(660)エアコンがいつまで持つか、故障まで見守って感じた寿命

いよいよ夏本番といった感じで毎日本当に暑いですね。これだけの猛暑が続くと、大家さん的に心配になるのがエアコンの故障です。
いつエアコンを交換すればいいのか?――これは賃貸マンションを営む大家さんにとっては出費と入居者さんの生活とを天秤にかける難しい問題です。「経済効率のみを追求すれば壊れるまで使い続けてもらうのが正解」である一方、「顧客サービスの側面から見ると故障の際に過酷な暑さ・寒さを入居者さんに強いるリスクを避けるために早めに交換したい」という思いもあります。賃貸マンションを営むみなさんはその狭間で悩んでいるのではないでしょうか?
この問題を考えるための実験的意味合いも兼ねて(ケチなだけかもしれませんが)、僕自身が暮らす物件ではエアコン(やガス給湯器)はなるべく故障するまで使い続けてみるようにしています。今回は、そうして得られた知見を踏まえて「エアコンがいつまで持つか?」と「エアコンはいつ交換するべきか?」について僕なりの回答を出してみたいと思います。
■10年を過ぎ、15年目を迎えるまでがひとつの目安か
一般的にエアコンは10年を過ぎたら機会があれば新品に交換したほうがいいと言われていますね。でも、実際のところ、どれくらいもつのでしょうか?

世田谷のマンション内にある自宅のエアコンは2004年製でした。僕が入居した2014年の時点では設置からちょうど10年が経過したところでしたが、問題なく動きました。その後、2、3年間は順調に動作していたのですが、その後、少しずつ動作が鈍ってきたように感じられました。具体的には設定温度を低くしても以前とくらべて室内の温度が下がらなくなってくるのです。これは故障の兆候であり、交換を促すサインでもあります。お客さんの部屋ならばすぐに工事を手配するところです。

はっきり異変を感じたのは2020年の6月でした。梅雨に入って蒸し暑さを感じてひさしぶりに運転してみたら冷房がほとんど効かず、ただ生ぬるい風が出てくるだけの状態になっていました。設置から16年目の故障でした。
季節も季節だけにあわてて交換しようとしたものの、梅雨ということもあってすぐには工事の手配がつかず、2週間ほど湿気に耐えなければなりませんでした。真夏ではなかったのでそこまでキツくはありませんでしたが、高いお家賃をいただいている入居者さんに同じ体験をさせるわけにはいかないと思います。
このときの経験からエアコンは10年過ぎたら要注意、15年目くらいには故障が起こるかもしれないと考えるようになりました。
■事務所のエアコンを22年間使い続けることができた理由
続いては、通常よりも長持ちした事例をご紹介しましょう。

見るからに年季の入ったエアコンは、うちの妻と共有している事務所で使用していたもの。

こちらは2002年製のエアコンで2024年時点でもそれなりに動作していましたが、さすがに冷え方が甘くなっているのは明らかで寿命が近づいているのが目に見えてわかりましたので、他の部屋のエアコン工事のついでに交換することにしました。
およそ22年間の長きにわたって使い続けることができたのには理由があります。
先ほどの自宅が最上階の日当たりのいい角部屋であるのに対し、こちらの事務所は一階の庭に面した比較的暗い部屋なのです。同じマンションでも一階と最上階では夏の暑さには相当の落差があります。
さらに、事務所は営業時間しか使用しないので、エアコンの稼働時間も短くなります。
もともと暑さがそれほどでもない場所で使用頻度も低かったため、エアコンにかかる負荷が少なく故障しづらかった(故障を感じづらかった)という理由は大きいと思います。

こちらは新しいエアコン。いざ交換してみると冷え過ぎて寒いくらいです。今振り返ると、22年目のエアコンは半ば故障した状態だったのかもしれません。
■寒冷地では設置から10年で室外機の故障が発生
エアコンの寿命を考える場合、立地の問題も大事です。

僕が祖父から受け継いで管理している山小屋があるのは東京の西部の山間部。僕が子どもの頃はエアコンなしで過ごせるくらい涼しかったのを思い出します。
しかし、夏の暑さが年々強まってくるにつれ、人が集まったりすると室内が蒸し暑く感じることもあり、およそ20年前にリビングの端にエアコンを設置しました。

部屋の構造上、床の間しか設置できる場所がありませんでした。

2006年当時は現在とくらべればまだ夏の暑さはさほどでもなく、冷房は一年に1、2回使うていどでした。あとは肌寒い春や秋に暖房を入れることが数回あったというくらいでしょうか。
使用頻度が低いのですからさぞ長持ちするかと思いきや、設置から10年目となる2016年には早々と壊れてしまいました。
このケースでは効きが悪くなるという「劣化」ではなく、スイッチを押しても冷房が作動しなくなってしまったのです。
もともと使用頻度の低いエアコンですから、なくてもガマンできるということで数年そのままで放置していましたが、あとで修理の際に室外機が故障していたと判明しました。

東京とは名ばかりの山奥の寒冷地なので、屋外の過酷な環境が影響したのでしょう。
■「28,372円」で修理して4年後に再び故障
さて、使用頻度は年間で数えるほどで、設置から10年で故障してしまうとは割の合わない話だと感じましたが、エアコンなしではお客さんも呼べないので、メーカーさんに相談して見てもらったのが2019年。ここで室外機内の基盤が故障していて室内のエアコンが動作しなくなっていると判明したのでした。

かかった修理代金は出張費など込みで「28,372円」。安くはないですが、これでしばらくしのげるのならば文句は言えません。
しかし、エアコンの修理というものは一時的な延命処置に過ぎないのも事実で、2023年の春には再び故障してしまいました。
その後、猛烈な暑さをエアコンなしで過ごしたのは以前も書いたとおり。
2019年に修理し、2023年に再び故障したので約4年延命できたことになります。一年あたりの約7千円と考えるとそこそこの修理代金だったかもしれませんね。
全体の寿命としては、2006~2016年までの10年+2019年~2023年の4年で、トータル14年。使用頻度の低さに加え、修理までしたことを考慮するとやはりちょっと短めの印象です。

なお、新しいエアコンを設置したのが昨年=2024年のこと。先述のとおり以前は奥の床の間の壁に設置していたのですが、

手前の下がり壁に変更してもらったおかげで、室内に冷風が行きわたりやすくなりました。
しかし、室外機が過酷な屋外に置かれていることは変わらず、このエアコンもいつまで持つことやら、不安な気持ちはあります。
■エアコンは10年を越えたら、そろそろ交換を意識するべき
以上、僕が管理している3つの物件で故障する(ギリギリ)までエアコンを使い倒してみたわけですが、こうして比べてもエアコンの寿命はまちまちであり、一概に何年は持つと言いづらいことがわかると思います。
ただ、はっきり言えることは、「設置から10年未満でエアコンが故障することは(ほぼ)ない」ということです。一般的に言われるように、エアコンの寿命が10年というのはこの事実を指して言われることなのでしょう。
10年を過ぎてからいつまで故障せずに稼働するかは、環境や使用頻度といった要素に大きく左右されます。夏場も冬場も毎日、一日中エアコンをつけっぱなしにしていれば寿命が短くなりがちでしょうし、うちの山小屋のような自然が過酷な環境下では室外機にかかる負担も大きいでしょう。
と書いていて思い出したのが熱海。

こちらの物件、リフォーム前の室内はボロボロでしたが、エアコンだけは比較的新しく(たしか2018年製)、現在も元気に動いています。ただし、目の前が海なので塩害などで室外機に負担がかかる怖れはあり、こちらもいつまで持つか不安です。

熱海の物件は別荘だからよいのですが、日常を暮らす部屋ではエアコン故障は文字通り命取りになります。
大家さん目線でいえば、2020年の民放改正で「一部滅失等による賃料の減額」がより明確に定められたこともあり、入居者は「設備の故障などで部屋の一部が使用できないとき、その分だけ家賃を減らす」ことを要求できるようになりました。住宅の不備をお金で穴埋めしてくれという話です。
でも、たとえお金をもらえても不便を強いられた入居者さんは良い気持ちがしないでしょうし、大家さん的には家賃の減額は経済的な損失になります。
これらを考慮すると入居者さんのお部屋では(故障はなくとも)設置から10年を過ぎたエアコンは万一の事態に備えてトラブル予防的に交換するのがよいのだろうと考えています。自宅ならばもう1、2年は引っ張ってもいいでしょうかね。
結局、「10年を過ぎ、15年目を迎えるまでがひとつの目安」という冒頭の一般論と大差ない話に落ち着きましたが、自分なりに検証した結果なので納得感はあります。
次回は、同じ視点からガス給湯器の寿命について考えます。