(318)壁に張るタイルのDIYは割り付けと準備作業が大切
前回、洗面のリフォームについて考えました。
今回はこの壁に張ったタイルの話です。タイルDIYについては何度も繰り返し書いてきたので張り方については割愛し、割り付け作業を中心に施工前の準備作業について考えたいと思います。
床に張る場合、実際にタイルをならべてみれば接着前にだいたいの収まりを確認することができますが、壁の場合はそれができないのが難点です。
そこで、施工スペースに対してタイルがどう収まるかを事前に計算する「割り付け」と呼ばれる作業をおこなうことになります。
といってもプロではないので厳密な図面や設計図を作る必要はありません。事前にタイルがきちんと収まるかを確認でき、必要な枚数が計算できればいいのです。
張り付けるタイルは前回もご紹介した平田タイルの「SAVON(サボン)」です。
タイルに同梱されていた注意書きによると、このタイルには張り方にタテヨコの2種類があります。どちらを選んでも収まりに大差はありません。
この図に寸法の詳細を書き足してみました。四角い部分をワンピースと考えると一辺は57mmで目地幅は3mmです。
つまり、5列のタイルとそれに挟まれる4列の目地で「57×5+3×4=297mm」が一辺の長さになります。
が、しかし。
一般的には、ここにもう1列分の目地を加えた長さがタイルシートの寸法とされます。よく商品説明に「目地共寸法」などと表記されているのがこの長さです。「SAVON」の場合は297+3=300mmとなり、30センチぴったりになります。
シートの片側にだけ目地がついているのは不自然な印象を受けますが、複数枚ならべたときの長さが計算しやすいようにと考えられたサイズ表記なのだと思います。
では、1シート(5列)が300mmとして550mmの壁には一体何列が収まるのでしょうか?
それを考えるために2シートならべたときの横幅を図にしてみました。
これによると、2シート目の4列目までを含めた540mmが壁幅にもっとも近いことがわかります。
しかし、この図の横幅は右端の目地3mmが抜けていますので補う必要があります。
9列の両端に3mmの目地を見込んで計543mm。
したがって550mmの壁幅にも問題なく収まります。7mmほど余りますが、それは左右の目地に3.5mmずつ割り振ることになります。もともと左右には3mmずつの目地幅を取っているので合わせて6.5mmとなり、両サイドの目地だけがやや広めになりますが、そこは気にしなくてもいいでしょう。
横の収まりに見通しがついてひと安心。
続いては縦方向の収まりですが、同様に考えて2,175ミリの高さに対して7シート+1列が収まることがわかりました。
ただ、7シートもならべた場合、施工の際に細かい誤差が蓄積されて結果的にズレが生じる場合も多いので、あえて細かい計算はせずにざっくり計算しておくだけにしました。
図に赤の太字で示したとおり、必要となるのは「7シート×2列+最後の一列分」で計15枚シート。
最上段で1シートをカウントするのは多すぎますし、余る右端1列分を使いまわすことも可能ですから、その気になれば1、2シート減らすこともできるのかもしれませんが、このへんをタイトに計算しすぎないほうがいいと思います。
シート状のタイルを細かく切り離したものをきれいにならべて張る作業はけっこうな手間で、素人の施工だと仕上がりにも影響しかねません。余りは余りとして受け止めて余分に頼むくらいのほうが作業しやすいと考えています。
ちなみに、今回はキッチンでも同じタイルを張ろうと思っているので1ケース(25シート)注文しました。
こんなふうにタイルの表面に紙が貼られ、1シートにつながっています。
このタイルを大工さんによる下地作業が済んだ壁に張り付けるわけですが、ここでトラブル発生。
洗面の右横の壁に大工さんが10mm厚くらいの合板を増し貼りしていたことが発覚しました。その結果、550mmあった横幅が540mmに狭まってしまったのです。
タイルを張ることを前提に横幅については事前に何度か確認しておいたのですが、どうやら連絡が現場にまで届いていなかったようです。せめて相談してくれれば……とは思うものの、こういうトラブルは工事につきものであります。
気を取り直して壁幅540mmで再度計算し直してみたところ……
ギリギリ収まりそうだとわかりました。
先ほどの計算ではタイルの幅を543mmと見積もりましたが、それも左右それぞれ3mmの目地を確保した上のこと。目地を削れば537mmなので、540mmの壁幅には収まる計算です。
ただし、計算はあくまでも計算。左右に1.5mmの目地となるとかなりタイトで、実際に張れるどうかは作業してみなければわかりません。
不安な気持ちをおさえつつ、準備作業を進めます。
張り付け前にシートの切り離しをしておくのも大事。
ここまで準備しておけば、あとは張り付けるだけなので作業に集中しやすいです。
タイルDIYに限りませんが、作業に集中できる環境づくりは本当に大事。
環境づくりといえば、今回の作業は現場が動かない夜におこないました。
はじめから最後まですべてDIYでおこなうならともかく、大抵の場合、どこかでプロの職人さんの力を借りる場合が多いと思います。特に、うちのようなフルリノベーションの場合、毎日さまざまな職人さんが入れ替わり立ち替わりで現場にやってきますから、DIYのスケジュール調整も一苦労。プロならともかく、素人が空き時間を狙ってスピーディに作業するのはほぼムリです。だれもいない夜か、現場が休みになる日曜などを狙って落ち着いて作業するよう心がけています。
とはいうものの、スケジュールが押してくると職人さんにお願いして邪魔にならないように隅で作業させてもらわなければならないのがツライのですが……。
しっかりと準備をすれば、あとはいつもと同じ作業。タイル用のボンドを塗り、クシ目をつけ、タイルシートを圧着します。
懸案だった横幅の収まりはギリギリOKでした。ぴったり収まったぶん、きれいに仕上がりそう。結果オーライ!
張り付けたら表面の紙を濡らしてはがし、シート間の継ぎ目を中心にズレなどを修正しつつ作業を進めます。
今回の洗面は床給水・床排水なので壁に配管がなく、タイル張りの作業としては難易度低めでした。
最後の1列もきれいに収まりました。だいたい1列くらいとはわかっていましたがラッキーでしたね。
小さなズレが積み重なった結果、ギリギリ収まらないという展開もありえたわけで、その場合はタイルの上部をカットしなければならなかったでしょう(実は次回お話するキッチンのタイル張りではうまく収まらない部分がたくさん出て、細かいタイルカットをたくさんすることになります)。
準備は大事ですが、しょせんは素人のDIYなので作業してみると予定どおりにいかないことも覚悟したほうがいいと思います。
張り付け完了後。とくに目立つほころびもなく、きれいに張れました。これも事前にしっかり計算したからこそ?
数日後、現場が休みになる日曜を狙って目地入れをおこないました。
目地入れ完了後。
今回はタイルの形を強調するためにダークグレーの目地を選びましたが、あえて白のタイルに白目地を合わせるのもあり。
これはランタン型の白のタイルに白目地を合わせた例。遠目に白い壁に見えて、近寄るとタイルの質感に気づきます。タイルは気に入っているけれど主張が強すぎるのはちょっと……という方におすすめの方法です。
さて、最後に洗面設置後の写真もごらんください。
「SAVON」ならではの独特な模様が際立つ洗面に仕上がりました。
次回はこの「SAVON」をキッチンの壁に張り付けます。