(184)価格・見た目・性能――総合的に見て業務用キッチンは最強ではないか
前回、僕が管理する世田谷のマンションに導入したさまざまなキッチンについてご紹介しました。
今回は世田谷の自宅で愛用しているタニコー(tanico)の業務用キッチンをご紹介します。
業務用キッチンについては、以前「日刊Sumai」の連載でも書きました。
これを書いたときはキッチンを使用し始めてから3年目でしたが、今年で6年目に突入しています。
■選んだ理由は「安価で自由度が高い」
現在でも「業務用キッチンの長所はムダのないシンプルな使い心地である」という感想は変わりません。
ごらんのとおり、業務用キッチンはコンロ台やシンク、作業台と、用途ごとに独立しているので、間取りに合わせたレイアウトが可能です。
僕が業務用キッチンの採用を決めた理由もこれで、角の柱をうまく避けて配置できるキッチンがなかなか見つからず、業務用キッチンを組み合わせるのが最適と考えたからです。
最小限のパーツからシンプルに構成されているので、費用も意外に安価。
世田谷の自室に設置したときの費用をごらんください。
合計「149,200円」也。
激安とはいきませんが、オールステンレスであることを考えると安価だと思います。
ここに水栓(18,000円)やレンジフード(28,800円)が加わって、「203,200円」でした(設置費は別)。
以上は、コンロ台、作業台2つ、シンクの計4台を合わせた金額です。
さらにコストダウンをめざし、3台に絞って賃貸の部屋に設置したケースがこちら。
コンロ台、作業台、シンクの計3台で「115,824円」、水栓とレンジフードを足しても「162,624円」。
設置費を加えてもおよそ20万円です。
ちなみに、前回書いたとおり、リクシル(LIXIL)のアレスタでL字キッチンを選ぶと「255,000円」でしたから、L字キッチンとしてもリーズナブルだと思います。
IKEA(イケア)のステンレス棚などと組み合わせて、安価ながらもおしゃれに仕上がったと自負しています。
賃貸のキッチンの中ではいちばん気に入っています。
安価な理由のひとつにトビラなどの建具がほとんどないことが挙げられます。
オープン収納は好き嫌いが分かれるかもしれませんが、便利なのは一目で何がどこにあるかわかること。
実家のキッチンには収納たっぷりの戸棚がありますが、母親はどこに何をしまったか失念してよく右往左往しています。
その点、業務用キッチンならすぐに見つかります。
ただし、散らかっているのも一目でわかってしまうので、きちんと片付ける習慣は必要かもしれません。
■ガスコンロ内蔵でないのもポイント
そして、ガスコンロがキッチン本体に内蔵されていないことも個人的に大事なポイントです。
前回も書きましたが、山小屋のキッチンを検討するにあたって、サンワカンパニーやtoolboxのキッチンなどいくつか気になるものもあったのですが、いまどきの気の利いたキッチンはどれもガスコンロが内蔵されたタイプばかりなのです。
たしかに、そっちのほうが見た目もスマートになるのですが、最近の家庭用のガスコンロはとにかく安全性能ばかりを追求しすぎて料理しづらいのが困るのです。
火力が弱い上に、センサーが鍋の高温を感知してすぐに消火。
老いた母親を見ているとありがたい機能なのはすごくよくわかるのですが、鉄のフライパンでガンガン肉を焼いたりパエリア鍋を煮たりしているときは料理を邪魔されている気分になります。
しかも、日刊Sumaiの連載でも書きましたが、このセンサーが故障しやすいときています。
なんというか、安全機能のために他のすべてが犠牲にされている感じといったら言い過ぎでしょうか。
個人的には、安全性能が少々低くても、自己責任で火力のしっかりした業務用ガスコンロを使いたいのです。
しかし、家庭用のキッチンには業務用のコンロはビルトインできません。
もし業務用コンロを選ぶなら、コンロは後付けできるキッチンを選ぶ必要があり、そうなるとやはり業務用ガスコンロがベストマッチなわけです。
しかし、業務用コンロには「家庭では使用しないでください」と注意書きが明記されていますし(罰則はない)、実際に火事になるリスクも家庭用より高いですから、日刊Sumaiの連載で「業務用ガスコンロがおすすめ」と書いてしまったことはちょっと説明不足だったと反省しています。
この問題については、別の機会にあらためてしっかりと論じたいと思っています。
■スキマ掃除問題など、デメリットについて
業務用キッチンのメリットをいろいろ語ってきましたが、デメリットもあるにはあります。
筆頭は「スキマ掃除問題」ではないでしょうか。
先ほども書いたとおり、業務用キッチンはコンロ台やシンク、作業台がそれぞれ別々のユニットになっていて、その間には必然的にスキマが生じます。
ここは掃除が難しく、どうしても汚れがたまりやすくなります。
床に排水口がある厨房ならば水でもかけてバシャバシャきれいにするのかもしれませんが、一般家庭でもそうもいきません。
表面を拭いても、その汚れはスキマに蓄積し、時間をかけてサビていったりします。
表面さえきちんと拭いていれば衛生的に致命的な問題はないでしょうし、僕は仕方がないと思って受け入れていますが、気になる人は気になるのではないでしょうか。
歯ブラシをつかえば目に見えた汚れは防げるでしょうが、届かない場所には汚れが残りそうです。
完璧に掃除したければ、動かして掃除するという手はあります。
業務用キッチンは基本的には床に固定されていないので、作業台なら動かすことは可能です。
とはいえ、ガス管や水道管がつながっているコンロ台やシンクは動かせませんし、掃除のたびに作業台を動かすのは面倒で現実的ではないでしょう。
コーキングしてみるというのもひとつの手かもしれませんが、実際の効果のほどはわかりません。
日刊Sumaiの連載では、デメリットとして「引出しの使いづらさ」を挙げました。
閉めたときの音がガチン!と大きな音がすることや、奥行が45センチというスリムな作業台を選ぶと引出し内の奥行は30センチしかなく調理器具をタテ向きに収納できないことなどです。
しかし、これについては現在ではほとんど気になっていません。
音については衝撃を軽減するためのスポンジテープを貼りつけたことでほぼ解消しましたし、収納の向きは使い慣れてしまえば使いづらさはほとんど感じません。
以上のようなデメリットくらいでは「安価」「シンプル」「自由度の高さ」といった業務用キッチンの長所は揺らがないと断言できます。
というか、こうしてまとめてみると「総合的に見て業務用キッチンが最強だな」とあらためて感じました。
そんなわけで、山小屋にも世田谷の自室と同じくタニコーの業務用キッチンを採用することにします。
次回は、山小屋の押入れのスペースに合わせて、業務用キッチンの組み合わせを検討し、あわせてレンジフードや水栓などの周辺機器も選びます。