(489)失敗リフォームと贅沢リノベーションを同アングルで比較する
お金をかけすぎた「贅沢リノベーション」ともいえる工事を施した部屋を前回、前々回とご紹介しました。
実はこのお部屋、15年ほど前に先代の大家が場当たり的なリフォームを施した結果、家賃もろくに上がらず、入居者が居つかない部屋となっていた「失敗リフォーム」の部屋でした。
実際に僕も暮らしてみて実感しましたが、洗濯機置き場が邪魔で料理しづらいキッチンをはじめ、リフォームのせいでかえって暮らしづらくなったとすらいえる部屋でした。そのひどさについては、同様のリフォームを施した別の部屋を紹介した記事をごらんいただければおわかりになると思います。
「ウォシュレット」「ユニットバス」「室内置きの洗濯機置き場」を設置するべきという不動産屋さんの助言を受け、先代が深い考えもなしに安いだけが取り柄の業者と組んでおこなった工事はまさに「失敗リフォーム」の典型であり、現在まで僕にとっての反面教師であり続けています。思えば、その反動が贅沢リノベーションとなってあらわれたのかもしれません。
今回は、この「失敗リフォーム」を施した部屋を撮った過去の写真にあわせ、同アングルで「贅沢リノベーション」を施した室内を撮影し、両者をならべてごらんいただきます。なお、「失敗リフォーム」は今からおよそ15年前に工事が完成した際に不動産屋さんが撮影した写真、「贅沢リノベーション」は工事から8年を経て空室となった今年にアサクラが撮った写真を使用していることをおことわりしておきます。
まずは間取りからごらんください。
大きく変わったのは、キッチンの一画に陣取っていた洗濯機置き場をベランダに新設したサンルームへ移転し、キッチンをコンパクトにしてリビングを広く取ったところでしょう。このプロセスについては前回の記事をごらんください。
洗面です。これまで何度も何度も書いてきましたが、僕は一体型の洗面台がとにかく嫌いです。これひとつで照明までオールインワンで安価でありがたい、というのはあくまで施主(大家)側の理屈にすぎないと思っています。
収納が豊富なように見えて、いざ使ってみると物が置きづらい。ごちゃごちゃとしているので掃除もしづらい。なにより、デザインという概念がないの?と思ってしまうくらいの野暮ったさ。個人的には長所が見つかりません。
ちなみに、この失敗リフォームが施されるよりもさらに前はこんな感じの洗面でした(写真は別の部屋のものを反転したもの)。タイル張りの壁、シンプルなボウル、中が収納になったキャビネットなどなど、構成としてはムダがなく、一体型とくらべれば工事前のほうがよっぽどましだったと感じます。
こちらはユニットバス。唯一、リノベーションで手を加えなかった場所です。状態も良好だったので、現在まで残して使用しています。シャワーヘッドとホースを新しいものと取り換え、ハンドルやシャワーをシルバーのタイプに交換し、壁にマグネット式のミラーと小さい棚を追加しました。このあたりの工夫については以前の記事をどうぞ。
さて、「失敗リフォーム」とはいえユニットバスを設置したのはよかったのですが、そのせいで廊下が狭くなったのも問題でした。
その結果、お風呂の向かいにあるトイレのドアを開けると壁にぶつかって開き切らないという事態が。写真は別の部屋で撮影したものですが、これはもはや欠陥住宅の領域です。
ということで、リノベーション時にはドアの位置はいじらず、折れ戸式に交換してストレスなく開けられるようにしました。
リフォーム時、トイレは半世紀前の「フラッシュバルブ式」便器の上にウォシュレットつき便座が追加されたのですが、もともと狭くて使いにくかったトイレが大きな便座の設置によってさらに前にせり出してしまい足元に余裕がなく、立ち上がったときに顔が前の壁にぶつかりそうになるというトイレになってしまいました。
そこで、リノベーション工事ではトイレ内の空間を前方に広げてゆったりと使えるようにしました。
トイレ内の空間を広げることができたのは、トイレの前方の壁にあった収納を撤去し、そのぶんをトイレの奥行きに割いたからです。収納の有無については意見の分かれるところだと思いますが、やはりトイレの使い勝手を優先するのが筋かな、と。
壁はリビングからひと続きにしたおかげでシンプルですっきりとしたのもよかったです。
キッチンはパッと見ただけだと共通点が見つからないほどの激変ぶり。リフォーム時に設置された洗濯機置き場がガスコンロの前にかぶり、とにかく料理しづらいキッチンでしたが、思い切って洗濯機置き場をベランダのサンルームに移し、L字型のレイアウトに変更したおかげでコンパクトながらムダのないキッチンスペースができました。
賃貸でよく見る最安値のブロックキッチンをシステムキッチンに置き替えたのに加え、イケア(IKEA)のキッチンツール「グルンドタール(Grundtal)」を壁に取り付けたことで利便性が向上しています。
キッチンからリビングを眺めたところ。キッチンカウンターがリビングを間仕切る役割を果たし、引戸をオープンにしてもクローズにしても使えるキッチンになりました。リビングとその左に見える寝室を区切る下がり壁もリノベーション時に撤去しました。
下がり壁の撤去に伴い、アコーディオンカーテンもなくなり、リビングと寝室の一体感が増し、ひと続きの広々とした空間として使えるようになりました。なお、天井にはカーテンレールがありますから、丈の長いカーテンをかければ間仕切ることも可能です。
リビングと寝室を別アングルから。間取りに大差がないぶんインテリアの落差がはっきり感じられると思います。
クッションフロアが安っぽいムードを醸し出していた床は、合板フローリングで上品な雰囲気に。注目いただきたいのは、巾木をなくしたこと。巾木がないおかげでシンプルな印象が強調されているのがおわかりでしょう。
寝室の収納。もともとは引き違いの引戸がついた押し入れでした。この引戸、実際に使用してみると建具が邪魔で出し入れがしづらいと感じることが多かったので撤去し、中身をそのままにロールカーテンを取り付けました。
開閉がしやすく、通気性もあるので湿気がたまりづらく、建具にくらべて施工費用も安いのでおすすめです。
いかがでしたか?
我ながら同じ物件とは思えないビフォーアフターでした。
見た目の改善もさることながら、やはり大事なのは使い勝手の改善。賃貸マンションにおいては、リフォームであろうがリノベーションであろうが、できた物件が暮らしにくくてはダメだと思っています。
前回書いたとおり、いささかお金を使いすぎた物件なのですが、入居者さんは8年近くお住まいになってくれたので、きっと住みやすい物件だったのだろうな、と自負しています。
次回は、内見に向けた準備の話を。