(591)今まででいちばん低予算でリフォームした部屋を紹介する
今日から数回にわたって世田谷のマンションの一室をご紹介いたします。
この部屋のリフォームをおこなったのは今から8年以上も前のこと。もうそんなに経ったのか、という感じです。当時は大家を引き継いで2年目、立て続けにリフォームをおこなったせいで資金的にもかなり苦しい時期で融通できる予算も限られていました。
その結果、「使えるものは残して使う」ことにこだわらざるをえなかったのですが、そのおかげで「そのままでも十分に使えるもの」や「むしろそのままのほうが魅力的なもの」に気づくことができたのは大家としていい経験になりました。
文中で番号の付されている写真については、末尾の間取り図で撮影箇所をご確認いただけます。
■低予算でも洗面とトイレだけは間取りからリフォーム
では、間取りをごらんください。
低予算リフォームなので間取りそのものはほとんどそのままですが、唯一いじったのがトイレと洗面です。
リフォーム前のトイレには古い便器の上にウォシュレットが、
洗面にはいわゆる一体型洗面台が取り付けられていました。
どちらも先代の大家の時代に交換したのですが、もともと狭かったうえにウォシュレット付き便座をのせたおかげでますます狭くなったトイレは便座から立ち上がるたびに顔を壁にぶつけそうになりますし、一体型の洗面台の野暮ったいデザインは個人的にどうにもガマンができません。
おまけにトイレに向かって左側に付いていたドアを開けると向かいの壁にぶつかってしまい、完全に開くことができません。もはや欠陥住宅です。
以上の欠点を改善するために間取りから変更することにしました。
そのためにはブロックの壁を解体せねばならず、工事中の騒音など心配事も多いのですが、仕方ありません。
リフォーム後のトイレです。ドアの位置を前面に変更したおかげで窮屈な思いをしないでゆったり使えるようになりました。便器も新しく交換しています。
一方、洗面も照明・キャビネット・洗面ボウルなど、すべてを新しくしました。
特に気に入っているのが「バタフライ50」(サンワカンパニー(現ミラタップ))という壁付けの洗面ボウル。ショールームを見学したときにスタイリッシュなデザインが気に入って選びました。フチの部分がフラットなのでちょっとしたものを置くこともできます。残念ながら現在は廃番となってしまっています。
洗面向かって左のトビラの向こうには浴室が。
こちらは先代のときに導入されたユニットバスで、使用に不自由もないのでそのまま残しました。
■既存のキッチン本体は残してリニューアルしたが…
いちばんのコスト削減は既存のキッチン本体と吊戸棚をそのまま残したことです。
賃貸物件でよく見かけるいわゆるブロックキッチンです。自分で言うのもなんですが、古いキッチンを残したわりにはきれいに見えませんか?
その理由は古いキッチンのまわりをきちんと整えてリニューアルしてあげたから。
リフォーム前のキッチンとくらべてみましょう。
写真のクオリティも相まって、とっても残念な雰囲気が漂います。
ガランとして寂しい壁面にはIKEAの収納シリーズ「グルンドタール(GRUNDTAL)」を取り付けて利便性を向上させつつ、厨房のような雰囲気を出してみました。
レンジフードを交換し、以前は借り手が持ち込まなければならなかったガスコンロも備え付けに。これだけで印象はかなり良くなります。
業務用のガスコンロは火力もあってシンプルで無骨な見た目も気に入っていたのですが、安全装置のない業務用を賃貸で使用するのはリスクがあると気づき、現在は別のガスコンロに交換しています。
ホワイトを基調に清潔感のあるキッチンに仕上がりました。
でも、ひとつだけ今でも後悔していることがあります。それはキッチン内にある洗濯機置き場です。間取り図をごらんください。
昭和の築古マンションあるあるですが、もともとベランダに外置きされていた洗濯機置き場を先代がむりやりキッチン内にねじこんでしまったため、ガスコンロの斜め前に洗濯機置き場があるのです。
これは同じ間取りの別の部屋で撮影した写真ですが、洗濯機置き場とガスコンロがかなり近いのがおわかりいただけるかと思います。実際にここに洗濯機を設置するとガスコンロに対してまっすぐ前に立つことが難しく、料理がしづらいのです。
予算の都合上、既存のキッチンと洗濯機置き場を残さざるをえなかったので、この点はどうしても改善することができず、後悔の気持ちが残っています。
■ホワイトで統一したリビングは眩しいくらい明るい
リビングに移動しましょう。
ごらんのとおり、床から天井まで真っ白なのが印象的です。初めてリフォームした部屋もそうなのですが、とにかく全体をホワイトで統一して明るい印象を与えるインテリアを作るというのが当時の僕の方針でありました。
アメリカンスイッチも白を選び、
既存の天井を解体して躯体あらわしにした天井もペンキで白塗り、
増設した露出のコンセントボックスも真っ白に塗ってもらいました。
昔、壁貫通型のエアコンがあった空洞を利用して設置したガラスボックスの窓が部屋を明るく感じさせてくれます。
もともと日当たりの良いこともあり、眩しいくらいの部屋になりました。8年を経て見直してみるとちょっと神経質なくらい白いですね。今見ると壁紙かペンキでアクセントを入れても面白いかななんて感じます。
窓を開けると外の緑が見えるのが気持ちいいです。この景色を気に入ってうちに決めてくれる人がいるくらい。
■間仕切り戸の上にあったガラス欄間の良さに気づく
窓を背にしてリビング、キッチンを臨みます。
3枚引き戸の間仕切り戸を閉めました。
大家を引き継いでから2年間、リフォームのたびに間仕切り戸は新しいものと交換してきたのですが、この部屋では費用削減のために既存の引戸を塗装してもらって残しました。もともとシンプルなデザインの引戸ですし、使い勝手にも不自由なく結果的にまったく問題ありませんでした。
うれしい誤算は間仕切り戸の上にあるガラス欄間。引戸を残したついでに残しただけだったのですが、内見に来た方々に褒めてもらうことがとても多いのです。
自分自身では気づくことができなかった魅力を発見することができたのは予算的な制約のおかげと言えるでしょう。これ以後、すべての部屋のリフォームで引戸と欄間は残しています。
一方、押し入れの引戸は撤去してオープン収納にしてロールカーテンを設置しました。新しい建具を設置するよりはるかにリーズナブルなので低予算リフォームにはピッタリです。
■気になる費用は総額で「約220万円」かかった
最後にリフォーム代金をまとめましょう。
業者さんに依頼した分で「2,168,000円(税込み)」でした。ここにIKEAなどで購入して施主支給した備品の費用が加わるので、およそ「220万円」くらいが総額になるでしょう。
この金額、うちのマンションのリフォームとしてはかなり低額なのです。
たとえば、2022年にリフォームしたこちらの部屋。
総額「約320万円」でのリフォームでした。これとくらべて100万円も安く工事できたのは「がんばったなー」と実感します。
ちなみに、今まででいちばん高額なリフォームをした部屋はこちら。
このときの工事費は「400万円」オーバー。既存のユニットバスを残してこの金額は明らかにお金を使いすぎました。今回ご紹介した部屋と足して2で割るくらいが予算的にはちょうどよかったなあ、なんて思ってしまいます。
ちなみにこの部屋のお家賃は他の部屋よりもややお安い「114,000円」。他の部屋の家賃はだいたい12万円ですから6,000円ほどお安い計算です。先述したキッチンの使いにくさのぶんだけお値引きさせていただいたつもりです。
次回も、この部屋の話。リフォームから8年を経て「今、この部屋をグレードアップするとしたらどうするか?」を空想してみます。