチを食らいました。

工事について相談してはみたものの、「お風呂が使えないのは困ります」とあっさりノー。


■年末年始に工事してくれる防水屋さんを探すことに

もしこれが「蛇口を締め忘れた」場合のように入居者さんの過失なら、こちらも強く出られますが、あくまで原因はうちのマンションの設備の老朽化。

「そこをなんとか、なにとぞお願いいたします」と拝み倒すしかありません。すると、仕方ないと思ったのか、こんな返事が。

「年末年始なら帰省して留守なので、いつでもいいですけど」

そう、漏水が起こったのは、12月も半ばを過ぎた頃でした。まったくよりによってこんなときにと思いましたが、こんなときでなければ入居者さんが長期間留守にすることもありません。

このタイミングしかない!

年末に工事するということで話をつけ、電話を切ったのですが……よく考えたら、年末に防水屋さんが営業してるわけないじゃん!どうしよう、もう年末にやるって言っちゃったし……。

しかたなく業者さんに相談しましたが、当然のごとく「その時期は難しい」との返事。こうなれば、こちらも拝み倒すしかありません。

「なんとか年末年始のどこかで工事してくれる業者さんを見つけてくれませんか?」

こちらの窮状を察してくれたのか、業者さんも探してみますと言ってくれました。


■1日をめぐる攻防~最後はお金で決着しました

もじもじしながら待つこと2日。工事してくれる防水屋さんが見つかったという吉報が。営業は28日までだけど、1日のばして29日までならやりますよ、とのこと。小さい会社で、あるていど融通をきかせてくれる業者さんだったそうです。

助かった!

これで29日に工事をすればなんとか乗り切れると思ったのですが……、あれ?たしか、前日はお風呂使わないで乾燥させなきゃいけないんだよね?前日はまだ平日だからダメだ!

しかし、もうこれ以外の選択肢はありません。

こうなったら、入居者さんになんとか前日だけはお風呂を使わないでいただくようお願いすべく電話してみたのですが……無情にも返事は「ノー」。

「1日でもお風呂が使えないのは困ります」

そうですよね……。

でも、これ以外の選択肢はないんです。またも拝み倒し攻撃で食い下がります。

すると、先方からこんな言葉が出てきました。

「そこまで言うなら、それなりのことをしてほしいんですが」

ん?それって、お金?お金ですね?

こんなとき、僕の中ではお安めのシティホテルの一泊を基準としています。

「では、ホテルに泊まっていただくとして、5000円お支払いするということでいかがでしょうか。もちろん、お風呂さえ使わないでいただければ、ホテルに泊まっていただく必要はございませんので」

この提案で、ようやくオッケーがいただけました。

補修工事後のお風呂
※防水補修後の浴室。ドア回りを中心にシーリングを施した。

貸す側は圧倒的に立場が弱いだけに、こういう交渉は本当に大変です。大家さんというと「ゴロゴロしてるだけでお金が入ってくる濡れ手で粟なイメージ」があるかもしれませんが、自主管理物件はそんなに甘くないのです。

ともあれ、なんとか補修工事のめどは立ちました。次回は、工事日当日の模様と修理費などについて書きます。


***


このエピソードには後日談があります。

シティホテル一泊分お支払いして前日お風呂を使わない約束をしたにもかかわらず、工事当日にお風呂を見てみるとバッチリ濡れていて、あきらかに使ったあとが見られたのでした。結局、お金だけ取られたかたちですが、もめても得がないのが賃貸経営。泣き寝入りしました。

不幸中の幸いといいますか、防水業者さんがドライヤーで丁寧に乾かしてから工事をおこなってくれたおかげで、なんとか無事に補修工事は完了し、二度と漏水は起こりませんでした。

もうひとつ、補足を。

この記事ではついつい入居者さんを「悪者」のように書いてしまいましたが、振り返ってみると「この方はトラブルが起こるより前に、すでにうちのマンションにかなり悪い印象をお持ちだったのではないか」と思い当たります。

というのも、このトラブルから数年経ったあと、同じ方からカギをなくしてしまったという連絡があり、当日のうちにマスターキーを複製してスペアをお持ちしたところ、たいそう感謝されました。これをきっかけに少しずつ雪解けが進み、最後にはかなり話しやすくなったからです。

つまり、根っから「大家は敵」と思っていたわけではなく、過去にこのマンションで何らかのイヤな経験をしたために、大家を継いだ僕にも冷たく対応したと思われるフシがあるのです。

思い浮かぶのは先代の大家である叔父のことです。彼は年功序列・男尊女卑を隠さない旧態然とした家父長的な人間だったので、たとえ非があっても目下の人間に頭を下げるということを知らない人間でした。

以前、叔父が雇った防水業者が我が家のインターネット回線を切断してしまい、しばらくネットが使えなくなってすごく迷惑したことがありましたが、「賃貸やってるとこういうこともあるんだよ、いい勉強になったろう」と言われて唖然とした記憶があります。

出入りの業者への当たりもキツい人で電気屋さんや不動産屋さんを痛罵するのを何度も目にしたことがあります。叔父には叔父の事情があったのでしょうが、「マンションに協力してくれる人にあの口のきき方はないよな」と心ひそかに思っておりました。

そんな叔父ですから、たとえマンションの入居者さん(お客様)が相手でも知らず知らず失礼な口のきき方をしていた、なんてことは十分にありえると思います。思えば、あの入居者さんもきっと叔父からひどい対応をされて大家嫌いになったんだろうな、と。

とまあ、愚痴めいた話はこのへんにするとしても、やっぱり大家と店子の信頼関係は本当に大事で、ふだんからちゃんとおつきあいしていればトラブルのときに冷たくされるなんてことはそうそうないはずなんです。というか、そもそもトラブルが起きた際に「初めまして」になる賃貸物件がおかしいわけで、自分的にはこれからも入居者さんと密にコミュニケーションを取っていきたいな、と思った次第です。

アサクラ

大家業。世田谷のマンションと東京西部の山奥にある小屋を管理&経営しています。最近は熱海に購入したマンションの一室をDIYで修繕中。ESSE online(エ...

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