(239)敷地内の電柱に付いていた街灯を移転してもらった話
今回お話するのは電柱に設置された街灯にまつわる話です。
ごらんのとおり、うちの山小屋のすぐわきには電柱が立っています。
よく見るとわかりますが、この電柱には街灯が付いています。
この山小屋のリノベーションが完了した後、試しに自分一人で宿泊してみたところ夜になるとこの街灯の光が室内に射し込んでくることに気づきました。
二階の窓にはカーテンがありません。部屋の灯りを消すと街灯の光がけっこう眩しく感じてしまうのです。
これはリノベーション工事前に撮った写真ですが、青白い街灯の光がバッチリ写っているのがわかります。泊まってみるまで気づかなかったとは不覚でした。
せっかく都市から離れた山奥の小屋に泊まりにきたのに、夜の街灯が気になってはガッカリです。お客さんを招くにあたってなんとか改善せねばと考えました。
いちばん単純な解決案は「カーテンをかけること」なのですが、カーテンレールをつけてカーテンをかけるだけで窓周りがごちゃごちゃして感じられますし、一か所の窓だけカーテンがついているのも変です。それに、夜が明けて自然な光が窓から入ってきて目覚められるような部屋にしたいという思いもあって、カーテンはつけたくないのです。
電柱や街灯って基本的には公共のものなので一市民がどうこう言えるものじゃないのでしょうが、この電柱に関してはちょっと話が別。
というのも、電柱の設置にあたって我が家が土地を提供しているという事情があるのです。
母から受け継いだ山小屋の資料の中にこんな書類がありました。東京電力からの書類です。これによるとほんのわずかではありますが、土地の使用料もお支払いいただいているとのこと。書類の日付は平成元年ですから30年以上も前。
昔の写真を振り返ると、1984年の写真にも電柱が写り込んでいました。
こちらが土地を貸している立場ならば、少なくとも相談する余地くらいありそうです。早速、東京電力に電話をかけてみたところ「街路灯は市町村の管理で、東京電力は市町村を通して設置やメンテナンスをおこなっている」ということでした。
今度は役所に電話をして担当部署を紹介してもらい、担当の方と一度話をすることになりました。
内心、不安でした。こういうエリアの役所の人間って僕のようなよそ者にはわりと冷たいことが多いのです。
以前、地元の老人から「道路広くしたいから、お宅の離れを壊してよ」と唐突に言われ「なんでただのご近所の人がいきなりそんなことを言うんだろう?」と驚いてしまい、役所に相談したら職員がおっちゃんの昔からの知り合いで話が満足に通じず、まともに取り合ってもらえませんでした。幸い、我が家の離れは取り壊されずに済みましたが、興味ある方は「日刊Sumai」の連載をどうぞ。
今回は僕の心配も杞憂に終わりました。やってきたのは僕と同じくらいの年齢のわりと若めの職員さんで話のわかる方でした。
僕が「うちが土地を貸しているからといって、街灯を撤去しろと無理強いするつもりはない。なるべくもめないかたちで改善の方法を考えられないか」と伝えると「もちろん貸主さんの意向は尊重するし期待にも沿う努力をするが、こういう田舎だとご近所の方の反応も無視できない。なるべく穏便に済ませたい」とのこと。ああ、同じ言語で話せるありがたさよ。
そこで、向かい・斜め向かい・お隣にお住まいの方々を訪問して事情を話し、街灯を撤去したいという希望を伝えてみました。みなさん二つ返事で快諾してくださり、ホッとしました。
その際「本当はうちの敷地に街灯があったらいいのに」とおっしゃる方がいるのを僕は見逃しませんでした。
「だったら、うちの外灯を撤去するんじゃなくて、ご近所に移転すればいいんじゃね?」と思ったのです。
このアイデアを役所の方にお話しすると「それなら街灯がなくなったというクレームも来づらいと思うのでいいですね」と色よい返事。
ほどなくして職員の方がそのご近所さんと直接お話して、新しい電柱の設置が決まりました。
これはまだ街灯が設置される前の電柱。
しばらくして街灯も据え付けられました。
夜になると以前と同じく青白い光を放っています。
でも、我が家の窓からは距離が離れたので今度は街灯が気になることもなくなりました。
外観はほとんど変わってませんが、よく見ると街灯がなくなっています。
我が家は灯りの悩みから解放され、ご近所さんは「自宅の前が明るくなってよかった」と喜んでくれて、まさにwin-winな結果となりました。
これでゲストのみなさんにも静かに眠ってもらえるようになりました。
唯一気になっていたのは、おせっかいな近隣住民がクレームを寄せてこないかということでしたが、街灯の移転から2年ほど経った現在でも特に役所から連絡はないのでなんとか穏便に済んだようでホッとしています。