(220)業務用ガスコンロ選びのポイントは「火力・バーナー・センサー」

トラブルや失敗

引き続き業務用ガスコンロの話です。

家庭で業務用ガスコンロを使用することのリスクについては前々回に書きました。

簡単におさらいをすると、①安全装置(Siセンサー)が搭載されていないので、鍋が高温になったり立ち消えしたりしたときに事故を防止することができず、②火力が強いので伝導加熱によって壁内の木部が炭化して火災が起きるかもしれないというリスクがあります。

この点を考慮して、賃貸に採用していた業務用ガスコンロはすべて家庭用に交換しました。

しかし、僕自身はというとあいかわらず自室でも業務用ガスコンロを使い続け、山小屋の母屋のキッチンにも業務用ガスコンロを選びました。

山小屋のガスコンロ「RSB-206N」

ガンガンに熱した鉄のフライパン(+オーブン)で焼いた肉の味を覚えてしまった僕は、もう家庭用ガスコンロには戻れません。

鉄のフライパンで肉を焼く

いや、ワガママなのはわかっています。今回は、そのワガママを通すために少しでも安全に使用できることを念頭に置いて業務用ガスコンロを選んでみたというお話をいたします。


■一口に「業務用ガスコンロ」といっても火力はさまざま

前提として大事なのが「ガスコンロの火力がどれくらいか」知ることです。

着火したガスコンロ

「業務用ガスコンロは高火力」とひとことで言ってもその強さには差があります。メーカーが公表している数値でくらべてみましょう。

前回もご紹介した「Vamo」(リンナイ(Rinnai)製)の公式ページによると、一般的な家庭用ガスコンロの最大火力は「3610Kcal」だそうです。

賃貸に設置したVamo

これに対し「家庭用なのに高火力」が売りの「Vamo」は「4000Kcal」のバーナーを搭載しています。

僕が世田谷のキッチンで使用している「ガスクッカー」の製品表示を見ると、

ガスクッカーの製品表示

4800Kcal」でした。家庭用の「3610Kcal」とくらべると1200Kcal近くパワーが上です。「Vamo」の商品説明によると400Kcalの差が火力にかなりのちがいを生み出すそうですから、1200Kcalの差となるとかなり大きいのかもしれません。

ちなみに「ガスクッカー」の高火力タイプとなると「6400Kcal」でさらに高火力だったと記憶しています。使用したことはないのでわかりませんが、かなりの差です。

しかし、これらのガスコンロは家庭用・業務用を問わず、すべて一重のバーナーです。

実は、業務用で本当に強力なものはバーナーが二重になっているもの。以前、toolboxのショールームで撮影した3口のガスクッカーの左側のバーナーがこれでした。

toolboxのショールームの3口ガスクッカー
※toolboxの旧ショールームにて許可を得て撮影しました

左のバーナー用のレバーが2つあるのがおわかりでしょうか。二重のバーナーの内と外でそれぞれ火力が調整できるようになっています。正確な火力のデータは手元にないのですが、二重バーナーの火力は1万から2万カロリーと言われますから、これまで紹介したものとくらべると2倍~3倍以上になります。

こうしてみると二重の強力なバーナーと「4000~6000Kcal」の一重バーナーを「業務用ガスコンロ」として一括りで考えるのは安易な気がします。

伝導加熱による火災発生のリスクを考えると「業務用としては大人しめ=家庭用よりもややハイパワー」くらいのガスコンロを選ぶべきでしょう。

ガスクッカー

本音を言うと世田谷の自宅に置いた「ガスクッカー」くらいのパワー(4800Kcal)で十分なのですが、残念ながらすでに製造中止となってしまっているので他を当たります。

目をつけたのがこちら(画像をクリックするとYahoo!ショッピング内のページに飛びます)。

リンナイ(Rinnai)の「RSB-206N」です。気になる火力は、業務用としてはわりと大人しめの「6750Kcal」。とはいえ「ガスクッカー」の高火力タイプと同じくらいで、僕からすれば申し分ない、いや、ちょっと心配になるくらいの高火力です。


■内炎式バーナーって何?

このコンロのポイントはバーナーが「内炎式」であること。

通常のガスコンロは丸いバーナーの外側に向かって炎が出る「外炎式」

外炎式バーナーイメージ図

おなじみのイメージです。

一方、内炎式のバーナーはドーナツ状のバーナーの内側に炎が出るのです。

内炎式バーナーイメージ図

内炎式は家庭用にはほぼ採用されていないので、ごぞんじない方も多いのではないでしょうか?

内炎式の特徴は、火がトルネードのように中心に向かって出ること。外炎式の場合、炎が外に広がるのでフライパンの真ん中だけ温度が上がりきらないという弱点がありますが、内炎式なら中心をしっかりと熱することができます

炎が中心に向かうということは、外に向かって広がりづらいということでもあります。メーカーの説明文を借りれば「強火にしても鍋の外に炎がはみだしにくい」のです。よく強火で鍋を熱していると鍋の持ち手が熱くなってしまうことがありますが、あれは外炎式に顕著な現象なのですね。

つまり、内炎式のガスコンロを選べば炎が周囲の壁にかかる負荷もいくぶんか減らせることになるはずです。つまり、再三ご説明してきた伝導加熱によるリスクもあるていど抑えられることになります。ここが一番の決め手でした。


■立ち消え安全装置搭載で奥行もコンパクト

単機能ながらセンサーが搭載されている点も安心です。

リンナイの「RSB-206N」外箱の表記

前々回「業務用キッチンにはセンサーがないから危険」と書きましたが、最近は厨房内での安全を考慮したセンサー付き業務用コンロも増えてきているようです。

もちろん、家庭用に義務付けられた「Siセンサー」のような至れり尽くせりな機能(悪く言うと、余計なお節介をしてくる機能)ではなく限定的な機能のセンサーです。 「RSB-206N」に搭載されている「立ち消え安全装置」は万一吹きこぼれなどで火が消えたときは自動でガスを止めてくれます。

以前、ご紹介したNITEのホームページを見ても、立ち消えによるガス中毒などは家庭内でも発生しているようですから、この機能が搭載されているだけでも安心感は増します。僕のようなアマチュアが業務用ガスコンロを使用するならば、やはりセンサー搭載のものがいいと判断しました。

奥行がコンパクトなのも大事なポイントです。前回ご紹介した「Vamo」は奥行は448ミリもあり設置に苦労しました。

それに対して「RSB-206N」の奥行は350ミリなのでこれは世田谷の自宅で僕が使用している「ガスクッカー」と同じ。まちがいなく業務用キッチンのコンロ台(タニコー製)に収まります。奥行が狭いということは、そのぶん壁からも距離を保てるということ。これも、伝導加熱を考えると大事なポイントです。

以上のような理由から山小屋のキッチンには「RSB-206N」を選ぶことになりました。

リンナイの「RSB-206N」外箱

外箱にはこれでもかとばかりデカデカと「業務用」の文字。

外箱の「業務用」の文字

家庭用には使用しないでください」の文言も。

はい、すいません。自己責任で気をつけます。

開封した「RSB-206N」

開封した時点で業務用ならではの武骨な雰囲気が漂います。

「RSB-206N」の五徳

鈍器になりそうなほど重い五徳。もはや鉄板です。鍋を置いても安定感がありそう。

設置する場所はこちら。

山小屋のキッチンのコンロ台

設置後の様子については冒頭にもご紹介したとおり。

山小屋のキッチンに設置した「RSB-206N」

こうやって眺めるとやっぱりカッコいいです。

次回は、この業務用ガスコンロを少しでも安全に使用するために防熱板を設置します。

アサクラ

大家業。世田谷のマンションと東京西部の山奥にある小屋を管理&経営しています。最近は熱海に購入したマンションの一室をDIYで修繕中。ESSE online(エ...

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