(562)うちのマンションはどこで他の賃貸物件と差別化しているか
これまで数回にわたって、最近空室になったお部屋について書いてまいりました。
退去は6月の末。すぐにルームクリーニングを入れて7月のはじめから見学できる態勢を整え、退去前から募集広告を出してもらいました。
しかし、もともと夏は賃貸募集の端境ともいえる季節ですし、今年の7月は記録的な暑さだったので今回ばかりは長期戦を覚悟しました。
ところが、意外や意外、募集開始からわずか一週間で2人の方が内見にいらっしゃってくれました。お一方はまだまだ物件を探し始めたばかりらしく非常にあっさりした反応だったものの、もうお一方は大変乗り気でご検討の末に入居を決めてくださいました。結局、いつもと変わらない空室期間で済みました。
賃貸はご縁もありますから、ただのラッキーといったらそれまでですが、夏場の募集でいつもどおりの結果が出たのは大家として自信になりました。
というわけで、僭越ながら今回は「うちのマンションがどこで他の賃貸物件と差別化しているか」についてお話したいと思います。
■差別化①募集広告にプロの撮影した写真を掲載する
まずはなんといっても写真でしょう。
うちの物件の募集写真はすべてカメラマンの邑口京一郎さんに撮影してもらっています。先日、「30平米の狭小賃貸マンションに施した工夫を紹介する」と題して、今回のお部屋の写真を掲載しましたが、この記事内の写真もすべて邑口さんが撮影してくれた写真です。
これが毎回とても好評で、入居を決めてくださった方も「実は予算的には厳しかったんですけど、写真を一目見て気に入ってしまって」とおっしゃっていました。以前には、「当面は引っ越すつもりもないけど、写真がよかったので見にきました」なんて方も。
そもそも不動産サイトに掲載されている募集写真のほとんどはお世辞にもほめられないクオリティのものばかりですから、プロが撮影した写真は頭ひとつもふたつも抜けて見えるのはまちがいありません。
いくら素敵なインテリアの部屋を作ったところで、そのことをしっかりと宣伝できなければ見に来ていただくこともできないのです。うちの場合は、写真の素晴らしさが募集の間口を広げてくれているのが最初の差別化ポイントだと思います。
■差別化②少数相手にでも深く刺さる個性的なインテリア
しかし、いくら写真で下駄を履かせるにしても、素材がひどくては話にならないのも事実。インテリア(と設備)にしっかりと個性を持たせるようにこころがけています。
僕が飽きっぽい性格ということもあって、空室が出てリフォームするたびに異なるテイストのインテリアを作ってきました。
今回のお部屋は床・壁・天井に柄を多用する一方、色はモノトーンで統一したお部屋に仕上げました。振り返ってみると「ちょっと柄を多用しすぎたかな」とも感じますが、入居を決めてくださった方はこのインテリアをとても気に入ってくださったようなので結果オーライです。
賃貸物件づくりの面白いところは「万人受けをする物件を作らなくても、たった一人に深く刺されば問題ない」というところ。「10人中9人が気に入るような物件づくり」をしたところで、既視感のあるありきたりな物件が氾濫するなかに埋没するだけ。
だいたい賃貸募集は、ひとつの物件に10人申し込んでくれたところで儲けが増えるわけでもないですよね。
むしろ、「10人中1人でも」刺さる人には刺さるくらいの個性がある物件を作ったほうがいいのだろうと感じています。
これはインテリアだけでなく設備面も含めた話で、世の中の賃貸マンションというと、どこも同じようなコンパクトキッチンや一体型洗面台ばかりですが、そこが異なるだけで印象はかなり変わります。
やはり「このマンションは他とちがう」と思っていただけるような部屋をつくることが差別化において大事なポイントです。
■差別化③熱海の保養所や山小屋の存在
差別化といえば、熱海のマンションや山小屋の存在もあります。
うちのマンションに入居されている方は、
東京西部の山奥にある山小屋や、
熱海の海沿いに建つリゾートマンションの一室にタダで宿泊することができます。
これらについては賃貸契約には含まれない、マンション側から入居者さんに提供するおまけ的なサービスということもあり、募集広告には掲載しておりません。あくまで本丸のマンションに興味を持ってくださった方だけにご案内していますが、内見に来ていただいた方はみなさん「そんなものがある賃貸なんて聞いたことがない」と驚いて興味を持ってくれます。
このサービスがどのていどプラスに働いているかは判断しづらいところがありますが、入居者さんの多くが実際に宿泊されているのを考えると、入居を後押しする要因にはなっていると思います。
■差別化④大家さんがすぐ近くに住んでいること
最後は、大家である僕自身が入居者さんと同じマンションに住んでいる点です。
先日の記事で内見には必ず立ち会うようにしていると書きました。
大家さんが内見に立ち会う物件は珍しいので、人によっては「面倒くさそうな物件だな」と敬遠されてしまうのですが、「大家さんが近くに住んでいるなら安心かも」とポジティヴにとらえてくれる方も一定数いるとわかってきました。
水道や電気などのトラブルがあったときは現場に急行しますし、洗濯物がベランダから落ちてしまったとか、うっかりカギを職場に忘れてきてしまったなんてときもすぐに対応できます。旅行や帰省でゴミ捨ての日に不在のときは事前に相談してもらえれば預かって代わりにゴミ出しするなんてこともあります。大家さんが近くに住んでいるって意外に便利だということを知ってもらえると、デメリットよりもメリットのほうが多いとわかってもらえるのではないでしょうか。
こうして列挙してみると、うちのマンションの差別化ポイントはかなり特殊なものばかりですね。②の個性的なインテリアはともかくとしても、①はプロのカメラマンが知り合いにいないかぎり難しいですし、③のようなマンション専用の別荘を所有するのも維持費を考えると現実的ではないでしょう。④についても、ただ近くに住んでいるだけでなく、入居者さんと密にコミュニケーションを取るのもそれなりに大変です。
そんなわけで、僕の方法を真似しても費用対効果は低くてガッカリ、ということになりそうです。そもそも、僕のマンション経営は、差別化うんぬんという戦略的な話というよりは、自分が面白いと思う賃貸を作るための工夫の積み重ねなのだからしょうがないのです。
思えば、差別化というのは真似しようとした時点で差別化でなくなるもの。大家さんそれぞれが掘り下げるポイントを見つけて、個性的なマンションがもっとたくさんできたら面白くなるなと思う次第です。