(254)ブルーノ・マットソン(&天童木工)のイージーチェアのこと
今回はブルーノ・マットソンのイージーチェア「マルガリータ(Margarita)」(天童木工製)をご紹介したいと思います。
■この椅子を山小屋に置くまでの経緯
最初にこの椅子を山小屋に置くにいたった経緯についてお話します(んなことに興味はないよという方は次のチャプターまでお進みくださいませ)。
昨年設置した母屋のキッチンです。
こちらは工事途中の写真ですが、一歩下がって眺めてみるとキッチンの手前にはそれなりの空間が残っているのがおわかりかと思います。
間取り図でいうとこんな感じ。
赤で示したところに「ちょっとしたダイニングスペース」を設けてみようというのが発端でした。この図でもわかるとおり、我が家にはキッチンの隣室にちゃんとした食卓があります。
しかし、たくさんの窓に面した食卓は4月の初めや10月の終わりには肌寒さを感じることも多く、エアコンやガスヒーターもありません。部屋を暖めるには灯油ヒーターを使わねばならないのもちょっと面倒です。
そこで気温が低めの日にはキッチンと同じ部屋で食事が済ませられるようにしようと思いました。とはいえ、ひとつの家に大きい食卓を二つも置くのはバカらしいし、場所がもったいないという気持ちがあります。
夫婦二人で食事を済ませることができ、お客さんを交えてお茶できるような小さなテーブルを置きたいと考えました。これが「ちょっとしたダイニングスペース」の意味するところです。
■ブルーノ・マットソンと天童木工
前置きが長くなりましたが、ここに置いたのがブルーノ・マットソン(Bruno Mathsson)デザインのイージーチェアです。
ブルーノ・マットソンはスウェーデンを代表するデザイナーですが、製造は山形の天童木工。以前ご紹介した長大作の低座椅子も造っている日本屈指の家具メーカーです。
マットソンと天童木工の関わりについては公式ページをごらんいただくのがわかりやすいと思います。
【天童木工】「天童木工とデザイナー」
「畳で暮らす日本の生活様式」を想定して「床摺り」を付けることを提案したというエピソードはわりと有名みたいです。
この「床摺り」があるおかげで、欧米の木の床よりも傷つきやすい畳の部屋でも使いやすくなっています。 マットソンが天童木工のためにデザインした一連の家具は「マットソンシリーズ」と名付けられており、天童木工のホームページで一覧を見ることができます。
中でも有名なのは「ハイバックチェア」です(画像にはYahoo!ショッピングへのアフィリエイトリンクが張ってあります)。
その名のとおり「背もたれが高い」造りですが、基本的なデザインや構造は我が家のイージーチェアと同系統なのはおわかりいただけると思います。
ちなみに「ハイバックチェア」の原型は「床摺り」のない「マットソンチェア」。今でもヨーロッパで人気を博している椅子として『美しい椅子3』(枻文庫)で紹介されています。
ご興味ある方はどうぞごらんになってみてください。
■包み込むような座り心地と驚くような軽さ
さて、我が家に置かれたイージーチェアの話。
製品番号でいうと「M-0551WB-NT」というタイプです。先の「ハイバックチェア」とくらべてこじんまりとしていて狭い部屋にも置きやすいです。
僕の記憶が確かならばこの椅子には「マルガリータ(Margarita)」という名前が付けられていたと記憶しているのですが天童木工のページには記載は見当たりません。いわゆる愛称なのでしょうか。
この椅子を気に入ったのは座り心地の良さ。
前方に向かってやや角度がついた座面は腰かけると体を包み込まれるような快適さを感じ、初めて座ったときにすぐ気に入りました。『天童木工』(菅澤光政著・美術出版社)によると、マットソンは「座るときには「sit on」ではなく「sit in」でなければならない」(159ページ)と語っていたそうですが、納得の言葉です。
一人がけで約8キログラムという驚きの軽さで動かすのもラク。
「床摺り」のおかげもあって片手でススッと引っ張れます。イージーチェアというと座り心地が良いぶんだけ重さがある場合も多く、置き場所が固定になりがちです。これは欧米とくらべて居住空間の狭い日本の家ではネックと言えるでしょう。
その点、この「マルガリータ」は両手でひょいっと持ち上げることができるので状況に応じてレイアウトの変更も容易。夫婦ふたりのときは不要な分を隣室にさっと移してコンパクトな配置にしています。
北欧デザインながら和室で使用しても違和感を抱かせないたたずまいも素晴らしいですね。我が家のような和洋折衷なインテリアにもとてもよく似合います。
■バリエーションも豊富でニーズに合わせて選べる
バリエーションが豊富なのも特徴です。
こちらは肘掛けにクッションのついた「M-0561WB-NT」。
先ほどご紹介した「M-0551WB-NT」よりも少し座面が高く、幅もほんの少しだけ狭い造りになっています。
脚の形も少しちがいます。
肘掛けのないタイプ「M-0552WB-NT」もあります(画像にはYahoo!ショッピングへのアフィリエイトリンクが張ってあります)。
肘掛けが片方だけについているタイプ(「M-0568WB-NT」「M-0567WB-NT」)と組み合わせて横長のソファーのように使うこともできます。こちらもYahoo!ショッピングへのアフィリエイトリンクの画像でごらんください。
自由度が高いのでライフスタイルの変化によってレイアウトを変えていくこともできそうです。
オットマンもあります。型番は「M-0553WB-NT」。
組み合わせると脚を伸ばしてゆったりと座ることができ、映画鑑賞なんかには最高です。人間をダメにするコンビネーションですね。
ちなみに、このオットマン、甥っ子が赤ちゃんの頃、実家で使っていました。
座面が広くて中央に向かって少しだけ凹んでいるので赤ちゃんのオムツ台としても安定感があり便利です。
こんな具合にバリエーションも豊富なマットソンのイージーチェアですが、我が家では小さなテーブルを囲むように三脚置いています。
座面の深さゆえ食事を取る際には前傾姿勢になるために身を起こさねばならず、やや快適さに欠けます。老人だと立ち上がるのにやや苦労を要する場合もあるでしょう。この「マルガリータ」には座面が高くて角度の浅い「M-0571WB-NT」というタイプもあるので、ダイニングでの使用がメインならばそちらを選んだほうがいいかもしれません。
なぜ三脚すべて生地がちがうのかといえばヤフオクとメルカリでコツコツ買い集めたから。
次回はオークションサイトやフリマアプリで「マルガリータ」入手する際に注意したい点などをまとめます。