(599)「色と柄」にあふれたパリのインテリアを楽しむ3冊

インテリア

あけましておめでとうございます。2025年もマイペースにリフォームとブログを続けていこうと思います。

さて、今年最初の記事は本の紹介から。「パリのインテリア」をテーマにした3冊を集めてみました。

以前、『世界の楽しいインテリア DESIGN * SPONGE at HOME』を紹介したときにも書きましたが、最近の僕の関心は「ハコ(部屋)は造った。じゃあ、そこでどんなふうにインテリアを楽しめばいいんだろう」とか「インテリアのセンスって何だろう?」という点にあります。

その意味でパリに暮らす人たちの個性豊かな部屋は、どれも「尖って」いて刺激的で大変参考になりました。


■「エル・デコ 2024年12月号:パリで出合う、ヴィンテージ」

まずは、今回の記事を書くきっかけになった「エル・デコ」の2024年12月号から。

つい先日、本屋さんで表紙に目を奪われて思わず手に取りました。

「エル・デコ 2024年12月号」書影

特集は「パリで出合う、ヴィンテージ」

表紙の部屋はテキスタイルブランド「アントワネット・ポワソン」を主宰するジャン=バティスト・マルタン氏とヴァン・サン・ファレリ氏が暮らすパリのアパルトマンだそうです。

「アントワネット・ポワソン」を主宰する2人の部屋

部屋の壁を埋め尽くすのは「アントワネット・ポワソン」の壁紙「ジョリ・ボワ」。壁紙そのもののデザインも素敵なのですが、この壁紙に対して六角形のレンガ色のタイルとピンクのカーテンを合わせる色彩センスが素晴らしいと感じました。

ジャン=バティスト・マルタン氏曰く「リビング兼ダイニングを、特徴ある植物モチーフに壁紙で埋め尽くし、家具は19~20世紀のヴィンテージをミックスしました。小ぶりなものを選び、数も少なくコンパクトに暮らしやすいことを徹底しました。それが私たちにとってのパリらしさです」(48ページ)とのこと。クラシックなスタイルの家具や食器が古臭く見えないのは壁紙を軸にした大胆な色使いのおかげなのかもしれません。

驚いたのはこちらの部屋がたったの28平米(!)しかないということ。パリやロンドン、ニューヨークの中心はとにかく地価が高いので狭い部屋が多いとは聞いていましたが、うちのマンション(30平米)よりも狭いなんて驚きです。写真というのもあるでしょうが、これを見て28平米の狭小マンションだと思う人はいないんじゃないでしょうか。

狭さを感じさせない工夫として浴室のドアまで壁紙を張って扉の存在感を消していることが挙げられているのですが、このバスルームがまたおしゃれ。「木彫りのフレームが美しい鏡」(47ページ)と組み合わせたペデスタル洗面台が「ジョリ・ボワ」の植物柄の間から垣間見えるさまは、まるで森の中にある洗面のよう。

48ページに掲載された、大きな肖像画を飾った寝室や食卓もインパクト強めな見た目ながら、イヤな自己主張を感じさせない上品な空間。こういうのはセンスとしか言いようがないですね。

全体的に色と柄の多い部屋ではありますが、天井をあえてシンプルに真っ白に仕上げて余白を作ることで、空間に抜け感が生まれ、色や柄で息苦しくなってしまうのを和らげています。やはり、色使いや柄使いのポイントは余白とのバランスにあり、とあらためて実感しました。

ちなみに、こちらのお二人は「4年前にブルターニュの邸宅を購入し大修復したのをきっかけに二拠点生活をしている」(48ページ)そうで、そちらのお宅がどんな内装なのかもとても気になります。

ネットで調べてみたところ、同地の「アントワネット・ポワソン」のショップの3階には同社の壁紙があしらわれた一室のみのホテルが併設されており、こちらもなかなか良さげな雰囲気。ご興味ある方は以下のリンクからごらんになってみてください。

【madame FIGARO】ブルターニュに小旅行、アントワネット・ポワソンのお宿で眠る。

さて、「エル・デコ」の話に戻ると、インテリアスタイリストの長山智美さんが解説する「フランスのインテリア術」(60~69ページ)も必見。花柄をあしらいながらも甘すぎないモダンなインテリアの部屋や、アジアの要素を取り入れつつもいわゆる「東洋趣味」とは一線を画した洗練された仕上がりの部屋など、真似できるかどうかはともかく見ていて楽しくなる特集でした。


■「小さな部屋でセンスよく暮らす パリのインテリア」

続いては、もう少し実用的な本をご紹介いたしましょう。

「小さな部屋でセンスよく暮らす パリのインテリア」書影

「小さな部屋でセンスよく暮らす パリのインテリア」(角野恵子、森聖加著、エクスナレッジ、2014年)です。僕がパリのインテリアに関心を持つきっかけになった書籍です。

30~60平米台のアパート&マンションで心地よく暮らすヒント」を謳うだけあって、実際にパリに暮らす人々の部屋を例に取って、われわれも真似できそうなインテリアのポイントを紹介してくれています。

「パリのインテリア」に掲載されたキッチン

たとえば裏表紙に掲載されたこちらの部屋は37平米の「大胆カラーを配色した色が主役のカラフルハウス」(10ページ)のキッチンです。「もともとの白を活かしながら、部分的に赤くペイント」(13ページ)しただけでなく、小物で色を加えることでインテリアに彩りを加えています。このほか、黄色やラベンダーカラーを取り入れて、もともと白かったという部屋をカラフルにリフォームしたさまは、インテリアに色を取り入れたい人には励みになると思います。

「パリのインテリア」に掲載されたリビング

一方、表紙に選ばれているのは47平米の「パステルカラーをアクセントに大人の上質インテリア」(19ページ)のリビングです。腰壁にモールディングの装飾を施したインテリアは「これぞヨーロッパ」という感じ。

白い壁に黒の家具を選びつつ、「淡いブルーを住まいの差し色に」(22ページ)しているのがポイントです。なるほど、花瓶やソファのクッション、壁に飾られた絵など、そこここに水色が配されているおかげで、モノトーンの中に明るさが生まれています。色使いというと大胆なものばかりが取り上げられることが多いのですが、こういうさりげないアクセントカラーもまたよいですね。

このほか、レモンイエローの壁を背景にアンティークをならべた部屋(32ページ~)や、もともと工場だった部屋をリノベーションしたという部屋(86ページ~)など、みどころ満載です。

巻末には「コンパクトな住まいで広々と暮らす空間づかいのポイント」(114ページ~)という間取りの実例紹介や、「白い壁をセンスアップ!パリのディスプレイ術」(118ページ~)と題した額や雑貨の飾り方のコツなどがまとめられていて、身近なところから試せるインテリアのヒントがきっと見つかるはずです。


■「フィガロジャポンデコ 31人のインテリア実例集 パリジェンヌのおしゃれな暮らし。」

三冊目はこちら。

「パリジェンヌのおしゃれな暮らし」書影

「フィガロジャポンデコ 31人のインテリア実例集 パリジェンヌのおしゃれな暮らし。」(2018年)です。

「パリジェンヌのおしゃれな暮らし」なんてド直球なタイトルを見ると、一瞬たじろいでしまいますが、手に取ってみるとこれがなかなか個性的な部屋ばかりで面白いのです。

セシル・フィゲット氏の部屋

表紙を飾るのは、壁紙のデザインを手がけるセシル・フィゲット氏の部屋。ごらんのとおり、素っ気ないモルタルの床と真っ白な壁を背景にしてカラフルな雑貨達が際立つインテリアです。

写真中央、奥に見えるグリーンのソファは「50ユーロで買った中古のソファ」(21ページ)、その前の花瓶が飾られたローテーブルも「大量生産のベーシックなテーブル」(21ページ)ということで、決して高額な家具を取り揃えているわけではありませんが、なんというか組み合わせ方や色使いが絶妙なのですよね。ソファの上にはゆるいぬいぐるみも置かれていたりして、そのあたりのほっこり感もよし。リビング以外の部屋にもさまざまな壁紙が巧みに張り分けられており、参考になります。

この部屋も十分に個性的ですが、まだまだ序の口。ページをめくっていくと、「ほどほどにおしゃれ」というよりは、自分の好みにフルスイングした部屋が多いのがとにかく印象的。

僕が驚いたのは「ラデュレ」でディレクターを務めるサフィア・トマス・ベンダリ氏の部屋。

「ラデュレ」のロゴ

「ラデュレ」といえばパリを代表する老舗パティスリー。そのディレクターならもっとコンサバティヴでクラシカルな部屋に住んでいるのだろうと思ったのですが、さまざまな柄や色にあふれた、かなり尖ったお部屋なのです。

ターコイズブルーでまとめたダイニング」(23ページ)は床にピンクまで入ってなかなか刺激的な色使い。とくにヤバいのは寝室で、手描き(風?)のヘッドボードにデカいパイナップル型のペンダントライト、目がチカチカするようなカラフルなテキスタイルなどを組み合わせ、とにかく個性的なインテリアになっています。正直、「この部屋、好きですか?」と言われれば微妙なのですが、こういう尖ったスタイルは好き嫌いが分かれるのは当然。むしろ、その振り切った姿勢は刺さる人には刺さると思います。

個人的な好みでいえば、テキスタイルのブランド「マポエジー」を主宰するエルザ・プー氏の部屋(88ページ~)が気に入りました。部屋の壁を異なる色で塗り分ける手法自体はよくありますが、その塗り分け方が個性的。壁の一部を三角形に切り取るようにペイントしたり、棚をまたぐようにペイントしたりと、なんとも自由な塗り分けです。

色選びも「パウダリーなピンクにブルーグレー」(89ページ)を組み合わせたり、「渋いグリーンとくすんだクリーム色」(89ページ)を組み合わせたりと、並々ならぬセンスを感じさせます。

本書にならぶ31人の実例を眺めると、雑貨にせよ壁紙にせよペイントにせよ、自分の「好き」を追求してインテリアをとことん楽しもうとしているのが伝わってきます。それが「パリジェンヌのおしゃれな暮らし」の肝なのでしょう。

パリのインテリアを考える3冊

10年前、大家を引き継いでマンションのリフォームを始めたころは、生活のベースとなるようなシンプルな「ハコ」を作ることばかりに注力してきましたが、この数年、その中でどんなふうに生活を彩るかについて考える機会が増えてきました。

その意味で今回ご紹介した3冊はどれも興味深く、「インテリアなんて自分が好きなように楽しんだもん勝ちだよ!」みたいなエールをもらえたような気がしました。

ありきたりでない、個性的な色と柄にあふれたパリのインテリア、ぜひのぞいてみてください。

アサクラ

大家業。世田谷のマンションと東京西部の山奥にある小屋を管理&経営しています。最近は熱海に購入したマンションの一室をDIYで修繕中。ESSE online(エ...

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