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(136)コロナ禍と山小屋~緊急事態宣言下の別荘滞在に潜むリスクを考える

そのほか

4月7日、ついに緊急事態宣言が発出されました。

今回は照明選びの第3回をお届けする予定だったのですが、コロナウイルスの流行のなか自分なりにいろいろ考えることがあり、番外編的に思うところをまとめることにいたしました。

【きっかけは長野県佐久市の柳田市長のツイート】

まず告白しておくと、東京に不穏な空気が漂い始めた頃には「こんなときこそ別荘を活用しよう」と思ったりもしていました。

でも、報道を見ていて考えさせられるツイートに出会いました。

長野県佐久市の柳田市長による3月30日のつぶやきです。

以下に引用しましょう。

「【首都圏にお住まいの皆さまへ】
今週末の首都圏から長野県への人の移動が増えています。
出来れば、首都圏の皆さんも自宅で過ごしてもらいたいと思います。
蔓延する首都圏から比較的穏やかな長野県で過ごしたいとお考えかもしれませんが、自粛要請の趣旨をもう一度考えて下さい。」

佐久市の隣には「東京24区」などと呼ばれる押しも押されぬ別荘地・軽井沢町があるのはごぞんじのとおり。

先ほどのツイートの続きには「↓県内某スーパー」と書き添えられており、地元スーパーの前に東京からの「避難民」らしき人々が行列する様子を写した写真が掲げられています。

「買い占め」によって地元住民に負担をかける別荘所有者がいるのは本当に残念なことです。

【緊急事態宣言下に安全な別荘滞在は可能なのか】

別荘滞在が「不要不急」の行動に属することは明らかですから、緊急事態宣言が発出された現在、「良識に反する行為」として非難を受ける可能性は高いと思われます。

ひとまず、その倫理的な面を置いておくとしましょう。

実を言うと「買い占めなどで他人に迷惑をかけたり、感染リスクを冒したりしなければ、別荘に滞在したっていいのでは?」と思う気持ちが僕にはありました。

そこで思考実験として「緊急事態宣言下に別荘で安全に過ごす方法」を考えてみたのです。

まず、移動についてですが、自動車は必須でしょう。

緊急事態宣言後も電車やバスは変わらず動いているとはいえ、都心から郊外や地方に公共交通機関を使って別荘に移動することは確実にリスクを伴う行為です。

自家用車を利用するならドアトゥドアで別荘に到着できますし、問題はないように感じます。

もちろん、食料や洗剤などの生活用品も持参します。

先ほどの市長の言葉を踏まえれば、滞在中は極力地元に負荷をかけないようにして過ごさねばなりません。

カフェや温泉に行くなんてのは論外、外出はなるべく控え、家で静かに過ごします。

まわりに人がいないことを十分に確認した上で、時々、散歩やジョギングなどを楽しんで静かに過ごします。

このやり方なら、コロナに感染するリスクも侵さず、他人に迷惑をかけることもなく、別荘に滞在することができるのではないかと思われます。

個人的にはこれでも十分楽しく過ごせそうですし……。

【どんなに配慮してもリスクがあることを覚悟すべし】

しかし。

とある報道で先の柳田市長が「長野の病床の少なさでは都会から別荘にやってきた人々の分の医療をまかなうことはできない」という趣旨の発言をしていたのを聞いて、やはり別荘に滞在するリスクはあるなと感じました。

たとえば、もし別荘に向かう前にウイルスに感染していて、別荘滞在中に体調が悪化してしまったとしたら、どうでしょう?

その場合、別荘の付近の病院にお世話にならざるをえなくなり、やはり地元に大きな負担をかけ、感染拡大の片棒を担ぐことになってしまうのです。

「いやいや、コロナならすぐに重症にはならないでしょ。喉が痛くなる気配があったりしたら車で自宅まで戻ればいいじゃん。道路はガラガラ、数時間の運転くらいなら楽勝だし」

そうでしょうか?

問題はコロナだけではありません。

別荘の周辺で散歩中に転んで骨折してしまい、病院に運ばれたとしたらどうでしょう?

移動中の交通事故でケガを負ったとしたら?

今回のコロナウイルスは、感染しても自覚症状がない場合があるそうです。

東京という人口密集地に暮らすあなたは知らず知らずのうちにすでにコロナに感染してしまっており、まったく発症していないだけかもしれません。

無症状の状態で治療を受ければ、別荘地の病院でコロナを蔓延させる原因になってしまうでしょう。

逆もまた然りで、ケガの手当てを受けた病院で自分がコロナに感染する可能性も考えられます。

そもそも論として、「医療崩壊の危機」が叫ばれるなか、不要不急の用事でケガを負い、医療現場に負荷をかけてもいいものでしょうか

などなど考えていくと、まだまだリスクはあると言わざるをえません。

緊急事態宣言下で別荘に向かうなら、そういうリスクを承知のうえで覚悟を決めるべきだと思います。

僕は……仕事の必要がないかぎりは行かないかな。

こうやってリスクを数え上げてみた今、別荘にこっそり滞在してもなんだか後ろめたさと不安でソワソワしてしまう気がします。

それじゃあ、楽しくないでしょう?

現段階で緊急事態宣言は5/6までと言われており、気候的に一年でベストとも言えるこの時期に別荘をあきらめるのは本当に悲しいのですが、今回ばかりは仕方ありません。

【別荘についてあらためて考える機会かも?】

さて、冒頭の市長のツイートはこういうことを考えるきっかけをくれたという意味では僕にとって有意義でしたが、疑問に思うこともあります。

別荘所有者の態度を問うということは、同時に、別荘地側の態度も問われることになるのではないでしょうか。

軽井沢町はもちろん、隣接する佐久市だって、ふだんは別荘所有者からの恩恵を受けているはずです。

彼らだって固定資産税等を納めて家屋を所有しているのですから、買い物をする権利はもちろん、病院を受診する権利もあるんだと主張するかもしれません。

緊急事態以前ならばなおさらですし、宣言後も「外出自粛」が要請でしかない以上、別荘に向かう人を法律的に断罪することはできません。

思えば、別荘所有者は、純然たる観光客でもなければ、地元に根差した住民でもないという、なんとも半端な立ち位置にあります。

行政は、そういう人々をどう区別し処遇するか――本当に一筋縄ではいかない問題があると感じました。

これからしばらく、厳しい事態が続きます。

僕自身も「別荘を所有すること」や「別荘に暮らすこと」の意味を自分なりに考え直すことになりそうです。

アサクラ

大家業。世田谷のマンションと東京西部の山奥にある小屋を管理&経営。 『日刊Sumai』(扶桑社)で「なんでも大家日記@世田谷」を連載中。 https://s...

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