(11)業者を選ぶときに僕が考えること
前回、2社で相見積もりを取り、ほぼ同額だったという話をしました。
さんざん比較しておいてなんですが、うちの場合、世田谷のマンションをリノベーションするときはほとんど「相みつ」は取りません。
「安かろう悪かろう」な激安業者は別にして、あるていどまともに仕事をしてくれる業者さんの工事価格はたいてい大差ないからです。
大家業をしていると、よく友人から相談を受けて見積もりを見たりすることもありますが、やはり相場というものはあるな、と実感しています。
じゃあ、ほぼ同額の見積もりが出てきた場合、どっちの業者を選べばいいのでしょうか?
月並みな答えで恐縮ですが、僕が業者さんを選ぶときは、見積もりが同額の場合に限らず、「どれくらいこちらの要望を理解してもらえるか」「しっかりコミュニケーションが噛み合うか」を大事にします。
ふだんマンションで工事をお願いしている業者さんとは不動産会社の紹介でお付き合いが始まったのですが、仕事を重ねるごとにうまくやりとりできるようになっていると実感していて、他社と「相見積もり」を取る必要をほとんど感じません。
じゃあ、なんで今回の山小屋の修繕にかぎって相みつを取ったのかと言いますと…
もともとこの離れの工事については、山の地元の業者さんにお願いするつもりでした。
離れこそ30年間放置してきましたが、母屋についてはこの業者さんにお願いして、10年間でシロアリ駆除やら屋根瓦の補修やら、いろいろ修繕してきた経緯があります。
(詳しくは日刊Sumaiの連載をどうぞ)
ところが、世田谷の業者さんに山小屋のリノベーション工事について話してみたところ、「ふだんたくさんお仕事いただいてますし、ぜひそちらもやらせてください」と言ってもらえたのです。
正直、「世田谷の業者がはるばる東京西部の山奥まで来てくれないだろう」と思っていただけに驚きました。
聞けば、東京都下の山間部でも現場に近い業者さんや職人さんたちと連携して工事することが可能なんだそうで、過去に青梅で工事をしたこともあるとか。
こんな経緯もあって、流れ的に2社から見積もりを取ることになったのでした。
その結果、僕が選んだのはやはり世田谷でお世話になっている業者さんでした。
仕事の誠実さでいえば、どちらもきちんとやってくれることがわかっています。
前回書いたとおり、見積もり金額もほぼ同額です。
山の地元の業者さんは山間部での工事に慣れているので、地元特有の事情(シロアリ対策や湿気の対策)を汲んだ工事をしてもらえる点ではアドバンテージもありました。
それでも世田谷の業者さんを選んだ理由は、担当のKさんがほぼ同じ年齢で話しやすく、僕のインテリアの好みをしっかりと理解してくれているからです。
今回の山小屋の工事ではDIYで内装を仕上げるつもりでしたが、それでもいろいろと業者さんにお願いする部分はでてくるので、僕の要望がしっかり伝わるかどうかは非常に大事です。
この仕事をしていると、相手に話が通じるかどうかで工事中にこちらが受けるストレスは大きく変わってきます。
今まで山の業者さんにお願いしてきた工事は「屋根瓦の補修」とか「シロアリの駆除」とか、実際的なメンテナンスが中心で、インテリアに関わる部分での仕事ぶりは未知数。
特に、インテリア面での好みやセンスは地域ごとに差が出るところでもあり、そのへんの意思疎通がスムースにできるかは不安材料でした。
外装だけ山の業者さんに頼み、内装の下準備を世田谷の業者さんに頼むという選択肢もないわけではなかったのですが、2つの業者を使うと両者のすりあわせや調整をおこなう手間もありますし、やはり一社に統一できるならそれがラクだろうと思ったわけです。
個人的な体験談をつらつら書いてきましたが、「業者さんと自分との相性がいちばん大事」だと思います。
「物事を進めるスピード感」とか「どこまで説明すれば十分か」とかも含め、相手とフィーリングやセンスが合うかどうかは、たぶんお金よりもずっと重要です。
たとえば、「工事内容についてすごく丁寧に説明してくれる」業者さんは良さそうに思えますが、「細かいことはいいから、どんどん進めてほしいな」というお任せ型の施主さんとは合いません。
逆もしかりで、勝手に工事を進められたと感じて「決める前に、ひとこと相談してよ……」となるパターンもありえるわけで。
ところが、「自分がどんな業者さんと相性がいいのか」を考えもせず仕事を依頼して「業者なら、かくあるべき」という独善的な見方を押し付ける施主さんってけっこう多いんですよ。
だいたいの相場がわかったら、あとは「人」をよく見てみることを勧めます。
たとえば、見積もりのために業者さんが現地調査に来た折には「勝手に見て行っていいよ」ではなく、ぜひとも立ち会っていろいろ質問したり話をしてみましょう。
そうすれば、おのずと相性の良しあしは見えてくるはずです。