(94)バーベキューで塊の肉を焼く【中編】「いざ火入れ!」
前回、火を熾すためのセッティングが完了しました。
着火用ライター(いわゆるチャッカマン)を炭や薪、新聞紙が折り重なった山の中に差し入れ、着火剤めがけて点火します。
すると、あっという間に火が出ます。
うちわで風を送ってやると、あれよあれよという間に火が大きくなってきます。
ばっちり点きました。
早速、焼き網をのせ、お肉を投入。
薪の強火で肉のまわりを一気に焼いていきます。
注意したいのが火の強さと向き。
ガスコンロとちがい、バーベキューの火は生き物のように形を変えます。
屋外なので風に左右されることもあります。
均等に焼き色がつくように横にしたり裏にしたりしてポジション調整していきましょう。
個人的にはここがいちばんの楽しみなわけで。
複数の肉のポジションを入れ替えたり、薪の位置をいじったり、毎回ちがうシチュエーションなので飽きることがありません。
ふだん見ることのない「生の」火を感じられるのもバーベキューの醍醐味なのかもしれません。
ポイントとしては、「パッと見で美味しそう」な地点でやめず、「ああ、焦げちゃった」というところまで黒く焼くこと。
これくらいだとまだまだ。
これでも足りません。
火が弱いなと思ったら、うちわであおいで火を強くしましょう。
それでも足りなければ、薪を足して火を熾し続けます。
別のときの写真になりますが、
これくらいまでいっちゃってもOK。
初めての人が見ると「大丈夫?」という顔をします。
そんなリアクションも楽しい。
一般的に失敗料理の代表とも思われる「焦げ」ですが、ことバーベキューにおいては「スモーキーな香り」をもたらす重要な要素のひとつです。
口に入れてみると不思議とイヤな臭いや味はありません。
むしろ、この「焦げ」が肉に燻製にも似た風味をもたらし、肉を格段に美味しくしてくれます。
肉のまわりが黒々と焼けたら薪の出番は終了。
もしまだ元気よく燃えている薪があれば、取り出してしまいます。
この頃には炭には確実に着火していますので、今度は炭火の優しい火でじっくりとお肉の中まで火入れをしていくのです。
焦げた肉も、中身はまだまだ生。
炭火で火を通すことで、外も中も美味しいお肉に仕上がります。
ときどき肉を転がして、炭火があたるところを変えながら、ゆっくり待ちます。
炭火のすごいところは、「あれ?もう消えちゃったかな?」と思っているようで、じわじわと熱を放出し続けるところ。
秋のちょっと寒い日などは、この炭火の温かさが心地よいです。
集まったみんなで火を囲むと、なんというか人間の原初的なコミュニティを体感しているような気持ちになって楽しいもの。
会話も弾みます。
バーベキューは夏の娯楽の定番と思われがちですが、個人的には秋がベストかなと思っています。
食欲の秋とも言いますしね。
ただ、炭火の温かさは怖さでもあり、よく知らない人がもう消えたと思って放置してしまい、火事につながるなんてニュースもよく耳にします。
見た目で軽々に判断せず、終わったらきちんと水をかけて消火しましょう。
炭火に切り替えてから30分ほどでしょうか。
見た目的にはもう大した変化は訪れません。
でも、肉の表面を押してやると生のときのようなブヨブヨ感がなくなってきているはず。
徐々に火が通ってきたということです。
まあ、肉の中身は見えないので、このへんの見極めはなかなか難しく、僕も毎回悩むのですが、炭火はフライパンで肉を焼く場合にくらべて、数分のずれが火入れに致命的な影響を与えてしまうということはありません。
火からあげるのが早すぎて中が生で食べられなかったとか、焼きすぎてパサパサになってしまったということはほぼないと言っていいと思います。
遠赤外線でじっくり火を通す炭火は焼き具合のレンジも広いので、あまり神経質にならずにチャレンジしながら学んでいくといいでしょう。
火からあげたら、アルミホイルでくるみ、しばらく置いておきます。
どんなふうに焼きあがったかは次回のお楽しみ。