(550)どんなサブウェイタイルを選ぶ?どんな目地を入れる?
前回、事務所の壁に張ったサブウェイタイルについてざっくりダイジェスト的にご紹介いたしました。
今回からは、タイルを選ぶところからはじめてひとつひとつの工程をじっくりと語っていきたいと思います。
第一回は「どんなサブウェイタイルを選んで、どんなふうに目地を入れるか?」について考えます。
■本家サブウェイタイルは高価で手が出せない
前回、サブウェイタイルとは、
こんな感じの大判の長方形のタイルだとざっくりご説明しました。僕自身、欧米の地下鉄の駅で使われていたことにその名が由来しているらしいというていどしか知らず。
あらためて調べてみると、アメリカにその名もずばり「サブウェイセラミックス(Subway Ceramics)」という会社が存在していて、現在も新駅や駅改修工事のためのタイルを製造しているのだそうです。日本でも製品を購入することができます。
厳密な定義の話をするならば、こちらの会社が製造しているタイルこそが「サブウェイタイル」であり、僕がなんとなく知っている大判の長方形タイルは「サブウェイタイル風タイル」なのだということになります。
ならば「ぜひ本家のサブウェイタイルを使いたい」と思ってしまうところですが、さすが本場物だけあってかなり高価な製品(平米単価でなんと約5万円!)で、とても僕のような賃貸大家が手を出せるシロモノではありません。
■サブウェイタイル風タイルなら意外にリーズナブルだが…
というわけで、ふつうに流通している「サブウェイタイル風タイル」の中から選ぶことにしました(以下、面倒なので「サブウェイタイル風タイル」のことを指してサブウェイタイルと呼ぶことをご了承ください)。
それっぽいものでOKとなれば選択肢はかなり広がり、逆に選ぶのが大変なくらいです。
「サブウェイタイル」というワードで検索して最初に目に留まるのはこのへんでしょうか?
【タイルパーク】サブウェイ SUW-150 / 150×75mm角
【toolbox】フロストタイル 艶あり 小口平
フロストタイルは手元にサンプルがありました。
小口平と呼ばれるやや小ぶりなサイズですが、「サブウェイタイル」っぽい雰囲気は確実に出せるでしょう。
気になる平米単価でいえば、タイルパークのものが「6,450円」、toolboxが「6,800円」で、本家とくらべると格段に身近な価格です。モザイクタイルの価格と比較してもかなりリーズナブルな部類に入るといっていいでしょう。
■サンワカンパニーのビセルを見つける
しかし、今回は壁一面(約6平米)に施工する予定だったので、もっと安価なものはないか探してみようと思ったところ、以前別の部屋のリフォームの際に検討した「ビセル」というタイルを思い出しました。
【サンワカンパニー】ビセル
「19世紀、パリの地下鉄の壁に使われていたタイル」をモデルに作られたということで、いわゆる「サブウェイタイル風タイル」のひとつですが、注目すべきはその価格。
平米単価は「4,980円」で先ほど挙げたタイルよりも1,500~1,800円も安いのです。実は、今年の4月17日に値上げがおこなわれるまではさらにリーズナブルな「3,980円」でした。
価格が安いからといって侮ることなかれ。サンプルを見るかぎり安っぽさはまったく感じません。
フラットなものとくらべてテーパーがかかった表面が個性的なのも気に入りました。公式ページによれば「四方を面取りしたデザインが照明を反射することで地下空間を明るく見せる効果」があったのを真似てのデザインだそうです。
面白いといえば、同じくサンワカンパニーが扱うこれも気になりました。
「シグロ」というタイルです。
【サンワカンパニー】シグロ
波打つような独特の質感が素敵で、価格もビセルと同額でリーズナブルなのですが、残念ながら「メーカー廃番のため全て在庫限りで販売終了」(公式ホームページ)となってしまいました。
このへんは好みが分かれることを承知で申し上げると、「フラットな白タイル」だとベタなサブウェイタイル感が出過ぎて面白味に欠けると思ってしまう僕にとっては、安価なうえにデザインに特徴のある「ビセル」(や「シグロ」)は魅力的に映りました。
こちらは以前ショールームで撮影した写真ですが、ホワイト以外にもブラックやグレー系、パキッとしたティールブルーまであってカラーバリエーションも豊富なのもうれしい。
余談ですが、写真を見ると当時の平米単価はなんと「2,630円」(!)。3年前、こんなに安かったんだ……。
事務所を使う妻にも意見を聞いたうえで、どう転んでも部屋にぴったりはまるだろう「ライトグレー」を選ぶことにしました。
タイルを張り付ける壁はというと、
幅313センチ、高さ202センチで、施工面積は6.3226平米。数拾い(詳細は次回に書きます)の結果、6平米に6ケースで足りるとわかり、値上げ前に滑り込みで注文しました。
送料込みで「28,960円」。壁一面に張るぶんのサブウェイタイルを購入してこの価格で文句を言う人はさすがにいないのでは?と思える安さです。
■サブウェイタイルは張り方で印象が大きく変わる
さて、ではこのタイル、どんなふうに張ればいいのでしょうか?
サブウェイタイルといえば「フラットな白タイルを半マスずつずらす馬目地で張って濃いグレーの目地を入れる」というのがド定番ですが、ここまで人気があり過ぎるとベタに感じてしまうのも事実。
試しにならべてみた感じだと、さすが定番だけあって悪くはないのですけど。
一方、ずらさず列にしてならべる「芋目地」だとこうなります。
だいぶ印象が変わりますね。
山小屋の母屋のキッチンにタイルを張ったときはこの芋目地でした。
思えば、あのとき張った小口平は色の印象がレトロなだけで、大判で長方形という意味ではサブウェイタイルの一種といえるのかもしれませね。
ちなみに、先の「馬目地」をタテにすると、
これまた印象が変わってモダンな雰囲気に。
「芋目地」も然り。
ちなみに、妻が推すのは「ヘリンボーン張り」でした。
うむ、たしかに格好いいのだけれど、タテヨコと交互に張り進めねばならないことを考えると、壁一面にきれいに張ることができるのか、施工する身としては不安です。
■カットの回数が少ない張り方を選ぶとラク
さて、サブウェイタイルをDIYで張るならば念頭に置きたいのが、張り方によってはカットしなければいけないタイルがたくさん発生するという点です。
先の「ヘリンボーン張り」を例に取ると、
真四角の空間に収めるには、写真の面積で5カ所もカットしなければならなくなります。
定番の「馬目地」も両端のカットが多いので覚悟してください。
一方、芋目地は幅ピッタリに収めればカットなし。
カットが多いと、手間がかかるだけでなく、施工に必要な枚数を計算する際にカットしてムダになるぶんも念頭に置いて多めに注文する必要があるのも面倒です。カットなしならば、測量した面積ほぼそのままでタイルの注文ができるのでぐっとラクになります。
■バスケット張りならカット数も少なくてインパクトもある
手間を考えて「広範囲をDIYするからにはタイルカットの数は少なくしたい」と思う気持ちと「前にも試した芋目地をもう一度やるのはつまらない」という気持ちの狭間でいろいろ思案した結果、たどりついたのがこの張り方。
2枚ずつペアにしてボックスを作り、タテとヨコに交互にならべていく張り方です。「ボックス張り」とか「バスケット張り」とか呼ぶんでしょうかね。
今回選んだ「ビセル」のサイズは「7.5cm×15cm」で長辺が短辺の倍の長さになるからこそ可能になる張り方です。この張り方は、住宅はもちろんお店やインテリア雑誌などでもほとんど見かけることがありません。これなら人とかぶることもなく見た目にインパクトもありますし、タイルカットも最小限で済みそう。ヘリンボーン支持派の妻からも「これならいいかな」と賛同が得られました。
これは実際に張り終えたあとの写真。インパクトがありながら、エレガントな雰囲気も漂う仕上がりに満足しています。
そんなこんなで、サンワカンパニーの「ビセル」のライトグレーを「バスケット張り」で張ることになったところで今回はおしまい。次回は目地幅を調整しながら割り付けを考えます。