(433)家賃維持で再募集するよりリノベーションで家賃UPを選ぶ

お金のこと

これからしばらく昨年工事した世田谷のマンションの話をしていきます。

今回ご紹介するのは工事前の室内です。

工事前の室内

昨年の5月ごろに空室になりました。

リノベーション前の間取り

間取りはこんな感じ。30平米で家賃は月9万円でした。ごらんのとおりいかにも築古といった内装ですから、世田谷の住宅街という立地を考慮すると妥当な金額かもしれません。

このままクリーニングして新しい入居者さんを募るという選択もありましたが、そうはせずにリノベーションして家賃アップをめざすことにした理由をご説明します。


■13年前におこなった140万円のリフォーム

マンションに残された記録を紐解くと、先代の大家(僕の叔父)時代の2010年におよそ140万円かけてリフォームしたという記録が残っています。

当時の写真をどうぞ。

昔にリフォームした室内
※不動産屋さんが撮影した写真です

リビングは壁を塗装し、床には木目柄のクッションフロア。

昔にリフォームしたキッチン
※不動産屋さんが撮影した写真です

新しいブロックキッチンを設置し、

昔にリフォームした洗濯機置き場
※不動産屋さんが撮影した写真です

そのすぐそばには室内洗濯機置き場を設けました。

昔にリフォームしたトイレ
※不動産屋さんが撮影した写真です

もともとあった便器にはウォシュレットを設置。

昔にリフォームした洗面
※不動産屋さんが撮影した写真です

洗面も一体型に交換され、

昔にリフォームした浴室
※不動産屋さんが撮影した写真です

お風呂は壁を壊してユニットバスを入れました。

どれも築古マンションでよくあるリフォームですね。


■リフォームしても入居者が居つかない部屋

この工事を依頼した先代はマンションにお金を使うのをとにかく嫌った人でした。そんな人間が140万円もかけてリフォームをせざるをえなかった理由はもちろん入居者が決まらなくなってきたからです。

築30年ごろまでは、たとえ空室が出ても大がかりな内装工事をせずに「家賃10万円」で新しい入居者がすぐに見つかってきたのですが、築40年を迎えるまでの10年間は空室がなかなか埋まらないようになったそうです。

当時、マンションを引き継ぐことになるとはつゆも思っていなかった僕も、親戚一同が困った様子だったのをおぼろげに覚えています。

空室になった室内
※不動産屋さんが撮影した写真です

不動産屋さんに助言を仰いだところ「ベランダの洗濯機置き場を室内に移す」「古いお風呂をユニットバスに変える」「トイレにウォシュレットをつける」といった「いかにもな」提案があり、先のようなリフォームがおこなわれたというわけ。

さて、記録によるとリフォームのかいあって家賃10万円で入居が決まったものの、一度も更新することなくわずか2年で退去。次の募集時には10万円ではなかなか入居者が決まらず、じりじりと値を下げた挙句、結局9万円でようやく入居が決まったのでした。

リフォームして2年で家賃が下がる?何それ?という感じですが、僕も同じリフォームを施した部屋に暮らしたことがあり、ひどく不出来な物件だと体感しているので納得できてしまいます。

今回、あらためて問題のある個所を撮影してみました。

ガスコンロのすぐ前に洗濯機置き場

キッチン内にムリに洗濯機置き場を設置したせいでガスコンロのすぐ前に洗濯機があって料理しにくかったり、

開けたドアが向かいの壁にぶつかる

ユニットバスを設置したせいで廊下が狭まり、向かいのトイレのドアを開けるとぶつかってしまったり、

足元の狭いトイレ

もともと足元がギリギリだった狭いトイレに、ウォシュレット付きの大きめな便座がのせられたために座るも立つも苦しいトイレになってしまったり……。

洗濯機置き場も浴室もトイレも、せっかくリフォームしたのに(というかリフォームのせいで)不便になってしまったのです。

当たり前の話ですが、洗濯機置き場が室内にあればどこでもいいという話ではありませんし、トイレにウォシュレットがあればそれでオールOKという話でもありません。

実際に暮らす人の立場になって考えることもなくただかたちだけ設備を追加しただけで、インテリアには何の工夫もないとくれば家賃9万円でも高いくらいです。使い勝手でいえば「不良品」ともいえるこの部屋をクリーニングだけで貸し出すのは、大家として気が引けます。


■家賃が下がれば入居者の質も下がり、トラブル対応も大変

たとえこのままの状態で次の借り手を見つけられても、住みにくい部屋には入居者さんは居つかないものです。短期での退去が続いてしまえば、次の入居者を探すために再び家賃をじりじりと下げることになる怖れがあります。

うちのエリアだと9万円を切るあたりまで家賃が下がってくると大学生の入居なども増えてきます。大学生の場合、親がしっかり家賃を払ってくれるので不払いが起こりづらいという利点はあるものの、ゴミ出しや夜間の騒音などのトラブルが起こりがちなのが難点です。

空室になった部屋

トラブルに対応する大家だって疲弊します。

先代の頃、とある大学生が入居してきたことがありましたが、親が過保護なクレーマーだったために大変な思いをしたと聞きました。大学生本人は悪い子ではなかったのですが、玄関の電気が点かない(ただの電球切れ)といっては親に電話、お風呂の窓から虫が入ってくるといっては親に電話、そのたびに親からハードなクレームが入ってくるといった具合で、傍目から見てもこういう顧客の対応はしたくないなと思わせられました。

やっぱり家賃が安くなるとどうしても入居者の質が下がりがちになるんですよね。

空室になった部屋

不良品のような状態で部屋を貸したくない」という気持ちと「このままだと入居者の質も下がっていく」という心配とがあって、場当たり的なリフォームではなく見た目と利便性を両立させるようなリノベーションを施し、家賃を上げて募集をおこなうのがうちの方針となった次第です。

次回はどんなインテリアにリノベーションするか考えます。

アサクラ

大家業。世田谷のマンションと東京西部の山奥にある小屋を管理&経営しています。最近は熱海に購入したマンションの一室をDIYで修繕中。ESSE online(エ...

プロフィール

ピックアップ記事

関連記事一覧