(222)業務用ガスコンロを家庭で使うための3つのマイルール
前回、業務用ガスコンロの強力な火力からキッチンの壁を守るべく防熱板を設置しました。
設備面で安全のためにできることはほぼすべてやり終えましたが、まだ十分とは言えません。
以前もご紹介したNITE(製品評価技術基盤機構)の記事でも書かれていましたが、大抵の事故は「ヒューマンエラー」で起こるものなのです。
【ガスこんろの事故に注意~火災事故に潜むヒューマンエラー~】
どんなに注意深い人間を自任したところで、人はミスを犯す生き物でもあります。今回は、その前提に立って業務用ガスコンロを家庭で少しでも安全に使用するために僕が守っている3つのマイルールをご紹介したいと思います。
■マイルール①壁側のバーナーは控えめに使う
前回、防熱板を設置したのはコンロの左横の壁でしたが、これで安心かというと疑問が残ります。
家庭用の最大火力が「3610Kcal」と言われるのに対し、このリンナイ(Rinnai)の業務用ガスコンロ「RSB-206N」は「6750Kcal」という高火力。防熱板で十分に防げるかどうかは定かではないのです。
そこで僕が心がけているマイルール①が「壁に近い左側のバーナーはなるべく使用せず、使うにしても弱火~中火ていどにする」というもの。
そもそもガスコンロは左右のバーナー両方を強火で使用するという場面はあまり多くはありません。業務用ならではの強火を活かした調理をするときは必ず右側のバーナーを使用するようにしています。
以前も書いたとおり、大抵の家庭用ガスコンロは左右どちらかが壁側になることを想定してバーナーが低火力になるよう設計されています。
写真は以前ご紹介したパロマのガスコンロ「caferi(カフェリ)」の外箱の表記ですが、これと同じ発想です。業務用ガスコンロは家庭用のような「親切で安全な設計」はされていないので、自分の側で配慮しながら使うようにするわけ。
ついでに言うと、これは我が家の特殊事情なのですが、この山小屋のキッチンは通常の住宅とくらべると使用頻度が少ないので、ガスコンロのバーナーが壁に与える影響も比較的少ないのではないかと期待しています。
■マイルール②揚げ物はやらない
前々回も書きましたが、山小屋に採用した「RSB-206N」には立ち消え防止センサーが搭載されています。
しかし、家庭用によく見られる「なべ底が熱くなり過ぎたときに自動的に火を弱めるセンサー」や「点火から長時間経った場合に火が自動的に消える消し忘れセンサー」などはありません。
こちらも「caferi」の外箱の表記。
この種の安全センサーが業務用コンロに搭載されていない以上、調理油を使用した際に過度に温度が上がったり、鍋を火にかけたまま消し忘れてしまったりして火災が起こる可能性はありえます。
一番怖いのが、いわゆる「天ぷら火災」でしょう。
天ぷら油は加熱し続けると約360℃で発火すると言われますから、もし安全センサーのないコンロで鍋を火にかけたことを忘れてしまえば、いつ火事が起こってもおかしくありません。思えば、うちの祖母が火事を起こしたのも天ぷらを揚げていたときでした。
そこで、マイルール②は身も蓋もない話ですが「揚げ物はやらない」ということです。
料理人でもないアマチュアの僕が高火力の業務用ガスコンロを使用する以上、ハイリスクな揚げ物はやらないのが無難だと考えます。人によっては料理の幅が狭まってイヤかもしれませんが、安全のために僕はこのルールを必ず守っています。
■マイルール③消し忘れを防止するために必ずタイマーを使う
消し忘れによる焦げ付きや空焚きも怖いです。
高火力で調理をおこなうときはガスコンロに集中して離れないのは当然だとしても、注意したいのが煮込み料理のように長時間調理する場合。
3時間、4時間と煮込む料理の場合、さすがにガスコンロにつきっきりになるわけにはいきません。しかし、コンロから離れているあいだに仕事を始めたり本を読んだりしようものなら、どんなに注意しているつもりでも火をつけていることを忘れてしまうことは十分にありえます。
マイルール③は、煮込み料理をするときは定期的にキッチンタイマーを設定し、ガスコンロの存在を思い出すように心がけるということ。
以前は、こういう感じのノーマルなタイマーを使用していたのですが、最近はより安全性を高めるためにこちらに切り替えました。
ドリテック(dretec)のデジタルタイマー「スリムキューブ」です。
実は以前、妹が忘れっぽい母親のために買ったもの。
曰く「お母さんはタイマーかけても忘れてどっか行っちゃうから、首からかけられるタイマーがいいんじゃないの」とのチョイスでした。これはナイスアイデアということで僕も採用することにしました。
煮込み料理中は必ずこれを首からかけ、何分かおきに鳴らすようにしています。何時間も煮る料理なら20~30分ほどに設定して定期的に鳴らします。身につけているので、最悪、すっかり忘れて外出してしまっても気づいて戻って来れます。
正直、首からこれをかけていると、ちょっとした家事をしたりトイレに行ったりするときに邪魔になるのですが、個人的にはそれが大事。「邪魔だなと思ったとき」が「ガスコンロの存在を思い出すとき」なので、消し忘れ防止には向いています。業務用キッチンを自宅で使うというワガママを通す以上、これくらいの不自由は仕方ないと思っています。
ちなみに、これは世田谷の狭い自宅のキッチンでも必ず守っているルールです。
仕事をする机(兼食卓)からもコンロは見えますが、それでもあるていど距離があると忘れてしまうことはあります。万一に備えるという意味では、とても大事なマイルールです。
以上が、業務用ガスコンロを使用するにあたって僕が実践しているマイルールです。
長々と書いてきてなんですが、これだけやれば十分という話ではありません。家庭用キッチンで使用してはいけない業務用ガスコンロを使用するのですから、本来であれば壁の造作や作業スペースの取り方から厨房と同じにしなくてはいけないですし、レンジフードだって業務用を使うべきでしょう。
でも、そこまではできない中でなるべくリスクを減らすために工夫をし、注意を怠らないようにしようという試みだとご理解ください。
「アサクラの言うとおりにやったけど、火事になったぞ。どうしてくれるんだ!」なんてクレームはくれぐれも言わないように。試したい方は自己責任でお願いします。