(102)山小屋に置く超小型モビリティの条件は「EVでタテに2人で乗れる」こと
季節はすっかり冬。
山小屋も冬のお休みに入り、春から秋にかけて山小屋に足しげく通っていた自分にはいちばん寂しい季節です。
今年は山小屋の本格的な運用に向けての準備の年でした。
親しい入居者さんや友人や知人に実際に山小屋を使ってもらって感じたのは、やはり移動手段の必要性。
静かな環境でじっくり本でも読んで過ごすというわけでもなければ、せっかく自然に囲まれた環境を満喫すべく外に出かけてみたいもの。
「温泉・蕎麦・豆腐」のような定番に加え、近年はおしゃれなカフェやパン屋さんもオープンし、街遊びも楽しめるようになってきました。
しかし、都心との大きなちがいはスポットとスポットのあいだが「徒歩で移動するのは無理」と思うくらい離れていること。
バスの本数も多くないので使い勝手もいいとは言えません。
タクシーではお金がかかり過ぎます。
こういう場所では、やっぱりクルマの便利さを実感します。
山小屋にお客さんを招く際には、イントロダクションも兼ねて僕自身がクルマで案内するのですが、問題は2回目以降。
お客さんが単独で訪れた際に、移動の手間がネックになっていまひとつ遊びづらいようなのです。
山小屋の最寄り駅近くでレンタカーを借りるという手もありますが、せっかくタダで泊まれるのにレンタカーにお金を払うとちょっともったいない気もするでしょう。
だったら「山小屋に専用のクルマが置いてあればいいじゃないか」というのが、今回の出発点。
手っ取り早く安価なのは、小型の軽自動車を中古で手に入れてしまうことですが、滅多に使用しないクルマだけにバッテリー上がりが心配。
軽自動車をのびのび置けるほどの駐車スペースもありません。
「もっとコンパクトで使いやすいクルマってないの?」と思ってたら、世の中では数年前から「超小型モビリティ」なるものが話題になっているそうで。
寡聞ながら、初めて知りました。
国交省の定義によれば「自動車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動の足となる1人~2人乗り程度の車両」なんですって。
山小屋で使うなら4人も乗れなくていいし、EV(電気自動車)なら気軽に充電できるし、軽より小さければ駐車場の問題もない。
「いいじゃん、超小型モビリティ」ということで乗り気になってきたのですが、さすが規制の厳しい日本というか、依然法整備が途上で実用化はまだまだとわかりました。
先の定義を満たすような新しい規格を設けなければ、ふつうに公道を走るのは難しいそうです。
とはいえ、来年は天下のトヨタが満を持して「超小型EV」をリリースするとのことで、購入に際する補助金も検討され、ようやく事態は好転しそうな気配です。
ひょっとして来年は「超小型モビリティ元年」になるのかという大きな展望はさておき、我が山小屋に必要な超小型モビリティの条件をまとめると…
【EVであること】
先も書いたとおり、バッテリー上がりを心配しないで済むのは大事。
ガソリンスタンドまで行くのも面倒です。
EVなら自宅で充電できるので、ぐっと使いやすいです。
【2人乗りできること】
実は1人乗りの超小型モビリティはすでに販売され、実用化されています。
セブンイレブンなんかの宅配で見かける「コムス」(COMS、トヨタ車体)です。
1人乗りということで公道を走れるんだそう。
原付4輪という聞いたことのない区分だとか。
でも、山小屋に遊びに来る人たちは夫婦やカップルがメインなので、1人乗りでは意味がありません。
【車幅がコンパクトであること】
さらにポイントなのは、車幅がコンパクトであること。
2人乗りの超小型モビリティは、大きく分けてヨコに2人が乗るスタイルと、タテに2人が乗るスタイルの2種類があります。
ヨコに2人乗るとそれなりの車幅が必要で、軽と大差ないスペースを占めることになってしまいます。
山小屋は斜面に建っていて、クルマがのびのび駐車できる平面を確保するのが難しいので、なるべく車幅は小さいのが理想です。
となると多少窮屈でもタテに2人が乗るバイクのようなスタイルが望ましいのです。
EVでタテに2人で乗れる――そんな超小型モビリティとして、僕が目を付けたのが「日産ニューモビリティコンセプト」(NISSAN new mobility concept)でした。
このクルマ、日産のお膝元である横浜市で実験的にカーシェアリングサービス「チョイモビヨコハマ」で実際に乗ってみることができます。
それなら試してみない手はないと、横浜に向かうことに。
次回は、「日産ニューモビリティコンセプト」に乗って感じたことや山小屋との相性について考えます。