(488)考えすぎていつもより余計に工事費用を使ってしまった
前回、世田谷のマンションでもっとも高額な改修工事を施した室内をご紹介しました。
グレード高めのシステムキッチンやベランダのサンルームなど、30平米の賃貸マンションではあまり見られない設備を導入したのが費用のかさんだ理由なのですが、工事から8年経った今「なぜこんなにも散財してしまったのか」について、あらためてまとめてみることにしました。
■いろいろ試行錯誤してたどりついた間取りだったが……
発端は「むりやりキッチン内に設けられた洗濯機置き場をどこに移動させるか?」という問題でした。
これについては以前の記事でも触れましたが、うちのような築古物件ではもともとベランダに外置きだった洗濯機置き場を、賃貸ニーズの変化に合わせて室内置きに変更することを迫られます。先代の大家だった叔父の時代、深い考えもなしにキッチンの空きスペースに洗濯パンを設置した結果、洗濯機とガスコンロが干渉してひどく使いにくいキッチンになってしまいました。
かつての間取り図をごらんください。
赤い矢印で示した洗濯機置き場がガスコンロにかぶっています。
写真で見るとこんな感じ。
僕自身、この間取りで数カ月暮らしたことがあるのですが、洗濯機置き場が邪魔ですごく料理しづらいのです。
いろいろ悩んだ結果、洗濯機をキッチンの隅に移動して、セパレートタイプのキッチン(主に業務用)をL字型に組み合わせるというレイアウトにたどりつき、現在はこれが定番となっています。
しかし。
8年前にはまだまだ試行錯誤の途上でありました。
間取り図にいろいろ書き込みをしまくって、洗濯機置き場を邪魔にならない場所に置いてキッチンスペースを効率的に活用できるレイアウトを模索しました。
そこでひらめいたのが、洗濯機置き場を昔と同じベランダに戻してしまい、サンルームを設けて「半室内」のような形にするというアイデアでした。
洗濯機置き場が室内からなくなると、キッチンにはキッチン本体と冷蔵庫置き場だけを設けることになります。
すると、赤で示した位置まで間仕切りの引き戸を移動してリビングを広くできるのです。
さらにひらめいてしまい、ドアを閉めたときはクローズドなキッチン、開けたときはオープンなカウンターとして使えるL型のキッチンというアイデアが湧きました。
そんなわけで、最終的な間取りはこんな感じになったのでした。
「洗濯機置き場問題も解決し」「リビングも広くなり」「開閉できるキッチンも便利」などなど、当時の僕は我ながらよく考えたものだとご満悦でした。
さらに、当時はマンション内にある実家のリフォームをおこなっていたところでした。そこで採用した合板フローリングが傷もつきにくく質感も上品で気に入り、せっかくだから賃貸にも導入してみようと思ったのです。当然、いつものフロアタイルとくらべると価格差もあり、賃貸としてはやや贅沢な素材なのですが、あのときの僕は完成したイメージに向かって突っ走ってしまったのでした。
その結果できたのが、前回ご紹介した部屋なのでした。
いったん理想的(と思える)形ができてしまうと、なかなか修正したり妥協したりするのが難しいのが僕の性格なようです。結果、過度の散財を招いてしまったというわけ。
■いつもよりも80万円ほど余計に費やした計算
では、自戒も込めて余計に使った金額をひとつひとつ検討していきましょう。
まずはキッチン。Lixil(リクシル)の「アレスタ(ALESTA)」は、通常、分譲や戸建てに導入されるキッチンで、賃貸マンションではまずお目にかかれないグレードの設備です。
同じくLixilにはひとつ下のグレードに「ティオ(TIO)」というコンパクトキッチンをラインナップしていますが、こちらで見積もった金額は「145,000円」とリーズナブルでした。しかし、「ティオ」にはL字型のキッチンはラインナップされておらず上のグレードの「アレスタ」を選ぶことになり、「255,000円」で「+11万円」となりました。
以前まとめたとおり、うちのマンションではキッチン本体はおおむね10万円台後半を選んできましたから、これはけっこうな出費です。
さらに、オープン&クローズできるキッチンを造るために間仕切りの引戸の位置を移動して新しいものに交換し「+116,000円」かかりました。いつもならば既存の建具を塗装してそのまま残すので、このぶんも予算を圧迫したことになります。
床材は、いつものフロアタイルで済ませれば「146,850円」となったところが、先ほど書いたとおり合板フローリングに変更してしまったせいで予算アップ。選んだのはEIDAI(永大)の「エコメッセージ」でしたが、最終的な金額は「303,445円」となって「+156,595円」となりました。
そして、最大の出費がサンルームの設置。
見積もりを見直してみたところ「366,000円」もかかっていました。いつもならベランダはそのままで工事費用もかからないので、この金額がまるまる余計な出費となった計算です。ぐふっ……。
まとめましょう。
・キッチンの差額:226,000円
・床材の差額 :156,595円
・サンルーム費用:366,000円
以上を合計すると「748,595円」となり、ここに当時の消費税8%を加算すると「808,483円」。
実に80万円強の「余計な出費」を払ったことになります。
前回書きましたが、この部屋の工事費用は総額で「約400万円」でした。うちのマンションの標準的な工事費用と比較するとかなり高額です。
たとえば、昨年リノベーションした部屋は「既存のユニットバスを残して残りは設備はすべて刷新」ということでほぼ同条件でした。しかし、工事総額は「約320万円」で同じく家賃3万円アップ(9万円→12万円)を実現できています。
工事費をくらべると差額がちょうど80万円で、今回まとめた差額とほぼ同額。キッチンとフローリングとサンルームに費やした金額がそのまま予算超過を招いたといっていいかもしれません。
とまあ、ネガティブなことばかり書きつらねてもしかたないので、良かったことも。
この「使いすぎた経験」があったおかげで、自分の中で「何にお金を使うべきか」が明確になったのは事実です。この経験があるから今があるといいますか。
それに、今回、空室となった部屋をゆっくり眺めてみたのですが、我ながらいい部屋なんですよね。なんなら自分が住んでもいいくらい。納得できる部屋は大家としても胸を張って貸すことができます。
8年ぶりの空室でも退去の数日後には同額のお家賃で新しい入居者さんが決定し、空室期間は一か月弱で済みました。最短記録といってもいいスピード成約です。
めぐりあわせもあるでしょうが、お金をかけたかいがあるというもの。お金は使いすぎたけど、途切れることなくしっかりとお家賃が入り続ければ長い目で見て十分にペイすると思っています。
次回は工事前に撮った写真と工事後に撮った写真でビフォーアフターをくらべます。