(593)低額リフォームと高額リフォームの支出を比較して感じたこと
前々回、うちのマンションでもっとも低額にリフォームされたお部屋をご紹介しました。
こちらの部屋のリフォームにかかった費用はおよそ220万円でした。
一方、うちのマンションでもっとも高額なリフォームをおこなった部屋はこちら。
工事には約400万円を費やしました。
今回は、2つの部屋の室内をくらべつつ8年間の収入と出費をまとめたいと思います。
■リフォーム費用の差額「180万円」はどこでついたのか?
2つの部屋のリフォーム費用の差額「180万円」はどこでついたのか――インテリアと設備の比較から始めましょう。
真っ先に思い浮かぶのはキッチンです。
高額リフォームでは、分譲や戸建てのリフォームに用いられるグレード高めのL字型キッチンを採用し、キッチン本体の価格だけで「255,000円」で、さらに取り付け費用の「50,000円」もかかりました。
一方、低額リフォームでは、既存のブロックキッチンを残したのでキッチン本体は0円。
しかし、このキッチンには欠点があります。
ガスコンロ置き場のすぐ前に先代が室内置きにした洗濯機置き場があり、これが邪魔で料理しづらいのです。
うちのマンションの工事では「洗濯機置き場をどこにするか?」にいつも頭を悩ませてきたのですが、高額リフォームではベランダにサンルームを設け、洗濯機置き場を移転してみました。
サンルームの設置費用は「366,000円」となかなか高額でした。
さらに、洗濯機置き場をベランダに移したことで、キッチンをコンパクトにまとめ、そのぶんリビングを広く取る間取り変更工事をおこないました。新しい建具「116,000円」に加えて、取り付け費用「35,000円」がかかりました。
低額リフォームでは間取りは変えずに既存の建具を残して塗装してもらったので0円。この差も大きい。
床のグレードにも差が。高額リフォームのフローリングが「303,445円」に対して、
低額リフォームのフロアタイルは「146,850円」。差額は「156,595円」です。
めぼしいところではこんなところですが、間取りや設備をいじればいじるほど解体工事や大工工事、電気・ガス・水道などの設備工事も増えるものです。
見積もり書を見返すと、低額リフォームでは解体「275,000円」大工「319,000円」設備「290,000円」だったのが、高額リフォームでは解体「325,000円」大工「484,075円」設備「612,000円」でした。
合計すると「537,075円」の差額です。
設備工事の金額差が特に顕著なのは、定額リフォームでは既存の給湯器を残した一方、高額リフォームでは間取り変更の関係で給湯器をベランダに移転して新調したので、配管延長工事と給湯器本体の価格が加算されたからです。
差額をまとめましょう。
- キッチン「305,000円」
- サンルーム「366,000円」
- 建具「151,000円」
- 床材「156,595円」
- 解体・大工・設備「537,075円」
以上を合計すると「1,515,670円」。ここにその他の細かい費用や消費税が加わって「180万円」の差額になったというわけです。
うすうす気づいてはいたものの、こうしてあらためて振り返るとけっこうな金額差です。
■8年間でいただいた家賃の差額を計算する
続いては、家賃収入の差額を考えましょう。
低額リフォームの部屋は管理費込みでひと月「114,000円」、
高額リフォームの部屋は「120,000円」です。
室内のグレードのほか、マンション内の位置、社会情勢なども加味しながら、不動産屋さんと打ち合わせて決めた金額です。どちらの部屋もリフォームから一か月ほどで入居が決まりました。
8年間の家賃総額を算出すると、
低額リフォームの部屋は8年間で更新料も含めて「11,198,250円」のお家賃をいただきました。
他方、高額リフォームの部屋は8年間で更新料も含めて「11,787,750円」のお家賃をいただきました。
差額は「589,500円」。当然ながら家賃の高い高額リフォームのほうが多くのお家賃を生みました。
■低額リフォームのほうが約100万円多く利益を生んだ
しかし、この差額だけ見てもしょうがありません。
正当な比較をおこなうならば、家賃総額から工事にかかった費用や、8年の間にかかった維持管理費用を差し引いた金額をくらべるべきでしょう。
低額リフォームのほうでは、8年の間にエアコンと給湯器、ガスコンロの更新をおこなったので合計「222,100円」かかりましたが、高額リフォームでは初期投資が大きかったおかげか、追加の工事などは一切なく一銭の追加費用もかかりませんでした。
このぶんも含めて8年間の収支をまとめると…
【低額リフォーム】家賃収入11,198,250円-リフォーム費用2,200,000円-維持管理費222,100円=8,776,150円
【高額リフォーム】家賃収入11,787,750円-リフォーム費用4,000,000円=7,787,750円
低額リフォームのほうがなんと100万円近くも多い利益を生んだことがわかります。
■金勘定では低額リフォームに軍配が上がるけれど……
視点を変えて工事費や維持費を何年分の家賃で稼ぎ出したかを比較しましょう。
低額リフォームでは、2,422,100円の支出で114,000円の家賃ですから22か月目には投資分を回収しています。一回目の更新を待たずに回収できたというのは早いですね。
高額リフォームはどうかというと、400万円の支出に対し12万円の家賃ですから37か月目でようやく投資分を回収できました。低額リフォームとくらべると遅い感は否めません。
とはいえ、一般的に「賃貸物件のリフォーム費用は3年分くらいが目安」と言われているのを考えると、この高額リフォームの部屋は標準的な予算だったのかもしれません。
むしろ、2年を待たずに総額を取り返した低額リフォームの部屋がかなりコストパフォーマンスに優れているということでしょうね。
もし低額リフォームと同じくらいの期間で高額リフォームの投資を回収したいなら、なんと家賃を「18万円」に設定しなければならない計算になりますが、それは土台無理な話。というか、15万円でもムリだし13万円だって怪しい……。
以上を総合的に考えると「高額リフォームは使った金額を標準的なスピードで回収するていどの家賃設定だった」のに対して「低額リフォームはコンパクトな予算のわりには高い家賃が設定できて効率的に利益を出すことができた」というのがひとまずの結論になりそうです。
でも、これはあくまで大家としての金勘定でしかありません。工事のスタンスは違えど、どちらの部屋も一生懸命知恵を絞ってリフォームしたので同じくらい愛着があります。
それに大事なのは、どちらの部屋も暮らす人にとっては、そこが自分の「家」であり、それぞれの生活があるということ。家賃収入も大事ですが、入居者のみなさんにマンションでの暮らしをエンジョイしてもらえることを主眼に置いて大家業を続けていきたいと思いました。