(449)【日刊Sumai再録】格安別荘を見学して感じたこと(前編)
熱海のリゾートマンションを購入して以来、空いた時間に不動産サイトで別荘情報を眺めるのが趣味になりました。最近は熱海以外のエリアの物件ものぞいたりしています。
以前、移住を考える友人に頼まれて山梨に格安別荘を見に行ったことがあって、ひさしぶりに当時案内してくれた不動産屋さんのサイトをのぞいてみると、あいかわらず築古の格安物件が売りに出されていて、ちらほら「成約済み」の文字も散見されます。別荘を手放したい人もいるけれど、買いたい人もちゃんといることに別荘保有者としてはホッとしました。
てなわけで、5年前に書いた格安別荘の記事を再録したいと思います。今回は前編。タイトルは「物件価格150万円!? 格安別荘は屋根に要注意」(2018年6月20日公開)。公開当初に掲載されたフリー素材の画像は削除し、必要に応じてアサクラが撮った写真で置き換えてあります。
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【物件価格150万円!? 格安別荘は屋根に要注意】
「別荘」がお金持ちの世界のものだというのは、もはや昔の話なのかもしれません。というのも、今や築古の別荘なら150万円ほどで買えてしまうからです(!)。
でも、格安別荘って実際のところ、どうなんでしょうか?今回は、山梨まで別荘を見にいったときの話。150万円で購入できる別荘のコンディションや安い理由など物件情報について詳しく紹介します。
■ 移住するなら、賃貸よりも別荘購入のほうがトク?
といっても、僕自身が別荘を買おうと思ったわけではありません。
実は僕は、祖父が東京のはずれの山奥に建てた物件の管理もしています。すでに築50年以上を数え、かなりくたびれた山小屋です。そこに度々遊びにきている友人から相談を受けたのです。
その友人、昨夏に体験移住を経験し、いよいよ本格的に移住を検討し始めたそうなのですが、毎月の家賃を払うくらいなら、いっそ別荘を買って住むほうがいいかも、なんて言うのです。
「別荘なんてそんなに簡単に買えるの?」と思った僕ですが、なんと150万円の物件があるとか!築40年ほどの物件だとはいえ、世田谷で賃貸を営む身としてはショックプライス。なんでも維持費や管理費を嫌った所有者が安くても手放そうと売りに出しているらしいのです。
150万円で買える別荘っていったいどんな物件なんだろう……。気になった僕は友人といっしょに山梨までクルマをとばしたのでありました。
■ 150万円の物件グレードは10段階で「1」か「2」?
都心から高速に乗っておよそ2時間。山梨と長野の県境に近いインターを降りると、そこは高原の別荘地でした。
うちの山小屋がある東京西部の山間部とはたたずまいからしてちがいます。ゆったりとした道のわきにはいかにも別荘らしい建物がならび、白樺が上品な雰囲気を醸し出します。こんな別荘地に150万の物件があるのか……期待と不安が交錯します。
実は、ほかにも気になっていたことが。それは不動産業者のことです。
いくら値が下がってきているとはいえ、やはり別荘といえば1,000万円くらいは軽くするのが当たり前なイメージ。そんななか150万の物件を見に来るなんて、カネにならない客として邪険にされるのではないか。
しかし、待ち合わせ場所に現れた担当者は丁寧で柔和な印象の中年男性で、ひとまずホッとしました。かんたんな説明もそこそこに、早速、物件を見に行きます。
物件に向かう車中、「今回の物件は10段階(のグレード)でいえば、1か2です」と説明されました。
そりゃ、そうでしょう。なんてったって築40年余りで150万円です。7とか8とか言われたら、こっちが警戒します。
「ネットで見ると写真はいいんで、期待しすぎてしまう方もいるんです」
じゃあ、実物を見るとガッカリするんでしょうか。
「ドアを開けて中をのぞきこんだだけで『ここはいいや』というお客様もいらっしゃいますよ」
それはいくらなんでも失礼な話ですが、さて、どうなることか。
■ 150万円の別荘は予想以上にいいコンディション?
が!実物を見てビックリ。
ごらんのとおり、とても150万には見えません。屋根は急な角度の片流れ屋根で、パッと見、ぜんぜん古さを感じさせません。外壁も渋いブラウンのせいか、汚れも目立ちません。ベッタリなペンキ塗りじゃなく、木目が残っている外装もいい感じ。友人ともついテンションが上がります。
「いいよ!全然いい!」
ドアを開けると、漂ってきたのは、ほんのりカビくさい臭い。しばらく閉めきっていた山の家に戻ってきたときの、あの臭いです。
別荘に過度なファンタジーをお持ちの方はガッカリなのかもしれませんが、僕らは慣れているのでほとんど気になりません。正直、住んでしっかり換気すれば、解消されるレベルです。
リビングを見渡すと、売り主さんの家具がまだ残っています。別荘の場合、希望すれば家具も引き取ることができる場合もあるそうです。
キッチンなどはかなりくたびれていますが、それはあとからどうにでもできること。
間取りとしては、リビングは吹き抜けになっており、開放感があります。
ごらんのとおり、リビングに接する部屋(四畳半)が上下2つ。
どちらも昭和を感じさせる和室ですが、一階の部屋はウッドデッキに隣接しており、気候のいい時期なら窓を開け放って気持ちよく過ごせそうです。
ウッドデッキ自体の状態も良好で、まだまだしっかり使えるそうです。
お風呂は黒のタイルが印象的。洗面を兼ねており、独立した洗面はありません。
お風呂場の手前の壁が湿気にやられてベコベコになっていましたが、おそらくDIYで直せるレベル。そのほか目に見えて傷んでいるところはありません。
うちの山の家も築40年を迎えて以来、いろいろと修繕をしていますが、うちよりもよっぽどいい状態に見えます。これで150万なら万々歳じゃないですか。
■ 格安別荘のポイントはズバリ屋根!
友人も好印象を受けた様子でしたが、僕たちをクールダウンさせるように不動産屋さんがひとこと。
「ただ、屋根の状態がかなり悪いんですよ」
なるほど、たしかに苔やツタが生えていますが、これくらいなら別に大したことないのでは?しかし、不動産屋さんが指さした先を見ると屋根が一部陥没しています。
「この状態だと、いつ雨漏りしてもおかしくないんです」
そうなのです、別荘にとって雨漏りはクセモノです。
うちの山の家も7年前ほどに雨漏りがあって屋根を直しましたが、屋根を直すには足場を組む必要があり、けっこうな費用がかかるのです。
さらに、たいていの場合、足場を組んだなら外壁も塗装しなきゃもったいないという話になります。
その結果、100万から150万くらいかかってしまうこともあります。150万で買って150万で修繕となると、結局、300万円の物件を買うのと変わらないことになります。
実際、直す手間を考えて、修繕済みの300万円の物件を選ぶ人もいるらしいです。なるほど、150万円という格安の価格には、こういう事情が隠されているんですね。
ただ、かつてバブルの時代には高額で取引きされたであろう別荘をたった300万円で所有できるというのは、依然として夢のある話だと思います。
次回も引き続き別荘内見の話をお届けします。
気になる管理費のことや、どの季節に見に行くべきか、などなど考えます。
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あらためて見直しても悪くない物件だなと思います。吹き抜けも素敵ですし、屋根を直して内装を整えてあげればぐっとおしゃれな山荘になりそうです。
急を要する屋根はともかく、キッチンや水回りについては毎年少しずつ直していけばいいのです。そうやって手を入れていくことで物件に対する愛着も徐々に強まっていくのではないかな、と思います。
後編に続きます。