(680)京都のホテル「TSUGU」宿泊体験記

先日、二年ぶりに京都を訪れました。今回はホテル「TSUGU Kyoto Sanjo the share hotels」の宿泊体験記をお届けします。
■条件は「京都の中心で一泊3万以内の気の利いたホテル」
まずはホテル選びの経緯からお話しましょう。
今回の訪問にあたっては、以前宿泊した「nol kyoto sanjo」を最初にチェックしました。
しかし、近年ますます増加するインバウンド観光客の影響か、この記事を書いたときよりも宿泊費が高くなっていて予算と折り合いがつかず、他の宿を探すことになったのです。
宿探しの条件は前回の「nol kyoto sanjo」を選んだときとほぼ同じ。
- 【内装】ベタな「ホテル」とはちがう気の利いたインテリア
- 【設備】ゆっくり浸かれる浴槽ありのお風呂
- 【宿泊日程】夫婦二人で一泊(素泊まり)
- 【予算】二人あわせて一泊30,000円くらいまで
- 【立地】京都の中心で交通の便が良い場所
探したのはおよそ二カ月前でしたが、すでに予約で埋まっているホテルも多く、苦戦する中なんとか条件に合ったのが「TSUGU」でした。

こちらはさまざまなリノベーションを手がける株式会社リビタが全国に展開するホテルブランド「THE SHARE HOTELS」のひとつ。以前、金沢を旅した際にこのグループの「KUMU」の前を通りかかったことがあり、そのときに気になって調べて以来、京都のホテルもブックマークしていました。

「TSUGU」が位置するのは烏丸御池から徒歩5分ほどという京都の中心。「nol kyoto sanjo」のワンブロック隣にあたります。立地としては申し分ありません。
部屋のグレードはこんな感じ。

実は、このホテル、建物の一部が「1914年築の近代建築(登録有形文化財)を受け継ぐリノベーションホテル」(公式サイトより引用)でもあり、その建物内に泊まれる「ジュニアスイート」もあるのですが、僕らが宿を検討したときにはすでに予約で埋まってしまっていました(スイートなのでまちがいなく予算オーバーではありますが)。
夫婦二人で「ロフト4」や「ドミトリー」を選ぶ必要はないので写真中段の「スタンダード」からの選択となりましたが、広々とベッドを使えるツインで、小上がりよりもソファを選んで「スタンダード3/4」を予約することにしました。
価格は大人2名の素泊まりで「27,540円」(別途に宿泊税400円)。

「3万」という予算に無事に収まりました。なお、前掲の「nol kyoto sanjo」で泊まった部屋は同じ日程だと約4万円でした。この差額の意味についてはのちほど考察したいと思います。
■歴史的建造物を活かしたインパクト大な外観
さて、宿泊当日。

日も暮れてからの京都到着となりました。

夜の街でもインパクトのある外観は目印としては申し分ありません。

先述のとおり、この建物は1914年に建てられた「日本生命京都三条ビル」だそうで、新しい建物にはない威厳のようなものがビシビシ感じられます。この中に泊まれるなら予算オーバーでも宿泊してみたいですね。

エントランスはこのわきを通った先にある新しいほうの建物の中。

インテリアは躯体部分もところどころ露わになったラフなスタイル。

カフェやアパレルが併設されているのも今っぽいです。

天井から吊り下げられた照明は、液晶が組み込まれた風変わりなスタイルでした。
■とにかく大きなソファでリラックスできるのがうれしい
では、お部屋へまいりましょう。

ドアを開けてみると、

躯体あらわしの天井と白の壁を基調にしたインテリア。スタイルとしてはシンプルモダンとでも言いましょうか。

いわゆるホテル的な余計な装飾がない素っ気なさがかえって好印象。

露出配管の天井照明や、

ベッドのわきの壁に張られた合板など、いかにもホテル的な印象をうまく回避して個性を出しているように感じられました。

個人的にいちばん気に入ったのがこのソファ。3人で宿泊した際にはベッドとして使えることもあり、ソファというには広すぎるサイズなのですが、2人で泊まるとこれが自由に使える空間になるのが最高に快適なのです。

大胆に斜めに寝そべれば、167cmの僕ではどんなにがんばっても足先が届かない広々とした空間。奥行きも十分なので、二人でも両端に寝転がっても真ん中に適度なスペースが残り、窮屈さは微塵もないのが素晴らしいです。
この部屋は広さ24平米なのでツインとしては一般的なサイズなのですが、このベッドがあるおかげでふつうのホテルよりもぐっと広く感じられました。
■シンプルデザインの水回りは使い心地も快適
一方、水回りはというと、

部屋の入口のすぐ横、姿見を兼ねた大きな鏡のスライドドアの向こうにまとめられています。

洗面と脱衣所を兼ねたコンパクトなスペースですが、3点ユニットではないのでストレスはありません。
右手のガラスドアの向こうには、

グレーを基調にしたユニットバス。しっかり浸かれる浴槽があるのは僕ら夫婦にとっては大事なポイント。旅で疲れた体には本当にありがたいです。

ちなみに、この床パネル、うちの山小屋の離れにあるシャワーブースと同じだったので、ミラタップ(旧サンワカンパニー)のユニットバスだとわかりました。たぶん、マンションリフォーム用の「ノウム(Novum)」かな。

トイレも独立しているので気兼ねなく使えます。

背面にはモルタルと白ペンキの切り替えでアクセント。

洗面スペースは鏡も広く、ムダのないデザインで使いやすいと思います。

洗面ボウルはイタリアの「SCARABEO」社の「テオレマ」(これまたミラタップ扱い)で、うちのマンションでも採用したことのあるものでした。このシリーズはリーズナブルでオーソドックスなのでおすすめです。
■ふつうのホテルとくらべてちょっぴり不便なところもある

広々としたソファと独立式の水回り。なのに、ホテルとしては平均的な広さとなると、当然、犠牲にしているものもあります。
その代表がクローゼット。一般的なホテルにはハンガーポールのついた荷物置き場を兼ねたクローゼットがありますが、このホテルにはそれがありません。
代わりに室内入ってすぐの壁に金属製のレールがあり、そこにハンガーはかけられます。撮影し忘れてしまったので、鏡に映り込んだ画像で失礼します。

クローゼットにくらべると簡易的で、荷物を置く専用の場所もありません。個人的には困らなかったのですが、気になる人はいるでしょうね。

自分としては、やや不自由さを感じたのがベッドサイドでした。

パッと見てお気づきになられた方もいるかもしれませんが、ベッドサイドランプとコンセントが向かって右側にしかないのです。

左側のベッドでは、就寝前に小さな灯りで本を読んだり、枕元でスマホを充電したりといった当たり前のことができないのは不便でした。

しかも、ヘッドボードも薄いので、眼鏡民の僕はアクロバティックに置くはめに。せめて小物が置けるちょっとしたスペースくらいは欲しかったなと思いました。

また、冷蔵庫もかなりミニマムで、一般的なホテルの冷蔵庫よりもさらに横幅が狭いサイズだと思います。夏場にいろいろ買い込んでしまっておくには苦しいサイズでしょう。
しかし、これらの欠点は標準的なホテルよりもゆったりした居室スペースや水回りとトレードオフ。個人的には「ソファが広くてリラックスして過ごせる」ことや「水回りが独立式で浴槽がしっかり確保できている」ことのプラス面を評価すれば、目をつぶることのできるレベルだと感じました。
■特筆すべきは「シェアスペース」の充実ぶり
というのも、このホテルには、「THE SHARE HOTELS」のブランド名どおり「シェアスペース」が充実しているというメリットがあるからです。

フロア案内によると、三階にはランドリー、四階にはリビングとキッチンがあります。

こちらがグリーンとレッドがサイバーな雰囲気を醸し出すランドリー。僕らは一泊だったので使いませんでしたが、洗濯ができると連泊勢は助かるでしょうね。

目を引くのは四階のリビング&キッチン。

サインの記されたガラスのドアを開けると、

左手にはゆったりとしたリビングスペース。

窓からは1914年に造られた建造物の円錐屋根も眺めることができます。

一方、リビングの反対側にはダイニングテーブルとキッチンが。

横長で余裕たっぷりの空間です。

トースターや電子レンジもありますから、街で買ってきた食べ物をゆっくり楽しむこともできそうです。
なお、冒頭にも触れた「nol kyoto sanjo」では、

それぞれの部屋の中にミニキッチンが設けられており(引き出し内には食器やIHコンロも完備)、

部屋の隅には洗濯機もあってこれらの機能が一室で完結するように設計されていました。
これはこれでもちろん便利なのですが、室内を広くして設備を設けなければならないぶん、価格に跳ね返ってきます。
「nol kyoto sanjo」の部屋が40平米で、「TSUGU」は24平米。今回、両ホテルを比較したところ宿泊価格に1万円強の差があったのは、この広さと設備の違いが大きいでしょう(そのほか、水回りのグレード差もあります)。
もろもろが室内で完結することに重きを置いて差額を払うか、シェアスペースを活用して宿泊費を抑えるか――優劣で考えるよりも、泊まる人それぞれが自分の価値観に照らし合わせて選べばよいと思います。
個人的な感想を申し上げれば、「一泊ならちょっと贅沢して「nol kyoto sanjo」でもいいけれど、複数泊なら予算を考慮して「TSUGU」にするかな」という感じ。
ちなみに、妻に感想を聞いたところ、

とのことでした。

限られた空間に設備を詰め込むことで狭苦しい印象を与えがちなホテルという形態において、「シェアスペース」を充実させることで宿泊価格を抑えつつ過ごしやすい空間を創るというのが「THE SHARE HOTELS」グループのメソッドなのだと感じました。機会があれば金沢の系列ホテルにも宿泊してみたいです。

「TSUGU」はリーズナブルにミニマムで快適な滞在ができる良質なホテルでありました。