(480)マンション内の広すぎる自宅の一部を賃貸に改造した話
今回はマンション内にある実家の一部を区切って賃貸に改造した話をしたいと思います。
まずは、うちのマンションに固有の特殊な住宅事情からお話しなければなりません。
今から半世紀以上前、祖父がマンションを建てた際、建物の一画に自宅も併設しました。
賃貸はひと部屋あたり約30平米の広さなのに対し、この自宅は4部屋分=120平米の広さがありました。
1階と2階にそれぞれ賃貸2部屋分のスペースがあり、宅内の階段でつながっている造りで「マンションの中に戸建てがある」ような入れ子構造です。
相続の煩雑な手続きが完了し、うちの家族がマンションを引き継ぐにあたって、僕の両親がこの部屋に住むことになりました。
しかし、年老いた夫婦に階段付きの120平米はあまりに広く、持て余すことは目に見えていたので「この家の一部を区切って賃貸にしよう」と考えたのです。
賃貸に充てることにしたのは2階の一部。
図面で見てみましょう。
もともと2階にはトイレ、お風呂、洗面が完備されていましたが、赤で囲った箇所を区切れば、通常の賃貸と同じ広さにあたるスペースをムリなく貸し出すことができるはずです。
業者さんに相談したところ、既存の配管ルートを流用し、間取りの変更も最小限で済ませて費用と手間をおさえようということになりました。
ただ、水回りがそろっていたとはいえ、トイレは和式ですし、浴槽はすでに撤去されて物置状態。どの設備も刷新しなければなりませんし、キッチンと洗濯機置き場については配管も含めて新しく設置する必要がありました。もちろん、もともと廊下だった場所に新たな仕切り壁を設けて自宅部分と賃貸部分を区切らねばなりません。
さらに、手間のかかる作業がドアの新設です。区切った部屋には新たに玄関ドアが必要になります。もともと壁だった場所に穴を開け、ドアを造ってもらいました。
古いスチールドアばかりのうちのマンションには不似合いな新しいドアが設置されました。木造のアパートとちがって、壁に開口部を設けるのは鉄筋のマンションではなかなか大変な作業で費用もかさみました。
以上のポイントをまとめるとこんな感じ。
これらのポイントを中心に打ち合わせと検討を重ねて、できあがった図面がこちら。
工事前の図面と見くらべていただければわかりますが、間取りはほとんどいじっていません。それでも、工事費はおよそ400万円に達しました。うちのマンションの場合、設備をすべて取り替えるフルリノベーションだと300万円強が予算の目安なのですが、いつもとくらべて100万円近くオーバーした計算です。
さらに、これとは別にメーターの新設にも費用がかかりました。これまでひとつの家だったところを区切ってふたつの家にして貸し出すとなると、水道光熱費を別に計算する必要があり、電気・ガス・水道のメーターを新規に設置しなければならないのでした。これにかかった費用が「338,000円」。
名目は「ライフライン幹線分岐工事」。通常の賃貸のリフォームではかからない出費ですが、各社への申請の手間なども考えると仕方ありません。自宅の一部を賃貸に改修するなら避けられない出費と言えるでしょう。
先ほどの工事費用「約400万円」にメーター設置費用「約34万円」、さらに施主支給した設備の金額なども含めると最終的に「約450万円」ほどかかってしまいました。
30平米の賃貸にかける費用としてはかなり高いのですが、無事に借り手さえつけばリターンのある投資と考え、思い切って工事を決断しました。
工事が終わったのは3月末。なんとか賃貸繁忙期に間に合いました。
不動産屋さんと話し、家賃は「10万5000円」で募集することに。通常の間取りならば12万円のお家賃をいただいているのですが、それとくらべるとやや安めな家賃設定です。
理由は間取りです。うちのマンションの他の部屋とくらべてみましょう。
ノーマルな間取り(右)の場合は廊下のようなムダなスペースがほとんどないのですが、今回の部屋は水回りをぐるりと回りこむような廊下があるぶん、リビングのスペースが狭くなってしまったのです。感覚としては2~3畳ほど削られた感じでしょうか。ベランダが狭いのもマイナス点ですね。
右の間取りなら2人暮らしも可能ですが、今回の間取りでは1人暮らしをターゲットにした募集になるだろうということで家賃を低く設定したのでした。
もともと自宅だった場所を賃貸にできたのですから贅沢は言えませんし、募集してすぐに入居も決まったので満足しています。
次回はできあがった室内を詳しく紹介したいと思います。