(309)【日刊Sumai再録】23年ぶりに空室になったマンションはひどい状態だった
2021年もあっという間に終わりです。
先月、2017年から「なんでも大家日記@世田谷」を連載していた「日刊Sumai」(扶桑社)のサイトが終了しました。正確には同社の「ESSEオンライン」に吸収合併されるかたちなのですが、過去記事の大半が掲載を終了になり、僕が書き溜めてきた連載もほとんど読めない状態となってしまいました。最近は単発の記事も多く、連載としての体裁は成していなかったので、これで名実ともに連載が終了したことになります。
これからも「ESSEオンライン」には記事を書かせていただく予定なのですが、あまりニッチな賃貸マンションのネタは媒体に合わないので、ちょっとしたDIYなどの記事を単発で書いていくことになると思います。
四年間にわたって書き溜めてきた記事が見れなくなってしまうと、このブログに貼り付けた過去記事も読めなくなってしまうのが困るのですが、外部サイトに配信されて転載された原稿はまだかなり残っているようで、最近はリンク先をそちらに置き換える作業に追われています。転載先もいつまで残るかわかりませんし、今後は定期的にこのブログに転載していきたいと思っています。
今回はその第一弾。過去に「日刊Sumai」で書いた150本の中でもっともビュー数の多かった記事をご紹介します。タイトルは「衝撃!23年ぶりの空室を見て驚いた。大家的に最高の痕跡」(2019年6月22日公開)。
23年ぶりに空室となった世田谷の賃貸マンションの一室を紹介した記事ですが、実は「日刊Sumai」での連載タイトルはほぼすべて編集サイドがつけたもので、正直、何が“大家的に最高の痕跡”なのか、僕自身もさっぱりわかりません(笑)。
タイトルはともかく、この記事は2019年で「日刊Sumai」の中でアクセストップだったそうで、ボロボロになった賃貸を見たいという読者が思った以上に多かったのには驚きました。
では、どうぞ。
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【衝撃!23年ぶりの空室を見て驚いた。大家的に最高の痕跡】
令和になって1か月が経過する頃、うちのマンションでは1年ぶりに空室が出ました。
しかし、いつもの空室とはわけがちがいます。23年ぶり(!)に空室となるのです。
いやあ、よくぞこんなに長く住んでくれましたよ。
僕が大家を引き継いでからも不平不満らしいことは何ひとつ言われた記憶もありません。
いわゆる「賃貸オーナー」的な目線から見ると最高の入居者さんかもしれません。
気になるのは、退去時に入居者さんと話した不動産屋さんによると、過去にメンテナンス工事があった覚えがないということ。
今回は、23年分の生活の汚れが積み重なってきた驚きの室内をご覧ください。
■23年前、エアコンは入居者さんが持ち込む時代だった
大家としては、今後の工事プランなどを考えると退去前に部屋の中を見たいのが本音です。
でも、退去の日まではあくまで入居者さんのプライベート空間。
退去してはじめて大家が中を見ることができるのです。
今回は23年間もリフォームされてこなかった部屋ですから、いったいどんな様子なのか不安を抱きつつドアを開きます。
あれ?床に絨毯が敷いてある?うちのマンションでは初めて見ました。
敷かれたのは23年前でしょうか。
しかし、キッチンや水回りの床に絨毯はどうなんでしょうか?
汚れも落ちにくいし、すごくミスチョイスだと思うのですが。
このへんは「昭和~平成」の時代的なセンスなのか、単に施工業者の都合なのか、さだかではありません。
リビングに足を踏み入れると、なぜかエアコンがありません。
エアコンをはずした跡はあるのに、なんでだろう?
怪訝に思っていると不動産会社の担当のAさんが教えてくれました。
「ああ、このお部屋はもともとエアコンがなくて、入居者さんがご自分で用意する契約だったようですね」
まじか!
エアコンを持ち込む時代があったなんて、大家歴の短い自分にとっては初耳。
入居者さんは退去前にご自分で業者さんを呼んで処分して出て行かれたそうです。律儀です。
■窓の障子は跡形もなく、壁紙は剥がれて漏水の跡も……
窓に障子があるのも時代を感じます。
子どもの頃のマンションの姿を思い出しました。
見事に破れて一枚も残っていません。
とにかく室内のあちこちが劣化&破損しています。
どうやら入居者さんは、こういうことに頓着のない方だったようで。
リビングを別の角度から見ると……
ん?天井、ヘンじゃない?
ああ、壁紙がはがれ落ちてきてますね。
恐る恐るなかをのぞくと、
水が漏れた跡らしき汚れを発見。
この部屋は最上階の部屋なので原因は屋上です。
僕が引き継ぐ前、お金惜しさに屋上の防水を「安かろう悪かろう」で済ませていた時代があると聞いていましたが、まさか水漏れが発生していたとは知りませんでした。
よく見ると、別の箇所でも水が流れた跡がうっすら残っています。
事態はけっこう深刻だったようです。
でも、水漏れで困っていたと入居者さんから相談された記憶はありません。
大家に相談して補修工事の日程などを調整するのが面倒くさかったんでしょうか。
漏水などが建物全体に深刻な影響を及ぼす可能性を考えると怖いです。
個人的には、ささいなことでも相談してもらいたいなと思っていますが、そのへんは人それぞれでもあり…。
■お風呂のドアが壊れて、浴室のタイルが見える!
ところが、お風呂を見てみるとびっくりするほど酷い状態でした。
このドアの向こうがお風呂です。
えっ……風呂場のタイルが見えてない?
ドアの下が壊れて、ごっそりない!
おそるおそるドアを開けると裏側もひどい状態。
いったいどうやってお風呂に入ってたんだろう…謎だ。
浴室の中はというと…
これまたかなり汚い状態です…。
なんかホラー映画のセットみたい。
汚れはともかくにしても、在来工法のお風呂がこれだけ劣化すると水漏れの危険があります。
それこそ大家的にはホラー。
ごらんのとおり、浴室前の絨毯はカビでどす黒く変色しています。
何度も水がかかったのは想像に難くありません。
リスクを考えると土下座してでも直させていただきたいレベルです。
大事になる前にリノベーションできてよかったです。
このほか、洗面や、
トイレも、
昨日まで人が住んでいたとはにわかには信じられない廃墟感が漂います。
■障子を活かして和風のリノベーションを思いつく
工事に際しては、使えるものは残そうというのが僕の考え方ではありますが、今回はほぼ「総とっかえのフルリノベーション」になることは間違いないでしょう。
そんななかでも、使えそうなものを探し出してみると…
障子は面白いかな、と思いました。
ビリビリですが、枠はどこも損傷していません。
これをきれいに張り替えて和風なテイストの部屋にしてみるのも面白いかもしれませんね。
思えば、これまでのリノベーションはシンプルモダンなインテリアばかりを意識してきたような気がします。
でも、どんなインテリアだって、時の流れのなかでトレンドからずれていくもの。
テイストが異なる部屋を作っておくことは、将来への保険になるかもしれません。
(と理屈をこねてみましたが、何か新しいことを試さないと気が済まないだけなのですが)
もうひとつ、気になったのが、洗面の収納。
一見、どこにでもある古いミラーキャビネットですが、個人的にはレトロなクリーム色と、
小物が置けるスペースが設置された丸っこいデザインがツボでした。
取り外して保存することにします。
これを、きれいに掃除してみました。
幸い鏡には傷ひとつなく、けっこうきれいになりました。
この部屋に使えるかはわかりませんが、いずれどこかの工事で再利用することになるでしょう。
残りはほとんど解体することになりそうです。
フルリノベーションでどう生まれ変わるのか、まだ僕にもわかりません。
工事が終わったら、またこちらで報告したいと思います。
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いかがだったでしょうか?
ひさしぶりに読み返しましたが、やっぱりひどい状態ですね。
ちなみに、この後、リノベーション後にどれだけ部屋がきれいになったかという記事も書きました。配信先の記事が残っていましたので興味がある方はどうぞ。
【入居が即決まるリノベの中身。23年ぶりに空室が大変身した】
今回再録した記事にくらべると、こちらのほうはさして読まれることもありませんでした。リノベーションに力を入れている大家としては複雑な気持ちですが、くじけずに来年は最近新しくリノベーションしたマンションの一室について書いていくつもりです。
では、みなさん、良いお年を。