(19)格安別荘の出現で「別荘」の概念は変わりつつある

お金のこと

昨年、SUUMOジャーナルから取材を受け、別荘の維持費などについてお話ししました。

【 SUUMOジャーナル 】
「150万円で買える!? 格安別荘の活用法と注意点」

取材していただいた蜂谷智子さんとお話しして実感したのは、「別荘の概念は変わりつつある」ということでした。

別荘地の森

僕の世代にとって、「別荘」という言葉には過剰に優雅な響きがあります。

本宅以外に家を所有することが贅沢であることは否定しません。

でも、「別荘」という言葉から一足飛びに「白樺の森の中にたたずむ瀟洒な邸宅」や「暖炉を中心にした居心地よいリビング」を想像されるのも困ります。

事実、うちの山の家の母屋は、今からおよそ半世紀ほど前にふつうの大工さんによって建てられた「フツーの家」です。

いや、片付ける前はフツー以下の状態でした。 証拠を見せます。

かつての母屋の姿

どうです?がっかりしたでしょ?

さすがに現在は片付きましたが、これを「別荘」と称するのは僕の実感にまったくそぐわないので心苦しいのです。

かといって「山小屋」と呼んでも、これまた「木材をふんだんに使用したウッディな内装」を想像されてしまいます。

このブログでごらんいただいている離れならともかく、母屋はとても「山小屋」とは呼べません。

苦肉の策として「民家」という言葉を使ったりするのですが、この言葉もうっかりすると「古民家」的な趣のある日本家屋を想像されてしまう恐れがあります。

「民家?ああ、古い立派な木の梁があって、みんなで囲炉裏を囲んだりするんでしょ」

ちがうんです、ただの汚いフツーの家なんですってば。

こんな具合に「別荘」をめぐるパブリックイメージと暗闘し続けてきた僕ですが、ふとしたことで別荘というものの概念が変わりつつあることを知りました。

山梨で内見した別荘

そのきっかけが、友人に誘われて山梨に別荘を見に行ったこと。

文面だけ見ると富裕層の自慢話にしか見えないでしょうが、実態はそんな優雅なものでは全然ありません。

実は、今、「別荘」のイメージを崩壊させる「価格破壊」が起こっています。

日刊Sumaiの連載でも書きましたが、今や築古の別荘は安いものなら150万~200万円くらいで売り買いされています。

正直、うちの母屋よりも全然きれいで驚きました。

ニュースなどで聞いたところでは、なんと0円別荘まで市場に出回っているとか。

そもそも、僕の友人は別荘としてではなく、移住の選択肢として検討していました。

「賃貸を借りるくらいなら格安別荘を買ったほうがトクなんじゃないの?」と考えたそうです。

もはや「別荘はお金持ちのステータスシンボル」ではなく、その気になれば手が届く存在になりつつあるのです。

「都心でローン組んでヒーヒー言うくらいなら、即金で格安別荘買うほうがいいかも」と考える人がいても不思議ではありません。

床が抜けそうに

もちろん、おいしそうな話には裏があります。

高度成長期からバブルにかけてお金持ちのステータスとして建てられた別荘(の一部)は、景気も世代も変わった今、ロクに使いもしないけど維持管理費だけはかかる金食い虫=負動産となっています。

15年間、母屋を管理してきた実感で言うと、別荘の維持にかかる費用はバカになりません。

特に、うちのような築古の木造物件は、毎年のようにどこかが壊れていきます。

うちの山の家(母屋)も、水道管は破裂するわ床は抜けそうになるわ給湯器は故障するわ屋根裏にハクビシンは入りこむわで、そのたびに出費を迫られゲンナリしています。

日刊Sumaiに書いたとおり、過去10年のあいだに修繕に250万円を費やしました。

ふだん暮らす家ならともかく、たまに羽を伸ばしに行く場所がこれでは、愛着がなければとてもじゃないが続きません。

維持費をきちんと計算したら、別荘を手放す選択をする人が増えているのもうなずける話です。

金銭的なハードルが下がった今、別荘を買おうとする人に求められるのは、維持管理も含めて楽しむメンタリティやアイデアなのでしょう。

……と書いてみて、僕自身、「こんな面倒なことしなきゃならないなら、なんとか楽しめないものか」と考えて山小屋のリノベーションを思いついたような気がします。

山小屋の外観

たった六畳の離れをリノベーションした感想で言えば、別荘は大きい必要はありません。

この山小屋には洗濯機も収納もありませんが、たまに遊びに行って一泊か二泊するくらいならなんとかなります。

ネットで探せば、けっこう広めの別荘が驚くほど安く売りに出されていますが、「広さ=維持と修繕にかかる費用の大きさ」と理解するべきです。

小さい家なら、冷暖房の効きも良く、光熱費や固定資産税、火災保険なども安上がり。

隅々まで目が届くので掃除もずっとラク。

最近、別荘を探している人から相談を受けることがありますが、自分の身の丈に照らし合わせて、ちょっと小ぶりなくらいの別荘を見つけることをおすすめしています。

タイニーハウス、スモールハウスってやつですね。

「別荘を所有する」なんて大げさな態度で臨むのではなく、「小屋をかわいがる」くらいの気持ちで接すれば、愛着もわいて楽しめるのではないでしょうか。

アサクラ

大家業。世田谷のマンションと東京西部の山奥にある小屋を管理&経営。 『日刊Sumai』(扶桑社)で「なんでも大家日記@世田谷」を連載中。 https://s...

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