(178)500万円かけて小屋をリノベーションして実感したお金の話

お金のこと

前回までの3回にわたってリノベーションにかかったコストを分野別にまとめました。

まず、業者さんに発注したぶんの工事代金の総額が「約378万円」。

続いて僕がDIYでおこなった内装の仕上げ作業に用いた建材の総額が「約54万円(540,704円)」。

最後に、施主支給や家具・家電・雑貨に費やした金額の合計が「約55万円(552,362円)」でした。

以上を合計してトータルコストを計算すると「約487万円」という結果となりました。

リノベーションにかかった合計金額

この小屋をまるごとリノベーションするのに実に500万円近くの費用を投じたことになります。

こうして振り返るとけっこうな費用です。

「リノベーションあるある」かもしれませんが、使っているときは細切れにお金が出て行くので費用が膨れ上がっていることについつい思いが至らなくなってしまうものです。

今回は、この500万円の出費をどうとらえるべきか、多角的に考えてみたいと思います。


■世田谷のマンションの工事費用との比較

僕が管理する世田谷のマンションの一室をリノベーションするときは大体350万円~400万円くらいかかります。

世田谷のマンションの一室

トイレや洗面、キッチンなどすべて入れ換えた場合、つまりフルリノベーションの価格と思ってください。

山小屋の外装工事に費やした100万円と家電や雑貨に費やした28万円を除くと、359万円になりますから、マンション一室をまるごとリノベしたのと同じくらいの内装工事費を使ったと言えます。

試しに費用を360万円と仮定して平米単価をくらべてみましょう。

世田谷のマンションが約30平米に対して360万円だと平米単価は「12万円」

世田谷のマンションの一室

一方、山小屋は約20平米に対して360万円ですから平米単価は「18万円」

山小屋の二階

この12万と18万というのは、巷で言われるリノベーションの平米単価の平均的な価格帯の上限と下限に近い数字です。

しかし、世田谷のマンションは基本的にほとんどの工事を業者さんにお願いしているのに対し、山小屋では内装の仕上げはDIYでおこない、費用を削減したというちがいがあります。

それでも平米単価にして1.5倍の費用がかかったことを考えると、山小屋の工事はいつもより贅沢なリノベーションだったことはまちがいないでしょう。


■付加価値だからこそクオリティは高く

正直に告白しますが、ビジネス的な観点から見ると、今回のリノベーションに費やした500万円は短期的にはほぼ元が取れない投資です。

先ほど世田谷のマンションと比較しましたが、マンションへの投資は「家賃アップ」というわかりやすいかたちですぐにリターンがあります。

世田谷のマンションの一室

一方、今回の山小屋のリノベーションは入居者なら誰でも無料で宿泊できるサービス施設なので直接的な稼ぎは生みません。

あくまでマンションの付加価値を生むための投資でしかないのです。

だったらなるべく予算を抑えようという考えもあったかもしれません。

工事前の山小屋
リノベーション前の山小屋

外装は雨風をしのげるていどの最低限度の補修、内部も素泊まりのためのミニマムな設備を用意するというやり方をすれば、半額もかからなかったでしょう。

でも、僕の考えは逆でした。

付加価値は他のマンションとの差別化につながる部分ですから、そこにこそしっかりお金をかけようと考えたわけです。

山小屋の大きな窓

東京のはずれの山奥まで出かけて行く以上、そこに足を延ばすだけの魅力がある物件にしたかったですし、宿泊時にキャンプ場のような不自由を感じない清潔感のある設備を用意したかったのです。

この山小屋に泊まれるからこのマンションに入居しよう」と思えるくらいの物件を目指したつもりです。

結果的に500万円という費用がかかったことは仕方なかったと思っていますし、後悔はしていません。


■ゲストと一緒に自分も楽しむための場所でもある

さて、この山小屋ゲストハウス、宿泊者が増えれば増えるほど光熱費もかさみ、寝具の洗濯などメンテナンスにかかる手間も増えていくのですが、それはあまり負担に感じていません。

僕自身、春夏も頻繁に母屋を訪れますし、夏ともなれば毎週のように通っているので、仕事が少々増えてもかまいません。

時には僕のクルマでゲストと山小屋に行くこともありますし、一緒に食事したりトレッキングしたりするのも楽しいです(現在はコロナなのでそれもできませんが)。

その意味で、友人を招く延長のようなかたちで、マンションの入居者をもてなしています。

ビジネス的に見れば「賃貸マンションの付加価値」ですが、同時に大家の僕自身も楽しめる場所であるわけで、そこが単にビジネスで民泊や貸別荘を営む人とは決定的に異なる点なのです。

以前、山小屋を見に来てくれた東京R不動産の室田さんの言葉を借りれば「ホビー的不動産」と言ってもいいでしょう。

そんな僕から言えるのは、もしあなたが自分のために別荘をリノベーションするのであれば、他人(僕も含めて)の論じるお金の話に縛られ過ぎないほうがいいということです。

個人的には不動産の世界はお金の話ばかりが先行して、儲けたこと以外に価値がないと語られがちです。

その土俵の上で別荘のリノベーションを語れば、大抵は「無駄遣い」と切り捨てられてしまうでしょう。

でも、自分のための別荘ならもっと自由に発想できるはずです。

寝泊まりできる屋根があればそれでいいと思うなら費用はかなり削減できますし、逆にこだわりの詰まった別荘を作りたければ費用は天井知らずでしょう。

そのへんはどんな「別荘観」を持っているかによるわけで「費用がいくらだと正解とは言えない」のです。

別荘のメリットとデメリットについては以前も書きましたが、

自分が別荘とどんなふうに付き合い、そこにどれだけの価値が見出だせるかで、費やす金額も変わってくると思います。


■格安別荘を買うならそれなりの修繕費用は覚悟すべし

今や別荘がお金持ちの高嶺の花だった時代は終わりつつあります。

バブル時代に親が購入した築古別荘の管理を持て余す子ども世代は多く、近年は各地の別荘地で格安別荘が売りに出されています。

友人に付き合って山梨に別荘を見に行ったことがありますが、それなりに雰囲気のある山荘が150万円やら200万円やらで売りに出されているのには本当に驚きました。

この金額なら一般人にも手が届きます。

事実、格安別荘に関心を持つ方も増えていると見え、僕もSUUMOから取材を受けたことがあります。

【SUUMOジャーナル】150万円で買える!? 格安別荘の活用法と注意点

ただし、格安物件は買ってからが大変です。

僕は祖父から物件を引き継いで管理していますが、築30年頃までほぼノーメンテナンスだったツケを払う日々が続いています。

2009年から2018年までの10年間で修繕に費やしたお金は実に250万円以上

母屋の修繕費用一覧

詳しくは「日刊Sumai」の連載をごらんください。

これを一年あたりに換算すると毎年25万円かかる計算です。

この記事を書いてから2年が経過しましたが、あいかわらず出費は続いています。

2019年の春にはエアコンのインバータ基盤を修理して28,372円、

エアコン修理代金明細

秋には台風による床下浸水の復旧工事に188,100円がかかりました。

床下浸水の復旧工事の代金

2020年の梅雨にはルームドライヤーを設置して26,976円。

最近は、以前から調子が悪く追い焚きすると「ガコンガコン」音がする給湯器を交換したので233,000円かかりました。

このぶんだと毎年25万円のペースが今後も続きそうです。

破裂した水道管

以前、冬季に水道管が破裂して流れ出た水のせいで水まわりの床板がかなりダメージを受けてしまっているのですが、こちらはいまだ修理できていません。

漏水で傷んだ床

来年以降もいろいろと費用がかかることでしょう。

格安別荘を検討するなら、このへんの修繕費用については覚悟が必要です。


■水道光熱費や税金だって年間20万円くらいかかる

別荘を所有していると水道光熱費や税金などもかかります。

山小屋を1年運用して算出した年間の経費が「192,913円」。

山小屋の維持費

ネット回線などをあきらめて削減すれば、年間12万円(毎月1万円)くらいまで圧縮できるかもしれません。

母屋の写真

ちなみに、母屋のほうの維持費用については「日刊Sumai」の連載で書きました。

こちらの計算方法では、年20回訪問と仮定した交通費や、先ほど計算した一年あたりの修繕費25万円も含めて「年間およそ63万円」が必要と算出しましたが、それらを抜いて水道光熱費と税金だけに絞ると「年間およそ25万円」となります。

以上を総合すると、ネット環境なしのスモールハウスなら水道光熱費&税金で年間約12万円、我が家の母屋のようにムダに広いと年間約25万円ていどが必要という感じでしょうか。

広さの差が維持費の差に反映されたかたちです。

巷で売りに出されている中古の別荘は広くて安価な物件も多いはずですが、下手に手を出すと維持管理の費用がかさんで痛い目を見ますのでご注意を。


■格安別荘を購入しても10年維持したら合計1千万円?

最後に、参考までに中古の格安別荘を購入して維持管理していくためのお金の目安をまとめてみます。

まず物件の購入費用ですが、ここは物件価格+もろもろの初期費用を加えて「250万円」と想定することにします。

格安別荘だと購入後の屋根や外壁の修繕はほぼ必須なので、ここに「100万円」使います。

さらに、内装を自分好みにリノベーションするならDIY前提でも「200万円」くらいは必要でしょう。

ここまでで「550万円」。

すでに「格安」の雰囲気は薄れてくる価格ですね。

さらに、この物件を10年間所有し、維持費や修繕費を払ったとします。

水道光熱費と税金に年間20万円×10年で「200万円」。

修繕費に年間20万円×10年で「200万円」。

先の550万円と合わせると「950万円」で、あっという間に1千万円が見えてきます。

この価格は「しっかり修繕」&「しっかりメンテナンス」した価格ですから、どこかを省略すれば安上がりになると思います。

外壁修繕やメンテナンスを省くのは怖いから、内装をガマンでしょうか。

なんだか味気ない気もしますが。

ちなみに、別荘見学に行った際に不動産会社の方にうかがった話では、更地に新たに別荘を建てると、最低でも2000万円はかかり、こだわると3,000万、4,000万とどんどん増えていくということでした。

僕も山小屋の母屋を建て直そうか悩んだこともありましたが、この話を聞いて新築はないなと思いました。

ふだん暮らすわけでもない家にこれだけのお金を費やすのはさすがにありえないので、最近は母屋を快適にすべく少しずつリフォームを始めています。

母屋の新キッチン

ゲスト用の山小屋についてはそろそろネタ切れ感も出てきたので、今後は母屋のキッチンを新しくリフォームした話などもしていこうと思っています。

アサクラ

大家業。世田谷のマンションと東京西部の山奥にある小屋を管理&経営しています。最近は熱海に購入したマンションの一室をDIYで修繕中。ESSE online(エ...

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