(189)小口平タイルはどうやってカットするかが難しい
大工さんによる第一期工事が完了したのが前回のお話。
選んだタイルと新設した窓のサイズがドンピシャだったのは本当にラッキーでした。
このタイル、一般的に「小口平」と呼ばれている、きわめてオーソドックスなサイズのタイルです。
昭和の古ビルの外装によく使われており、僕が管理する世田谷のマンションの外壁にも同じサイズのタイルが張られています。
なかなか味があって気に入っています。
内見に来てくれる方々にも評判がいいのです。
当時は安くて耐久性の高い外装材がなかったのでしょうか、外壁をタイルで仕上げるのはわりとよくあることだったようです。
現在では代わりとなる安価な外装材が開発され、タイルはすっかり高級材となってしまいました。
築年数を重ねると劣化も起こります。
タイル本体は耐久力がありますから割れないかぎりは問題ないのですが、タイルが接着された壁からはがれて「浮いて」くることがあるのです。
外壁修繕時には、こうした「浮き」のあるタイルをはがして張り替える必要が出てきます。
築50年ともなると破損したタイルと同じものを入手することはほぼ不可能ですから、現在手に入る「小口平」のなかで「比較的近い」色のタイルを探してくるわけですね。
うちのマンションの外壁修繕では同系色のグリーンのタイルで代替しました。
前置きが長くなりましたが、今回のキッチンに張りつけるタイルは、この修繕に使用したグリーンのタイルです。
外壁修繕工事の際、業者が注文しすぎたらしく、数ケース余ったままになっていました。
当時は「いくらなんでも注文しすぎだろう」と不満も感じたのですが、タイルをDIYで張るようになってから、この余りを活用しようと考えるようになりました。
難しいのは、このタイルが「縦60ミリ×横108ミリ×厚さ10ミリ」という大きめ&厚めのサイズであるということ。
大きいタイルは施工場所にうまく収まらないことが多くカットする必要がありますが、厚めのタイルはDIYでカットするのはなかなか難しいのです。
今回は、マンションの一室の洗面に小口平タイルを張ったときの体験談をご紹介しましょう。
工事前はこんな感じ。
難関はこの配管との絡みです。
冷温の給水管2本を避けてタイルを張らねばならず、小口平のサイズを考えるとタイルカットの作業は避けて通れません。
子細に検討した結果、このようになりました。
下から数えて5列目、左右端から3列目にあたるタイルの下部をカットして収めようというプランです。
これなら2枚をカットするだけで済みます。
実寸大で書くとこんな感じ。
タイルを青いラインのところでカットすればいいのですが、これが簡単ではありません。
ふつう、モザイクタイルのカットには喰い切りと呼ばれるタイル専用のペンチを使います。
喰い切りの詳しい使い方はこちらをどうぞ。
しかし、これでカットできるのは厚みが6ミリていどのタイルまで。
小口平のように厚みが10ミリもあると、とても喰い切りではカットできません。
では、どうするかというと、このタイルカッターを使います。
Amazonで購入しました。
「大五郎 タイルカッター TC-5」です。
こんなものでタイルが切れるのかと思いつつ、ポチリ。
定規やハンマーも用意しました。
まず、タイルカッターの先端の尖った部分でカットする部分に溝を掘ります。
この作業を「けがき」と呼ぶそうです。
漢字で書くと「罫がき」。
罫線の「罫」ですね。
この線を引いた後、本来はタイルカッターの反対のU字型の部分でタイルをはさんで割ります。
これは商品の説明書き。
今回は厚みの割にサイズが小さめのタイルだったせいか、U字部分ではタイルがビクともしなかったので、裏側をハンマーで叩いて割ります。
いきなり強く叩くのではなく、少しずつ叩いて衝撃を与えていくのですが……さっぱり割れません。
ラチがあかないので、玄関のかまちにタオルでくるんだタイルを置き、やや強めに打ちつけてみました。
力を加減しながら何度か叩くと、バキン!と割れました。
線とはちょっとずれたけど、まあまあの出来。
さっきの実寸大の図面に置いてみると、
だいたい合ってます。
カットというより割る感じですから、これくらいの精度で満足せねばならないでしょう。
この調子でもう1枚と思ったのですが、これがなかなかうまくいきません。
続く2枚は立て続けに失敗。
3枚目でようやく成功しました。
4枚中、2枚が成功。打率5割か。
大量にカットはムリですね。
しかも、割れたラインは直線にならず、どうしても歪んだり傾いたりしてしまいます。
洗面の下のような目立たないところならともかく、目に入る場所でこれは困ります。
キッチンの壁に張るときの課題になりそうです。
さて、続いては準備できたタイルを張りつけます。
シート状になっているモザイクタイルとはちがい、1枚ずつ張りつけねばなりませんから、目地幅にも気をつける必要があり、とにかく時間がかかります。
なるべく目地をそろえて張りたいのですが、この小口平タイルは個体差が大きく、どうしても目地幅は均一になりません。
ときどき離れたところから全体のバランスを確認しつつ、すでに張ったタイルをずらしたりして位置調整します。
懸案だった配管部分ですが、
なんとか無事に張れました。
あとはひたすらくりかえし。
がんばって、
がんばって、
なんとか完成!
まわりが暗いと黒のタイルのように見えますが、光が当たるとオリーブ色のきれいな色味が感じられます。
翌日、目地を入れて完成です。
白目地でパキッと引き締まった感じ。
後日、業者さんによる洗面設置を経て、こんなふうに仕上がりました。
洗面ボウルも水栓も安価でオーソドックスなものですが、タイルの存在感のおかげで「レトロかっこいい」雰囲気に仕上がりました。
小口平の魅力、伝わりましたか。
こちらのタイル、ネットで1枚から購入可能です。
価格:58円 |
オリーブ色以外にもカラーバリエーションがあり、僕もサンプルを取り寄せたことがあります。
青や白を選べばモダンな空間もできそうです。
価格:58円 |
ちなみに、うちのマンションでは、表面がザラザラした「砂入り」のグリーンの小口平も余っておりました。
せっかくなので、山小屋のキッチンでは2種類をミックスして張ることにします。
次回は、このタイルを中心にどんなふうにDIYをおこなうか、キッチンの全体的なプランを考えます。