(704)キッチンはリビングダイニングと同じ空間にあるべきか否か
前回、山小屋のリビングダイニングに置いた椅子の数々をご紹介しました。
(703)山小屋にはちょっと低めの椅子(中座椅子)をいろいろ集めた
この部屋には小さな食卓を囲むダイニングスペースとキッチンが併設されています。
入居者さんをはじめ、さまざまな方とお話していると「キッチンはリビングダイニングと同じ空間にあったほうがいいのかどうか」という問題がよく話題にのぼります。
この種の問いに絶対の正解はありませんが、同じ空間にした場合と分けた場合とでそれぞれにメリット&デメリットがあるのは確かなので、個別の物件の事情や自分の好みも考慮したうえで、どちらがいいかを判断すればいいと思います。今回は、僕が管理しているいくつかの物件を具体例にしながら、そのメリット&デメリットを考えてみます。
■キッチンとリビングが一体だと料理の精神的なハードルが低くなる
では、前回ご紹介した山小屋の例からはじめましょう。
もともとただの和室だったこの部屋にキッチンを移転したのが2020年のこと。
押し入れをつぶして業務用キッチンのシンクやコンロを設置し、

対面に作業スペースとして使えるキッチンカウンターを置きました。

八畳間のスペースの大半は余っていたので小さなダイニングスペースを設けました。これによってキッチンとダイニングが一体の空間ができたわけです。
これが想像していた以上に快適でした。

かつて家の北側の隅にあった古い独立型のキッチンは湿気っぽくてうすら寒く、そこに行くにも寒い廊下を通り抜けねばなりませんでした。料理を運ぶのだって一苦労です。初春や晩秋のような寒さの厳しい季節にはキッチンまで行く気にならず、レンチンで食べられるインスタント食品で済ませるみたいなこともよくありました。

しかし、リビングと同じ場所に移転したおかげでキッチンがつねに暖かい空間になったのが幸いし、料理が気軽にできるようになったのです。

寒さの厳しい季節には滞在時間の大半をこの部屋で過ごすことになり、山小屋での暮らしがぐっと快適になりました。今まで何度もリノベーションをやってきましたが、生活がこれだけ劇的に改善されたことはなかったのではないかと言えるほどです。

さらに、これは一般的によく言われるポイントですが、ダイニングがキッチンに隣接していると料理しながら食卓のおしゃべりの輪に入ることもできるのもメリットです。
■キッチンにいながら食卓の雰囲気を共有できる
山小屋で体感したメリットを踏まえておこなったのが熱海のマンションのリフォームです。

ダイニングテーブルをキッチンカウンターとならべるように配置し、奥に見えるキッチンと連続性を感じさせるレイアウトにしました。

キッチンはもともとあった古い壁付けのものをリメイクし、奥にコンロ台を追加してL字型キッチンに。冷蔵庫を挟んで山小屋と同じ業務用キッチンのカウンターを設置しています。

ダイニングスペースから手を伸ばせばカウンターに手が届く距離。

話しながらカウンターでコーヒーを淹れたりもできます。
これくらい近いとキッチンにいても常に食卓の雰囲気を共有することができ、ゲストと過ごすには最適です。
間取りをごらんください。

赤で囲った部分がキッチンと食卓。
かなりコンパクトにまとめたおかげで、リビングに何もないスペースを大きく確保することができました。

右手にチラ見えしているのがダイニングテーブルです。空間にメリハリが生まれ、部屋を広く感じられるのがおわかりいただけるでしょう。

二面の壁とカウンターに囲まれた食卓には心地よい「こもり感」があり、狭いことがあまり気になりません。
何度も書いてきたとおり、この熱海の部屋は僕が管理する世田谷のマンションの入居者さんならだれでも宿泊できるスペースなのですが、広々として使いやすいとおっしゃってくださる方が多いです。
■キッチンとリビングを一体にするリフォームはコストが高い
では、世田谷のマンションの事例もごらんいただきましょう。
まずはうちのマンションの間取り(リフォーム前)から。

広さはわずか30平米にもかかわらず、キッチン、六畳のリビング、三畳の寝室というふうに細かく部屋が区切られています。いかにも築古の間取り、といった感じ。
最近では、なるべく部屋の仕切りをなくして広いワンルームとしてスペースを使うのがトレンドで、うちのマンションでもリビングと寝室は下がり壁とアコーディオンカーテンは撤去して、広く使えるようにリフォームしていますが、キッチンとリビングはつなげずに別々のままにしています。

写真手前がひと続きになったリビング(左)と寝室(右)で、もともとあった引戸が奥のキッチンと手前のリビングを区切っています。
主な理由はコストで、リフォームでキッチンをリビング寄りに動かそうとすると、キッチンを新調する費用に加えて水道やガスの配管工事にもお金がかかり、コストが跳ね上がってしまうのです。

この部屋では予算の都合で既存のキッチンを残すことにしたので、キッチンとリビングを一体にするようなレイアウトをめざすことはできませんでした。
とはいえ、うちのマンションでもリビングとキッチンをひと続きで使えるように試みたことはあります。

それがこのL字型キッチンを設置した部屋で、L字の一辺がリビングに接しています。

リビング側に食卓を置けば、ダイニングとキッチンをひと続きに使うことができます。

間仕切り戸は設置してあるので、他の部屋と同じくキッチンとリビングを分けて暮らすことも可能となっていますが、現在このお部屋で暮らしている入居者さんのお話では「この引戸はほとんど閉めずに開けたままにしている」とのことでしたから、「キッチンとリビングダイニングを一体の空間」として使っているのでしょう。
ただ、こうしたリフォームをおこなうと費用がかなりかかってしまうのがネックで、既存のキッチンを残したケースとくらべるとその差は歴然。ご興味ある方は過去の記事をごらんください。
■独立キッチンには調理の臭いがリビングに入り込まないメリットが
では、キッチンがリビングと分かれていることのメリットはどうでしょうか?

僕自身が暮らす部屋のキッチンも引戸でリビングと隔てられていますが、自分的にはこれでよかったと思っています。
その理由はキッチンで発生した料理の臭いがリビングに入り込まないからです。

このブログでもたびたび書いてきましたが、僕の趣味は鉄のフライパンで厚切り肉を焼くこと。
これをやると、レンジフードのキャパを超える煙が出るので、翌日か翌々日くらいまでキッチンに焼肉屋のような臭いが残ります。もしリビングとキッチンが同じ部屋だったら、この臭いがリビングにまで付着することになるでしょう。

リビングでは物干しワイヤーで部屋干しすることもありますし、上着やセーターなどをハンガーにかけて吊るしておくこともあります。これらに肉を焼いたときの煙の臭いが付くと思うとやっぱりイヤです。

思えば、山小屋も熱海のマンションも週末に過ごすウィークエンドハウスであり、定住する場所ではありません。キッチンとリビングダイニングが同じ空間にあっても、臭いの問題が気になるほどの料理をすることはほとんどないので気にならなかったのでしょう。
裏を返せば、僕にとっては自宅のキッチンとリビングが分かれていることは必須の条件なのです。
もうひとつ、「キッチンとリビングを分けるメリット」として入居者さんから聞いた話を紹介すると、「汚れた/散らかったキッチンをお客さんに見られないで済む」ことが挙げられます。

キッチンって、いつもきれいに保つのは大変ですよね。特にお客さんが食事に来ようものなら、準備に使った調理器具や使い終わった食器などがあふれて、人に見せられない状態になることだってあるかもしれません。
そんなとき、独立したキッチンならゴチャゴチャを人目に触れさせないで済みます。僕自身はあまり意識したことがなかったのですが、たしかにこれもメリットと言えるでしょうね。
さらに、うちのマンションの間取り特有のデメリットとしては、

キッチンが玄関と隔てられずにゆるやかにつながっているため、キッチンにいると夏の暑さや冬の冷気の影響をもろに受けることが挙げられます。個人的には、真夏の昼や真冬の夜にキッチンに立つのは多少の決意が必要になる印象です。
■どちらかといえば、同じ空間にするメリットのほうがやや勝っているか
最後にあらためて「キッチンをリビングと同じ空間に置く」メリットとデメリットをまとめると、
【メリット】食卓との距離が近いので料理がしやすく、キッチンとリビングに一体感があり、暖房効率もよい
【デメリット】調理中の臭いがリビングに付いたり、キッチンがゲストの目に入りやすく、リフォーム費用もかさむ
といった感じになるでしょうか。
一長一短ではありますが、個人的な実感に最近のライフスタイルを加味すれば、キッチンをリビングダイニングと同じ空間にするメリットのほうがやや勝っているように感じます。ただ、僕のようにそれなりに料理が好きで自炊頻度の高い人は臭いの問題も無視できないはず。
次回は、以上の議論に関係して、マレーシア(!?)の事例をヒントに(私的な)理想のキッチンについて妄想してみようと思います。

















