(411)電気の露出配管は電気屋さんの経験値が工事を左右する?
前々回、パナソニックの電話線プレートとハイスナップスイッチで作る安価な工業系トグルスイッチをご紹介いたしました。
このスイッチを取り付けた場所は露出ボックスでした。
躯体あらわしの壁が多いこの部屋では、リフォームにあたって電気配線の多くを金属製の露出配管で設置してもらいました。今回から二回にわたって工事の流れや費用について書いていきます。
■鋼製電線管の露出配管とは
ひとことで露出配管といってもいろいろな種類がありますが、今回取り上げるのはインダストリアル系のインテリアでもはや定番とも言える「鋼製電線管」を用いた露出配管です。
平たく言うと、金属製の管を設置し、その中に電線を通して配線する工事方法です。
主に工場や店舗などで用いられてきましたが、近年はその武骨な見た目が人気を集め、あえて住宅に選ぶ人も増えています。
デザインもさることながら、露出配管には自由度の高さというメリットもあります。
「ここに照明(やコンセント)があったらいいのになあ」なんて思っても、壁がコンクリートブロックだったり壁の中に間柱があったりして電線を延長できないことも多いのですが、露出配管で壁の上に配線すれば増設できてしまいます。
見た目と利便性が両立できる露出配管は、うちのマンションのような築古物件のリフォームの場合には本当にありがたい方法です。
熱海のマンションでは物件購入時の躯体あらわしの状態を活かすインテリアをめざしてきましたから、電気配線を金属の露出配管にするのは必然だったと言えます。
■どこにどんな配線がほしいか、リクエストをまとめる
まずは、どこにどんな配線がほしいか、見た目や利便性を考慮しながら考えます。
工事前のリビングの壁です。ここに対してはこんなリクエストを出しました。
コンセントの数は足りているので増設はしませんが、見た目を改善したい気持ちがあります。エアコンのコードが梁の下にモールで配線されているのが外見的にアレなので、これも金属製の配管の中に収納してもらうことに。
また、せっかくの躯体あらわしの壁なので、既存のコンセントから配管を延ばしてもらい、中央の目立つ位置に壁付けのソケットを二つ増設することにしました。
これは工事後の写真ですが、こんなふうに鉄の配管が延びたところに露出ボックスとソケットを設置するのを一度試してみたかったのです。
一方、こちらは工事前のダイニング。
向かって左にあるコンセントから右方向に露出配管を延ばしてコンセントボックスを二つ増設してもらいます。この場所にはダイニングテーブルを置くので、どの席からもコンセントを使いやすくしたいなと思いました。
ダイニングでは天井でも露出配管をお願いしました。もともと天井直付けの照明器具があったのを撤去してもらい、そこから照明レールへと配管を延ばしてもらいます。
洗面所でも露出配管を多用しました。以前書いたとおり洗濯機の位置を変えたので、既存の洗濯機用のコンセントを左方向に延ばして新しい洗濯機の位置に合わせる一方、下方向にも延ばして床近くでも気軽に使えるようにしようと思います。
このほか、洗面の天井や玄関などでも露出配管で照明やコンセントの移設&増設作業をお願いしました。電気工事のほとんどが露出配管絡みと言ってもいいくらいです。
■現場での打ち合わせで変更を余儀なくされるも……
さて、リクエストがまとまったので現場で電気屋さんとの打ち合わせとなりました。
現場監督さんが使えそうなパーツを持ってきてくれました。
これらを手に取りながら、僕からのリクエストを説明します。
こんな感じでコンセントをはずしてもらい、
代わりにノーマルな金属製の露出ボックスを設置してもらいたかったのですが「埋め込みボックスと露出ボックスの穴が合わないから設置できない」と言われてしまいました。
見くらべてみると、たしかに穴の位置がちがいます。
電気屋さん曰く、
このタイプのボックスなら設置できるそう(プレートは参考に置いた古いものです)。
そういえば、以前世田谷のマンションの工事でもこのボックスを使っていました。ボックスが大きくてプレートの両サイドにはみ出てしまうのが気になるものの、技術的に難しいなら仕方ないかと納得しました。
また、僕が使いたかった露出ボックスの横側には穴を開けられないとのこと。
ということは、
こういう配管もできないということなので、ボックスをタテではなくヨコ方向に設置してもらうことにしましたが、そうすると下方向への配管はあきらめねばなりません。
■助っ人電気屋さんの登場でリクエストどおりの配管に
ところが、いざ電気工事の当日になって事態が好転しました。
電気の工事箇所が多いため助っ人の電気屋さんが来てくれたのですが、そちらの方と話すと先日は「できない」と断られた工事がどれも「できそう」との返答だったのです。
手慣れた様子で、ボックスの裏にネジ穴を開けていく電気屋さん。
おかげで古いコンセントがあった箇所に露出ボックスが直付けできました。
ボックスの側面に穴を開ける作業もやってもらえました。
洗面の天井もこんな具合。既存の照明位置から壁まで延ばして、梁に照明器具を直付けしてもらいました。このあたりも助っ人電気屋さんのお仕事。聞けば、若い頃に工場などで露出配管の工事をしたことがあったんだそう。
いろいろ話を聞いてみると、職人さんによってはあらかじめカーブした鉄管は使わず、まっすぐな鉄管を曲げながら配管を作っていく人もいるそうですが「僕はできません」とのこと。「露出配管のできる・できない」の判断は電気屋さんの経験値によって異なると考えたほうがよさそうです。
住宅の電気工事においては配線は基本的に壁内に埋め込むものですから、ふつうの住宅を手がけることの多い電気屋さんにとって露出配管はやはりイレギュラーな作業なのでしょう。工事経験も乏しいとなると、いつものように臨機応変に対応できないこともあるのでしょうね。
僕のようにネットや雑誌などで露出配管の写真を見て「こんなふうにしたいんです」とリクエストする方は多いと思いますが、工事業者さんによっては仕上がりに差が出ることもあるなと感じました。
次回は、工事後の露出配管の写真や、実際にかかった費用などについてご紹介します。