(64)小さな家のための小さなロッキングチェアをダルトンで見つけた
前回は、山小屋に設けた大きな窓について書きました。
せっかく居心地のいい窓辺を作ったのですから、のんびりと竹林を眺めるためにイスのひとつもほしくなるもの。
「別荘」「イス」とくれば……そう、ロッキングチェアですね。
気の利いた別荘にけっこうな確率で置いてあり、リラックスタイムを演出してくれるあいつです。
あのユラユラした座り心地が毎日を過ごす家とはちがう非日常の空間にマッチするのでしょう。
でもね、とにかくロッキングチェアって大きいんですよ。
体を預けてゆったり座るものですから仕方ないんでしょうけど、それが前後に揺れるわけですから、ふつうのイスよりもはるかに広い面積が必要。
というか、せこせこスペースを気にしてるようじゃロッキングチェアは置けないのです。
わが山小屋といえば、一階の床面積はたったの六畳で、そのうちリビングと言える空間はわずかに二畳。
その二畳だって、大きな窓で開放感を演出したり、トイレの奥行をギリギリまで狭めたり、涙ぐましい努力で作り出したスペースなのです。
もしイス選びに失敗すれば、立つも座るも面倒で狭さばかりが気になる残念リビングになることでしょう。
やっぱりロッキングチェアはムリか……と思っていたとき、たまたま「日刊Sumai」の取材で訪れた自由が丘のダルトン(Dulton)で見つけてしまったのです。
他に類を見ないほどコンパクトなロッキングチェア。
公式ページの情報によれば、高さは65センチ、横幅は43センチ、奥行は67センチだそうです。
もし「子ども用」と書かれていたら納得するくらいのサイズです。
座り心地を追及するあまりガラがデカいやつらが幅をきかすロッキングチェア界においては異色のサイズ感が気に入りました。
そうだよ、日本の住宅事情を考えたら、むしろこっちがスタンダードでしょうよ。
価格もわりとリーズナブル。
2万、3万は当たり前、5万を超えるものもざらというロッキングチェアの中で「13,000円(税込み14,040円)」は破格と言ってもいいのではないでしょうか。
これなら子ども用としてだれかにプレゼントしてみることだってできそうです。
カラーバリエーションが豊富なのもよいですね。
ヘリンボーンが4色、スイングが4色で計8色。
これだけあれば、ひとつくらいはしっくりくるだろうという豊富なラインナップです。
我が家にやってきたのは「マスタードカラーのヘリンボーン」。
優しいイエローカラーは、以前ご紹介した「カウニステ(kauniste)」の生地ともマッチします。
ちなみに、陽光で見ると、こんな色。
だいぶ印象が変わりますが、優しい色です。
なんといっても、たった二畳のリビングに置いてもこのコンパクト感。
期待通り、いや、思った以上に小さくて驚きました。
事実、うちの山小屋を訪れた人の多くが「こんな小さなロッキングチェア、座れるの?」って顔をします。
でも、実際に腰かけてみると「あ、意外にいいかも」という反応が返ってくることが多いんです。
身長150センチの母は「ちょうどいい座り心地」と言い「自宅の空きスペースにほしい」と言いました。
身長170センチの友人は「ここでゆっくり本でも読みたいね」と言いました。
身長175センチくらいはあろうガラス屋さんは「座ったときに体にフィットする感覚がして座りやすい」と言いました。
僕自身、店頭で座ってみたときに「思ったよりもリラックスできそう」と感じたのでした。
もちろん、中には「これはちょっとムリかな…」と言った人もいますけど、どちらかといえば少数派。
小さいけれど座り心地はバカにできない。
そんなロッキングチェアなのです。
腰かけると視線の位置が低くなり、やや見上げるような角度になります。
そうすると、目の前の竹林が、
こんな感じに見えます。
ぼーっと外を眺めるのもいいですし、愛読書を開いて時折外に目をやるのも楽しいでしょう。
僕はたまに趣味の笛を持ち込んで緑を眺めながら吹いたりしています。
ヘタな趣味も少しだけ上手になったように聞こえるのはたぶん錯覚ですが。
とまあ、このロッキングチェアには本当に満足しているのですが、あまり美化しすぎるのもアレなので、我が山小屋の現実(=狭さ)がわかる写真もお見せしましょう。
これは外の窓から室内を撮った写真。
こうして見ると「リビング」とは名ばかりの「廊下」のような狭小スペースであることがわかると思います。
まあ、既存の建物をリノベーションする以上、物件の広さは受け入れなければならないこと。
狭さとうまくつきあっていくための工夫のひとつが、このロッキングチェアだと思っていただければ幸いです。