(118)ウォシュレットのリモコンが指定とちがう場所に設置された理由を考える

トラブルや失敗

前回、こちらが指定したのとは異なる給湯器パネルが設置されてしまったトラブルについて書きました。

ひとまずの原因は「現場の業者が得意なメーカーの製品を設置してしまった」ということだったのですが、なぜ施主のリクエストがあったにもかかわらず、こんな事態が起こってしまうのかについて、もう少し突っ込んで推察してみたいと思います。

今回の話については、僕の経験にもとづいているとはいえ、推測と推論を多く含みます。

「そういうケースもあるかも」くらいのつもりでお聞きいただければ幸いです。

まず、考えられる要因は「施主の言うことを聞くという習慣(文化)が業界に(あまり)ない」ということが挙げられます。

一度でも家づくりをしたことのある方ならおわかりでしょうが、施主が決めなければならないことは本当にたくさんあります。

インテリアに関心がある人ならともかく、世の中の大抵の施主さんは細かいことを決めるのを面倒くさがります。

たとえば「壁紙は白がいい」とは言っても、「どのメーカーの〇〇番で」と決めるところまではやりたくないとか。

僕のように賃貸を経営している大家さんですら、そういう人がたくさんいます。

うちのマンションの先代も「床の色とか壁の色とか、いちいち確認されて面倒だ」と愚痴っていたのを思い出します。

こうして、工事にまつわるさまざまな決定が工事業者さんに丸投げされてしまうことになります(その結果、金太郎飴のごとき物件が繰り返し作られるわけですが、それについてはまた別の機会に)。

この丸投げが繰り返された結果、業者が施主の判断をいちいち仰がずに細かいことを自分で決めていくという作業パターンが常態化してしまったのではないかと僕は推察しています。

給湯器の操作パネル

我が家の例でいえば「ガス給湯器の操作パネルをどれにするか」なんてことは、施主の希望を聞くような類のことではないと考えられているのではないでしょうか。

こうした環境下では、施主の細かいリクエストを現場に伝えるルートを形成すること自体が難しくなります。

前回にも挙げましたが、僕は工事にあたってはリクエストを細かくまとめた書類を作って渡すようにしています。

しかし、今回の工事を経験して感じましたが、せっかくまとめたリクエストも、あまりきちんと目を通してもらえていないようです。

現場を監督してくれたKさんは、プリントアウトしたリクエスト書類を現場に貼り出してくれたりもしていましたが、

大窓に貼られたリクエスト書類

それでも僕のリクエストどおりにいかないことがしばしばでした。

ひょっとしたら、現場の業者さんは、たとえ施主のリクエストが耳に入っていても、あえて聞かないこともあるのではないか、という疑念が湧いてきます。

これが、ふたつめの要因「施主の希望どおりにせず、業者が(勝手に)修正する」です。

施主の言うことが、現場の職人さんに軽んじられてしまうことはよくあります。

「しょせんは素人」の施主が、あれこれ細かいことを言うのを好まない方も当然いるでしょう。

素人の言うとおりにしたら、ちゃんとしたものができないから話半分くらいに聞いておこうという場合もありそうです。

それがわかるのが、いわゆる「工事の定石」に反するリクエストを施主が出した場合だと思います。

山小屋のトイレにウォシュレットの操作パネルを設置してもらったときの例を挙げましょう。

図面で見ると、トイレはこんな感じ。

トイレの図面

便器に座って左側に袖壁があるので、赤で囲ったあたりにトイレットペーパーのホルダーやウォシュレットの操作パネルを設置したいとリクエストを出しました。

ここなら袖壁に隠れるので、ドアを開けたとき視界にゴチャゴチャしたものが入らず、便器と丸い窓だけが目に入るようになるという狙いがあったからです。

ところが、トイレの設置後に現場に行くと、

トイレ

え、なんで反対側に付いてるの?

ウォシュレットの操作パネル

Kさんに確認してもらうと「ふつうは座って右側につけるものだ」ということで業者さんの判断で設置されてしまったとかで……。

当然ながら、現場の業者さんにはプロとしての知識(に裏打ちされた自負とプライド)があり、セオリーがあります。

それに反するリクエストを出したとき、業者さんとしては「ああ、本来こうするもんだって知らなくて言ってるんだな」と思うのでしょうね。

「素人はこれだから」的なあきれ顔でなのか、「無知な施主をプロがしっかりフォローしてやろう」という親心なのかはわかりませんが、何も言わずに「正しい位置」に直されてしまったのかな、と。

ひとこと相談してくれればよかったのに……と無念な気持ち。

操作パネル自体を反対に移し直してもらうのは簡単でした。

移設後の操作パネル

問題は最初に設置した場所にアンカーの穴が残ってしまったこと。

アンカー跡

せっかく苦労して珪藻土を塗ったのに、

こんな穴が残ったら台無しです。

Kさんは「左官職人を手配して直します」と言ってくれたのですが、詳しく聞いてみると、穴の部分だけ珪藻土を重ねて塗るのはやはり難しいらしく、壁一面をぜんぶ塗り直すことになるんだそう。

もちろん、その分の材料費と人件費は向こう持ちなんですが、さすがにそこまでしてもらう必要はないな、というのが僕の判断でした。

なんというか、いくら他人の金でも大枚はたいてやることなのかと思ってしまって。

幸い、トイレの壁に使った練り済みの珪藻土は少しだけ余っており、それを上からDIYでざっくり塗りました。

珪藻土を塗り直している

もともと素人が失敗をごまかす感じで塗ったランダム模様だから、プロにリカバーしてもらうのも気が引けるし。

珪藻土を塗った跡

塗った直後は違和感アリアリでしたが、だんだん乾いてくるとなじんできます。

珪藻土が乾いた後

これが完全に乾いた後。

よく見ると塗り直したところがわかるけど「こんな細かいとこ、だれも見ないよね!」ということで結果オーライとしました。

完成後のトイレ

個人的には、トイレのドアを開けたときに、丸い窓と便器以外には何も目に入らない状態にしたかったので、それが叶ってよかったです。

でも、余計な手間がかかったのも事実。

最初からこっちの言うとおりに設置しておいてくれればな、とは思います。

以上の経験から学んだことは、自分の希望は口をすっぱくして、しつこいくらい伝えてもいいんじゃないか、ということです。

一度メールや電話したからOKと思うんじゃなく、二度三度の予防線を張っておくほうが間違いは起こりにくくなるものですし、無視もできません

前回の給湯器パネルの件では、誤った位置に設置されたコードを、

間違ったコード

正しい位置に直してもらいましたが、

正しいコード位置

これでもまだ別の給湯器パネルが設置される可能性がないとは言えなかったので、こんなふうに注意書きをしておきました。

現場に注意書き

これ以外にも、気がついたときは、なるべく貼り紙するようにしました。

現場に貼り紙

さすがにここまでされたら無視できないようで、きちんとリクエストどおりに出来上がるようになりました。

こちらがしっかり言語化したリクエストについてはこれでいいとして、また別の問題もあります。

それは「当然こうなる」と頭の中で想定していたのに、異なる仕上がりになってしまったというトラブルです。

次回は、せっかくの大きな窓からの眺めを台無しにするガッカリな水道管についてお話します。

アサクラ

大家業。世田谷のマンションと東京西部の山奥にある小屋を管理&経営。 『日刊Sumai』(扶桑社)で「なんでも大家日記@世田谷」を連載中。 https://s...

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