(770)【日刊Sumai再録】賃貸マンションの町内会費、どうするべき?
前回、世田谷のマンションの前にあるゴミ捨て場について書きました。
この中で触れたとおり、今の東京では地域コミュニティのつながりは非常に希薄になってきています。僕のように三代にわたって地元で大家をやっていても、お隣とのつきあいはほぼゼロに近い状態。近所を見回してみると、当然ながら町内会に加入し(たく)ない人もたくさんいます。
そんな時代に賃貸マンションに入居している人の町内会事情とはどんなものなのかについて考えた「日刊Sumai」の再録記事「町内会費は大家が払うべき?賃貸マンションの疑問」(2019年11月公開)をごらんください。
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「町内会費は大家が払うべき?賃貸マンションの疑問」
先代からマンションを引き継ぎ、経営についていろいろと見直すなかで、気になったのが町内会費です。
何が気になるかと言いますと、年会費がけっこう高額なこと。詳細は伏せますが、2万円に届かんという額で。確認すると、なんと入居者さんの分まで支払ってることがわかりました。
今回は、賃貸マンションと町内会の関係、町内会費の妥当性などについて大家の視点から考えてみました。
■賃貸を引き継いだら知らないうちに町内会の一員になっていた
僕自身、地縁的な共同体とのかかわりが希薄だったこともあり、町内会の存在を意識したこともありませんでした。しかし、うちの会社が先代から町内会に入会していたため、マンションを引き継いだら(知らないうちに)町内会の一員になっていたのです。
これ自体は仕方ないことだと思うのですが、入居者さんの分まで含めた金額をマンションが支払うというのが引っかかりました。
基本的に入居者さんは土地に定住する可能性も低く、地域の集まりにもほとんど参加しません。その人たちの町内会費をマンションの大家さんから一括で徴収するのはおかしいのでは?と思ったのです。というか、そもそも町内会に入る意味ってどこにあるんでしょうか?
いろいろと「?」が浮かんできたので、町内会の事務局に連絡を取り、脱退も視野に入れた上で相談したい旨を伝えました。
■町内会サイドが引き留めにあたって挙げた理由は?
しばらくして担当の方と会ってお話することになりました。
先方としては当然ながら「引き続き払ってもらいたい」とのこと。
理由として挙げられたのは…
【理由1】「先代の経営者も払っていた」
【理由2】「ほかの賃貸マンションも入居者の分を払っている」
【理由3】「万一の災害時に備える防災的な意味もある」
あたりでしょうか。
理由1については、経営者が代わってしまった以上、ちょっと納得しがたいですね。
理由2ですが、詳しく聞いてみると、賃貸マンションがすべて払っているわけでもないようです。事実、近所で親戚が営んでいる小さな賃貸では、ご本人分しか払っていないようでした。こういうのを聞くと不公平な感じがしてしまいますよね。
本音を言えば、ここをもっと突っ込みたいのですが「あいつが払ってないのに何でうちが払うんだ」という論法は、親戚まで飛び火する可能性があるので、なかなか難しいんですよね……。
理由3の防災は、僕も無意味とは思いません。地震や台風の際に、ご近所で助け合うことの意味はあるでしょう。避難訓練や消火訓練をやる際の負担を拒むつもりもありません。
しかし、町内会の活動内容を調べてみると、防災が占める割合が決して高いとは言えないのが引っかかりました。
■そもそも町内会の活動って?全員が入らなければならない?
年間のスケジュールなどを見るかぎり、防災活動はあくまでほんの一部です。
「盆踊り」「お神輿」はともかくとしても、「囲碁大会」「グランドゴルフ」「健康セミナー」「文化セミナー」などは、特定の高齢者によるイベントという印象が強いです。地域のお祭りが好きな人や、ご近所の人たちと集まってイベントや習い事をやりたい人にとっては町内会は貴重な機会なのでしょう。
でも、その金銭的な負担(の一部)をほぼ無関係な人に求めるのはどうかと思うのです。たとえば、活動を防災や防犯などの必要不可欠なものだけに絞れば、もっと会費は下げられるはず。
エクストラの活動に関しては、会員制度の中でうまく再徴収してもらえたりすると、イベントに関わらない人にも納得がいくかたちになると感じました。
ちなみに、町内会の加入意義としてゴミ捨てが話題になることがよくあります。田舎の場合、ゴミの回収に手間がかかり、それをあるていど地域住民で負担する必要があったりするので、それを町内会費の根拠にするのは納得できます(が、世田谷などの都市部ではあてはまらない話です)。
■ご近所と険悪になっては賃貸を経営することはできない
こんなふうに考えていくと、大家が一括してマンション入居者の分の町内会費を支払うのは、どうも不合理な感じがしてきます。
僕の頭に浮かんだ「筋の通った」選択肢は、マンションとしては町内会を脱退し、町内会にはあらためて個々の入居者さんに個別に勧誘してもらい、町内会費を徴収してもらうという考え方です。
しかし、それでは結果的に負担を入居者さんに押し付けるかたちになります。入居者さんの中には町内会の勧誘を不快に思う人だっているでしょう。賃貸マンションというサービス業を営んでいる以上、「筋が通っている」からといって、その選択はできません。
そこで、マンションによって負担にもバラつきがあることを指摘しつつ、築古マンションの経営の大変さなども訴え、やんわり減額をお願いしてみました。
うちの町内会は強面でグイグイくる雰囲気でなかったことも幸いし、向こうから「半額に減らしますのでお支払いしていただけないでしょうか」という提案をいただくことができました。
それでもまだ数世帯分の負担に相当しますし、心の中のモヤモヤが消えたわけではないのですが、あくまで第一目的は経費削減だと自分に言い聞かせ、納得した次第です。
そもそも、賃貸経営はご近所と険悪になっては成り立ちません。こちらもあるていど譲歩しつつ、半額の減額で折り合いをつけるのが現実的だったと思っています。
■協力できるところは協力することも大事
これにて一件落着と相成ったわけですが、今回の一件で町内会から悪印象を持たれたら困るな、と心配な気持ちもありました。目先の経費削減で「藪をつついて蛇を出す」ことになってはたまりません。
そんなふうに思っていた矢先、町内会の方からうちのマンションの敷地の一部を子ども会の日に駐輪場として貸してくれないかというお願いをされました。その敷地はマンションの入口とは別の場所だったので、トラブルも起きないと見込んで快諾しました。その際の先方の態度も柔和でしたし、ひとまずホッとしました。
こういうかたちで協力しておくことで町内会、ひいてはご近所とうまくつきあっていければいいのですが。
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さて、この記事を書いてから7年が経ちました。
うちのマンションは変わらず町内会には加入し続けていて、町会費も払い続けています。僕には子どもはいませんが、甥っ子が生まれて地元とのつながりが少しだけ戻ってきたので、ご近所の方々に話を伺ってみたのですが、子どもがいても町内会に加入していない人が散見されます。中には「入ってもいいけど、勧誘されたこともないし、自分から行くと厄介な仕事を押し付けられそう」なんて方もいました。
たしかに、町内会に加入している年配の方の中には、些細なことで近所に頻繁にクレームを入れるせいで近隣住民から厄介者として認識されている人もいたりします。また、平然と「年功序列」とか「女三界に家なし」なんて公言して年下や女性に圧をかけてくるキツめのご老人もいたりするので、現役世代から見たら「関わったらヤバいな」と警戒されるのもムリもありません。
そんなわけで町内会は若い人々のリクルートには苦戦しているようで、近い将来、衰退していくことが予想されます。
個人的にはそれはそれで仕方ないと思うのですが、町内会が姿を消したあと、個々の市民意識だけで地域の治安や秩序が維持されるのかについては疑問なところもあります。
日本の地縁的コミュニティには、慣習に従わない者を村八分にする同調圧力的な負の側面があるのは事実で、僕もそれを頸木のように感じたことは多々あります。
しかし、その同調圧力がある種の同質性を担保し、治安と秩序を維持してきたプラスの側面もあったと思うのですよね。かといって、「同調圧力よ、再び」と考えるのは短慮というもの。
さて、どうすればいいのやら。ゴミ捨てや町内会といった身近なトピックを通して、今後もこの問題について考えていきたいと思っています。


















