(159)得なの損なの?別荘のメリット・デメリットを実体験から考える
こうして別荘(らしきもの)を管理していると、たまに友人から維持管理や購入に関する相談を受けたりすることがあります。
そんなとき話題にのぼるのが「別荘を持つ(買う)のって、結局、得なのか損なのか」というよく耳にするトピックです。
最近は、100万ちょっとで築古の格安別荘が手に入ることもあり、お金持ちでなくとも別荘を検討できる世の中になりました。
とはいえ、不動産は一度購入したら簡単には処分できない厄介なもの。
本気で考えるなら「別荘のメリットとデメリット」をしっかりと知っておくことが大事です。
というわけで、今回は祖父から受け継いだ築50年超えの別荘を10年以上管理・修繕して実感した別荘のメリットとデメリットについてお話しましょう。
【デメリット(1)購入にも修繕にもお金がかかる】
以前、格安別荘購入を検討する友人に誘われて山梨に物件見学に行って驚きました。
「格安別荘なんて、どうせボロボロなんでしょ」と思っていたら…
こんな感じの山荘が、150万円。
こっちは200万円。
どちらも僕が祖父から引き継いだ山小屋よりもよっぽどおしゃれで気が利いています。
ただし、一見おいしそうな話にはウラがあるもので。
格安の別荘は、たいてい屋根や外壁が傷んでいて修繕の必要があるのです。
もし足場を組んで修繕工事をおこなうとなると追加で100万円ほどかかってしまうのです。
これはうちの山小屋の屋根と外壁を直したときの写真。
このほかにも水道の配管や給湯器などを交換する必要がある場合も多いですし、浄化水槽を設置するとなれば100万ほどがふっとぶ計算。
結果的に別荘を購入した金額と同じくらいの修繕費用がかかるのはざらというわけ。
せっかく格安別荘を購入しても、結局は初期費用だけで300~400万円は必要な計算になります。
僕の場合は引き継いだ別荘ですが、この10年で修繕などに250万円を費やしてきたことは「日刊Sumai」の連載でも書いたとおり。
1年あたりに直すと25万円かかる計算です。
築古の別荘を所有するなら年間20~30万円くらいの修繕費を見込んでおくべきかもしれません。
これに加えて光熱費も年間15~20万円くらいは軽くかかります。
別荘はとにかく金食い虫ですから「築古別荘なんて負動産」と考える人がいるのも否定できません。
【デメリット(2)維持管理に手間もかかる】
お金だけではありません。
別荘の維持管理にはとにかく手間がかかります。
別荘はふだん人が暮らしていない家なので、たまに訪れると空気は淀み湿気がたまっています。
到着後の最初の仕事は窓を開けて換気です。
不在の期間が長いとあちこちにカビも生えていたりして掃除も大変。
我が家の場合、梅雨ともなると別荘滞在は必ず床の雑巾がけから始まるものでした。
以前もご紹介したカライエ(とルームドライヤー)を設置したおかげで、この悩みからは解放されましたが、ほかにも面倒なことはたくさんあります。
いつのまにか軒先にハチが巣を作ってしまっていることもあれば、キッチンの食材がネズミに食い荒らされていたなんてことも。
自然に囲まれていると、台風や冬の寒さの影響も都会より深刻です。
昨年の台風では床下浸水しましたし、2018年の寒波では水道管が凍結して破裂しました。
これらはすべて僕が別荘で実際に体験した話です。
別荘を持つことは都会の家よりも手がかかる家を維持することだと覚悟すべきです。
ちなみに、世のお金持ちのみなさんはこれらの手間をすべてアウトソーシングし、お金で解決しています。
日頃の換気や掃除はもちろん、草むしりや雪かき、ハチの巣の駆除なども管理会社に頼むことができますし、高級別荘地では到着時間に合わせてケータリングが用意されているなんてサービスまであるとか。
マジか……。
ケータリングはいらないけど、不在時のメンテナンスを頼めるのはありがたいよな、としみじみ思います。
【メリット(1)自分の好きなときに滞在できる】
さあ、ここから別荘のメリットです。
お金と手間を考えてそろばんをはじくと別荘を持つことは「ほぼ損」と思いがちですが、それでも僕は別荘を持つことはとても楽しいことだと思います。
いちばんのメリットが「カレンダーに縛られないこと」でしょう。
ゴールデンウィーク、お盆、秋の行楽シーズンなど、宿を予約しにくい観光のハイシーズンでも、自分だけの別荘なら何の心配もなく滞在することができます。
観光シーズンでなくても「明日は天気が良さそうだから今から出かけよう」と金曜日の晩に突然思いついて出発することだってできます。
僕のように本業も副業も仕事が不定期だと、急に時間が空いたりすることもあるので、いつでも使える別荘はとても便利です。
逆もまた然りで、気分が乗らなかったり体調が優れなかったりしたら、滞在をとりやめることだってできます。
予約などの準備が必要なホテルではこうはいきません。
自由な滞在は別荘ならではのメリットですね。
このブログでご紹介している山小屋は、うちのマンションの入居者さんならだれでも自由に無料で宿泊できますが、旅行よりもカジュアルな気分で気軽に泊まってもらえればいいなという思いで運営しています。
【メリット(2)自分たちだけの空間(だからコロナのリスクも低い)】
ホテルや宿では何か困ったことがあればホテルマンや仲居さんが対応してくれます。
隅々まで行き届いたサービスは便利で快適ではありますが、裏を返すと同じ建物の中に常に誰かが控えていることを意味します。
実を言うと、僕はこれをプレッシャーに感じることがたまにあって。
誰の気配も感じずひとり(もしくは家族だけ)になりたいときにはホテルよりも別荘がいいと思っています。
別荘なら自分たちだけで気がねなく過ごすことができますから、現在なにかと心配なコロナの感染リスクもかなり抑えられます。
我が家の場合、母親が抗がん剤治療をしていて免疫力がかなり下がっているので、今は旅行どころか近所に買い物に行くのも控えているくらいなのですが、クルマで別荘に行くなら感染の可能性は低く、安心して気分転換することができます。
こんな時代だからこその別荘のメリットと言えますね。
うちの入居者さんも、旅行でホテルや宿に泊まるのが不安でも、自分だけで使える山小屋なら不安は少なく滞在できるだろうと思います。
【メリット(3)自分好みに空間をカスタマイズできる】
自分の家ですから好き勝手にカスタマイズして楽しめるのも別荘のメリットです。
ホテルのインテリアは自分ではいじれませんが、別荘のインテリアは好き勝手に改造することができます。
たとえばDIYで貼ったイギリス製の壁紙。
個性的な柄ですが、別荘という非日常空間ならばと思いきって選んでみました。
料理好きならキッチンを自分用にカスタマイズして、手間暇かけて料理をして過ごすのも楽しいです。
貸別荘でも料理はできますが、人の家のキッチンで料理をする違和感はあります。
自分が使い慣れた調理道具をならべて手慣れた環境で作業できるのは別荘だからこそでしょう。
楽器の演奏や音楽鑑賞など、騒音問題を招きがちな趣味も、人家がまばらな別荘地では楽しみやすくなります。
特に趣味がなくても、ただのんびり過ごすことに特化した部屋づくりをすれば、自宅とはちがった環境でリフレッシュすることもできるでしょう。
ステイホームが長くなりがちなこのご時世、セカンドハウスで過ごす時間の価値も高まると感じます。
【最大のポイントは「その土地に愛着を持てるか」】
最後にメリットともデメリットとも取れる大事なポイントについて触れておきましょう。
それは「別荘は土地と切り離せない」ということです。
別荘はいつも同じ場所にあるので、観光のバラエティという意味ではホテルには到底かないません。
いろんな場所に旅行したい人や、いろんなスタイルの宿に泊まりたい人にとっては、別荘は少々退屈に見えることでしょう。
でも、どんな土地も「一見さん」ではわからない魅力があるもの。
街歩きしていていつもとちがう路地で思わぬお店を見つけたり、ご近所の人に地元の隠れスポットを教えてもらったりしているうちに、だんだんと土地に対しても愛着が湧いてきたりします。
「半分だけ地元民」的な体験は観光では得難い楽しみです。
もしあなたに何度も通うほど好きな場所があるなら、別荘を考えてみる良い機会かもしれません。
別荘購入を検討するなら、お金の損得勘定だけではなく「その土地に住んでみたいと思えるか」を真剣に考えてみることをすすめます。