(600)昭和レトロ?ミッドセンチュリー?世田谷の自宅を紹介する
今回は、アサクラが暮らしている世田谷のマンションの自室をご紹介します。
リフォーム事例集でもお見せしているとおり、うちのマンションは我が家も含めて間取りと広さは同じなのですが、部屋ごとにインテリアが異なります。
よく入居者さんから「大家さんはどんな部屋に住んでるんですか?」と質問されるのですが、そのたびに答えに窮してきました。
僕の部屋は今からおよそ10年前に一度リフォームしているのですが、あの頃は大家の仕事を引き継いだばかりで忙しかったこともあり、じっくりと考えて工事する時間も知識もありませんでした。当時なりに工夫はしたものの、振り返ると「ああすればよかった、こうすればよかった」という後悔ばかり頭をよぎりますから、積極的に自室について話す気にもなれなかったのです。そのうえ、コロナ禍で部屋への来客もなくなったせいで長らく散らかったままでした。
しかし、熱海や山小屋のリフォームを経て、あらためて自宅に手を入れて快適な空間にしたいという思いがつのり、ついに2024年の秋から年末にかけて一念発起して部屋を片付け、水回りを中心にリフォームを施しました。
なお、この記事は今後のリフォームに応じて加筆訂正されていく予定であることをお断りしておきます。
■アクセントカラーにはオレンジを選んだ
最初に我が家の間取りをどうぞ。
広さはおよそ30平米。
では、玄関ドアを開けたところからごらんいただきましょう。
うちのマンションでは必ずドアポストにアクセントカラーをつけるようにしていますが、我が家ではオレンジを選びました。
2024年のリフォームで床にも赤みの強いオレンジ色を取り入れました。既存のクッションフロアの上からDIYで東リの「マチコV」を重ね張りして雰囲気を一新したのです。
床材に赤を選ぶのはかなり勇気が必要だったのですが、せっかくリフォームするならガラリと印象を変えたいという思いもあり、ビビッドな色を選んでみました。
室内側から玄関を眺めたところ。オレンジの小物やフックなどを随所に配してアクセントにしています。
■洗面、浴室、トイレ
玄関を上がって右手には洗面所があります。
この洗面も10年前のリフォームからかなり手を加えています。
洗面台にはタイルを張り、床にもタイルを張り、キャビネットや照明も交換。もはや原型をとどめないほどに変身しました。
照明は山小屋の浴室に設置されていたナショナル製の古い照明器具。わざわざ取り外して移設するのはけっこうな手間だったのですが、独特のデザインと中央のオレンジカラーが我が家にマッチすると考え、手間を惜しまず実行しました。
組み合わせたTOTO製のキャビネットもかなりの年代もので、うちのマンションの一室に設置されていたもの。解体時に取り外して保管しておき、今回のリフォームで取り付けてもらいました。照明との組み合わせは我ながらうまくはまったと自負しています。
ちなみに、頭上の棚にはペーパー類のストックを置き、左横の壁のフックには洗濯ネット類を収納しています。
これが実際に暮らしているさま。物が置かれるとやはり圧迫感と生活感が出るものの、効率的な収納ができるようになり、かなり暮らしやすくなりました。
洗面右横の折れ戸の向こうには浴室が。10年前にユニットバスに交換して以来、ほぼ手を加えずにそのままで暮らしています。
ユニットバスって見た目的には味気ないくらいのシンプルデザインなのですが、タイル張りの在来のお風呂とくらべて漏水のリスクもかなり少ないし、床も冷たくなりにくいので、毎日の暮らしを考えるとリフォームではユニットバス一択になりがちなんですよね。最近は、この味気ない空間に何か面白いアクセントが加えられないか、思案しているところです。
洗面と壁を隔てて隣にトイレがあります。
オレンジにスカイブルーを合わせてみました。いつもならアクセントカラーは背面の壁に塗るのがうちのマンションの定番なのですが、便器やキャビネットが設置された状態で壁を塗るのはとにかく手間がかかるので左側面の壁のみを塗装しました。結果的には面白い効果を生んだ気がしています。
床には小粒のオレンジのタイルにブルーの目地。便器を外さずに既存の床の上から重ね張りしています。
ペーパーホルダーや照明、飾り棚など、小物はすべて真鍮でそろえてみました。真鍮の素材感ってなかなかインテリアに取り入れづらいなと思ってきたのですが、こういうポップなカラーの中に真鍮が入るとインテリアがキリッと締まって、大人っぽさが加わると実感できました。
■使いやすさをいちばんに考えたキッチン
こちらがキッチン。インテリアうんぬん以前に自分にとっての使いやすさを追求して作りました。
うちのマンションの定番である業務用キッチンは僕自身が実験台になるつもりで初めて導入したのですが、リーズナブルでデザインも使い心地も気に入ったので、以後、さまざまな物件で採用しています。コンロ台や流し台(シンク)を組み合わせてL字にレイアウトし、とにかく広い作業スペースを確保することにこだわりました。
あらためて間取り図をごらんください。
そう、僕の部屋はこのマンションで唯一、洗濯機が外置きのままなのです。いつもならリフォーム時にキッチンの一画に移転するのですが、それをあえて外置きのままにすることで室内スペース、とくにキッチンを広く取れるようにしました。
窓際には我が家の定番アイテムの突っ張りタイプの水切りラックを2つならべて設置。頭上には10年前に造作してもらった収納棚に棚下収納まで追加してとにかく収納力を強化しました。
壁面にもアルミやステンレス製のレールやシェルフなどが所狭しとならびます。使用頻度の多い調理器具やコーヒー道具を収納するスペースにすることで、必要なときにサッと取り出せて、使い終えたら即収納できるようにしています。
ガスコンロわきの壁には昨年末にステンレスの鉄板を張り付けてもらいました。マグネットでフライパンやミトンを収納しています。
その上には10年前のリフォームで造り付けてもらった食器棚が。先日のリフォームで背面に床と同じマチコVを張り付けてリメイクしました。背景に色が加わると、食器の存在感も引き立ちます。
一方、食器棚の側面にあたる壁にはタイルを張りました。以前はここにも壁付けの棚が付いていたのですが、撤去してあえて余白にすることで物にあふれるキッチンの狭苦しさや息苦しさを緩和したいと考えました。
■昭和レトロ?ミッドセンチュリー?
さて、ここで少々脱線。
先日、インテリア関連のお仕事をされている方を自宅にお招きしたのですが、我が家の水回りを見て「ミッドセンチュリーですね」と形容したのを聞いて意外な一方で面白いなとも感じました。
僕自身、いわゆるミッドセンチュリーのインテリアにはあまり関心がなく、かろうじてイームズやジョージ・ネルソンの名前を知っているくらいで、家具や雑貨も所有していません。
ですが、ミッドセンチュリーの特徴のひとつがビビッドな色使いであるとすれば、赤やオレンジをアクセントにした我が家はミッドセンチュリーっぽさを感じさせるのかもしれません。
そして。
乱暴を承知でいえば、「ミッドセンチュリー(mid-century)」という言葉は字義的には「世紀の半ば」を意味するので、日本にあてはめれば戦後の昭和、高度成長期にあたり、その時代に建てられたうちのマンションだって広義の「ミッドセンチュリー」に含まれると言えるのではないでしょうか。
その意味では、
キッチンに設置したナショナル製のペンダントライトや、
先ほど洗面で紹介したナショナルの照明やTOTOのキャビネットも「ミッドセンチュリー」でしょう。
母の遺品から受け継いだキッチン雑貨だって「ミッドセンチュリー」です。
オレンジ色のスケールや、
調味料を入れるケースなど、これらのテイストは現在では「昭和レトロ」としてわりとポジティブに評価されていて、まさに隔世の感があります。
しかし、昭和生まれ・昭和育ちの自分的には「昭和レトロ」という表現には、いまだぬぐい切れない垢ぬけなさを感じざるをえないところがあり、「昭和レトロ」の家具や雑貨を取り入れるにしても、それを自称するのはどうも気が進まないのです。
ここで冒頭の話につながるのですが、「大家さんはどんな部屋に住んでるんですか?」という質問に対して「昭和レトロな部屋です」と答える気にはならないのもそんな気持ちが背景にあります。
ただ、巷で「昭和レトロ」と称される品々のデザインが嫌いなわけではありません。僕自身が選んで購入した、昭和とは縁もゆかりもない品々にも、どこか通じる雰囲気があるのも事実です。
これは「パペリナ」という スウェーデン製のキッチンマットですが、この柄と色使いはどこか懐かしさを感じさせます。
キッチンの壁に張ったタイルはスペイン産のタイルですが、こちらもどこか懐古趣味的な雰囲気が漂います。
さまざまな国や時代の物を組み合わせて楽しむという意味で我が家のインテリアはいわゆる「ミックススタイル」なのでしょうが、この種の表現は正しいけれど漠然としているため、ひとことでは何も伝わりません。
そんなこんなで、ひとまずは「ジャパニーズミッドセンチュリー」とでも名乗ってみたいと思いますが、いかがでしょうか。
■落ち着いた雰囲気を目指したリビング
閑話休題。
キッチンにある引き戸を開けると、その先はリビングです。
オレンジや赤を多用した水回りとは異なり、こちらはダークブラウンとクリーム色を中心とした室内です。
床材には、妻のたっての希望で無垢の木材を採用しました。
チェスナット(栗の木)のフローリングに「なぐり」と呼ばれる加工を施した重厚感のある床を選びました。
リビングの中心となるのはリサイクルショップで買った古い日本製のダイニングテーブル。ここで仕事して食事を取って一日を過ごしています。
用事があるときに使用するキッチンや洗面とちがい、何もすることがない時間も含めて過ごすのがリビングなので、あまり強い色を使わない、落ち着いたインテリアを目指しています。
ブラウンの回転椅子は「いのうえアソシエーツ」の「腰の椅子 Awaza(アワザ)」です。デスクワークが多くて腰が痛くなりがちな僕でしたが、この椅子を手に入れてからは座るのが本当にラクになりました。
昨年、フジタケワークスで張り替えてもらったカイ・クリスチャンセンの「No.42」はうちの奥さんが座る椅子。脚をカットしてもらって座面高を低くしています。
サードチェアはウェグナーの「CH30」。主に来客用に活躍しています。
滅多にありませんが、来客で四人目の椅子が必要になる場合に備えてモーエンス・コッホのフォールディングチェア「MK99200」も部屋の隅に用意してあります。
サッと開くだけで使える機能性と、フォールディングチェアとは思えない洗練されたデザインを兼ね備えているのが魅力です。
キッチンとリビングを間仕切る2枚の引き戸は、日本のアンティーク家具や建具を専門に扱う古福庵で購入し、大工さんに設置してもらったもの。もともとあった引き戸よりもわずかに低かったので枠を造作してもらって取り付けてもらいました。
独特の模様のガラスも含めて、とても気に入っています。
引き戸のわきには祖母が山小屋で使っていた桐ダンスを置いて、洋服の収納に使っています。けっこうかさばりますが、そのぶん収納力もあるので夫婦で重宝しています。
その上には活版印刷の木製トレーをたてかけて、ブローチやバッジなどを飾っています。
窓の上にはDIYで設置した飾り棚が。母親が生前に使っていたベッドを解体して出た板材を再利用しました。
物を飾るのはこの二か所に集中することで、何もない場所とのコントラストをつけ、部屋がごちゃごちゃして見えないようにこころがけていますが、油断するとすぐ部屋が散らかりますね。
個人的に気に入っているのがガラスブロックで構成した小さな窓の周辺。内見のたびに室内に彩りを与えてくれるツルニチニチソウはここを定位置にすくすく育っています。窓枠に取り付けたフックから大小さまざまな収納が吊り下げられていますが、なかなか絵になる空間になったと思っています。
一方、まだ改善の余地がありそうなのが、鏡のまわり。
以前キッチンで使っていた棚を横向きに倒して床置き収納にしているのですが、テイストがこの部屋に合わないのでファブリックをかけて隠しています。ただ、見た目的にもっさりした印象は否めず、そのうち手を入れたいと思っています。
こうして振り返ると、日本の伝統的なスタイルの家具や建具と北欧の家具や雑貨などをミックスしたのが我が家のリビングなのだと思います。この数年、インテリア業界では「Japanese(日本的)」と「Scandinavian(北欧的)」インテリアをミックスした「ジャパンディ(Japandi)」というスタイルが流行っていると読んだことがありますが、ひょっとしたら我が家もそれに近いのかもしれません。
ちなみに、夜のリビングはこんな雰囲気。薄い木材でできたペンダントライトから優しい光が広がるさまが気に入っています。
■寝室は収納でいっぱいいっぱい
最後に寝室をご紹介します。
わずか三畳の広さの狭小空間です。六畳のリビングに付帯するサービスルームという位置づけの部屋でアコーディオンカーテンでリビングと間仕切れるようになっています。
賃貸用の部屋では下がり壁も解体してリビングと一体の空間として使えるようにしていますが、我が家では下がり壁とアコーディオンカーテンを残しました。うちは夫婦で活動時間が異なり、就寝時間もズレているので、寝室はあるていどクローズドにできる仕組みが好ましかったからです。
事前に想定していたわけではないのですが、お客さんが来たときにリビングのゴチャゴチャをいったん寝室に放り込み、アコーディオンカーテンで見えなくできるので便利。
この寝室、小上がりになっていて床下には収納があります。さらに、天井まわりのいたるところにフックを取り付け、いろいろと引っかけられるようにしたせいで、ついつい余計なものをこちらに運び込んでしまうクセがついてしまうのは考えもの。
もちろん、ロールカーテンで目隠しできる収納も中はパンパン。
かつては本好きを自称していた自分ですが、今では活字を読む機会がめっきり減ってしまい、10年前のリフォームで造りつけてもらった本棚も今では主に飾り棚兼収納棚になっています。
さまざまな物を収納した大小の箱をきれいにならべるのは難しいもので、あふれんばかりの物をすっきり見せるのが今後の課題だと思っています。
こうして見渡すと、まだまだ手を入れたいところが散見されますが、コロナ禍のときの混沌とした室内とくらべれば劇的にきれいになり、快適に暮らせるようになりました。これが「最大瞬間風速」にならないよう、今後も少しずつ改善を加えながら、より居心地のいい部屋を作っていきたいと思っています。
次回からしばらくの間、この部屋についていろいろ書いていきます。