(475)鉄のフライパンとオーブンで黒毛和牛の厚切りステーキを焼く
前回、ガスコンロのまわりに防熱板を設置しました。
今回は、このキッチンで厚切りのステーキ肉を焼いてみようと思います。
あらかじめお断りしておきますが、我が家の環境は一般家庭としてはかなり特殊。
高火力が売りの業務用ガスコンロと鉄のフライパン、
さらにコンベクションオーブン(siroca(シロカ))も使います。
どれも高価ではありませんが、ふつうのご家庭のキッチンに必ずある設備でもありません。したがって「おうちのフライパンで簡単に厚切りステーキが焼けます」的な話ではなく「こんなふうに厚切りステーキを焼く人もいる」というひとつの例とご理解ください。
次回にまとめますが、厚切りステーキの焼き方を調べてみるとプロの間でも百家争鳴。素人の僕が正解を示せるわけもありませんから、アサクラ個人の私的なメモくらいの気持ちでお読みいただければ、と思います。
■まずはお肉と調理器具の準備から
今回用意したお肉はこちら。
A5ランクの黒毛和牛のリブロースです。家族の誕生日なので奮発しました。
420グラムで厚みはおよそ3.5センチ。「厚切り」の定義は人それぞれかと思いますが、最低でも3センチくらいの厚みのお肉は用意したいところです。
ふつうのスーパーでは厚切り肉を扱っていない場合も多いのでお肉屋さんでカットしてもらうのがおすすめですが、慣れないうちはこれがなかなか難しいもの。
ひとことで「ステーキ肉」といっても、お肉の形、特に盤面の広さは部位によっても異なり、個体差も大きいです。お肉の盤面が大きいと3~4センチで切り出すととても食べきれないサイズ(と金額)になってしまう可能性も。盤面の広さと厚さ、サイズのバランスを考えながらお肉屋さんに相談してカットしてもらうといいと思います。
お肉は焼く直前に冷蔵庫から出すのではなく30分~1時間ほど前に出して室温になじませます。こうすることで中が冷たい状態で火が通りにくくなるのを防ぐことができます。
肉を焼くには金属製のトングを使います。あらかじめ丸めておいたキッチンペーパーを7、8個用意しておきます。のちほど書きますが、これで余分な脂を吸い取ってボウルの中に捨てていきます。
スキレット用のロストルも使います。もともと蒸し物用に購入したのですが、現在はもっぱら肉専用。
フライパンは料理研究家の有元葉子さんプロデュースの鉄のフライパン(22センチ)。妻が友人からプレゼントでもらったものですが、今では僕が私物化しています。
持ち手が短いのでそのままオーブンに入れることができるのが特徴です。ちなみに、現在は表面にエンボス加工が施されたタイプは生産中止になり、別のタイプが販売されているので要注意。
なお、24センチのフライパンも所有していますが、こちらだとはみ出てしまいオーブンのフタがしまりません。うちのオーブンでは22センチがベストサイズでした。
焼く直前に両面に塩と胡椒をまんべんなく振ります。量は好みもあると思いますが、しっかりめがおすすめ。多少振りすぎても焼く際にフライパンに流れ出た脂と一緒に落ちるので、しょっぱすぎる仕上がりになることはないからです。
オーブンを100℃で余熱し、
換気扇を「強」で回したら、いよいよ調理開始です。
■フライパンとオーブンで肉を焼く
火力をマックスにして、鉄のフライパンを温めます。
うっすらと白い煙が立ち上ってきたら、
トングで肉の側面からジュッと焼いていきます。
しっかりと焼き色がついたら、広い面を焼きましょう。
肉から流れ出た余分な脂はキッチンペーパーでふき取りながら焼きます。
部屋の中は煙もうもう。煙感知型の火災報知器だと即警報が鳴ってしまうので要注意。
焼き色がついたら裏返し。
しっかり焼き色がつくまで焼いたら火を止めて、トングで肉を持ち上げ、
スキレットロストルをフライパンの上にセット。
その上に肉を戻したら、
そのまま余熱したオーブンにイン。100℃で16分ほど焼きます。オーブンとしてはかなり低めの100℃に設定することで肉の中までじっくり火を通していきます。
スキレットロストルを使う理由は、ガスコンロの上でしっかり焼き色をつけたので、これ以上フライパンに直接肉をのせて加熱する必要はないからです。スキレットロストルをかませることで、肉全体がほぼ同じような温度にさらされる状態を作ってあげます。
焼き時間の半分=8分で一度肉をひっくり返します。
計16分焼いたら、オーブンから取り出して、広げたアルミホイルの上に置き、
ぴっちりと包んでさらに余熱で火を通します。
温かい場所に16分=焼いた時間と同じくらいかそれ以上の時間、置いて肉を休ませてあげます。ローストビーフなんかもそうですが、焼いてすぐにカットすると肉汁が流れ出てしまうのでよくないとされています。じっくり待ってからカットすることでしっかりと肉汁が閉じ込められたお肉ができあがります。
■で、焼き上がりは?
アルミホイルを開くとこんな感じ。正直、見た目ではどれくらい火が通ったかわからないのが難しいです。カットするときはいつもドキドキします。
カッティングボードの上で切り分けてみました。きれいなピンク色で生焼けな部分もなく、上手に焼けたと思います。
こちらは以前に焼いたときの写真。焼き加減としてはレアと表現されるのでしょうかね。個人的にはこれくらいの火入れがいちばん好みにあっていると思っています。
なお、オーブンの時間が長すぎて焼きすぎたなと感じたときはこれくらい。
脂ののったお肉なので、多少火が通りすぎても美味しくないことはありませんが、レアのほうがしっとりとしてジューシーさも感じられ、見た目もきれいだと思います。
他の部位を焼いたときの写真もごらんください。
ステーキといえばこれ、サーロインです。基本的にリブロースと同じように焼いて、きれいにピンク色に仕上がりました。
こちらはランプ。リブロースやサーロインとくらべ、脂が少なめなので焼き加減には注意が必要です。脂多めの肉は多少焼きすぎてもそれなりに美味しいのですが、ランプやヒレを焼きすぎるとパサつきが際立ち、残念な仕上がりになってしまいます。
同じ厚さでランプを焼くなら、オーブンでの焼き時間は片面6分で計12分くらいでしょうか。
リブロースとランプをくらべてみました。左がランプで、右がリブロース。ランプは脂とお肉のバランスがよくて食べやすいので、脂が苦手という人にはこちらがいいかもしれません。塩胡椒おさえめでちょびっと醤油も美味しそう。
注意が必要なのは「A5の黒毛和牛」で同じ部位を選んでもお店によってお肉のサシの入り方はけっこう異なること。
たとえば、僕が山小屋で肉を焼くときによく買いに行くお肉屋さんは、世田谷で購入する店とくらべて脂が多めにのっている肉を扱っています。
写真は先ほどと同じランプ肉ですが、食べた感じでは、世田谷の店で買うランプ肉とリブロースの間くらいの脂を感じました。
このほか、ステーキといえばヒレも人気ですし、イチボとか細かく部位を分けて販売するお肉屋さんもあるようですが、僕はあまり焼いた経験が豊富ではないので、ここでは言及しません。なんにせよ、お肉屋さんの個性も考慮に入れると肉焼きがより楽しくなるのはまちがいありません。
とまあ、こんな感じで厚切り肉の焼き方をまとめてみたのですが、冒頭にもお断りしたとおり、アサクラの我流による部分が多く、少し料理に詳しい方ならいろいろ突っ込みたくてウズウズしたかもしれません。この数年、自分の経験を中心にいろいろ試してきた結果ではありますが、自分でもここらへんで少し他の焼き方にトライしてみたい気持ちも出てきました。
次回は料理雑誌「dancyu」を読みながら、ステーキ肉の焼き方の多様性について考えてみたいと思います。