(717)【日刊Sumai再録】9坪ハウス「スミレアオイハウス」宿泊体験記
今回は「日刊Sumai」の連載の再録記事をお届けします。東京三鷹にある「スミレアオイハウス」に宿泊した際の体験記で、タイトルは「宿になった9坪ハウス「スミレアオイハウス」を妻と一緒に満喫してみた」(2020年10月24日公開)。
再録にあたって導入部分などにのみ若干手を入れましたが、施設内の情報などは公開当時のままであることをご了承ください。最新情報については公式ページにてご確認くださいませ。
なお、当時、合わせて公開されたもう一本の記事については「ESSE online」で公開中ですので、あわせてお読みいただければ幸いです。
【ESSE online】「9坪ハウス」に4人家族+猫2匹で20年住んだ感想は?民泊できる間取り図面も紹介
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「宿になった9坪ハウス「スミレアオイハウス」を妻と一緒に満喫してみた」
今回、訪れたのは以前から気になっていた宿「スミレアオイハウス」です。日本建築の歴史に残る「最小限住居」(建築家・増沢洵さんが設計)を原型に建てられたデザイナー住宅で、「9坪ハウス」が商品化されるきっかけにもなった建築です。
もともとは家族が暮らすふつうの住宅でしたが、築21年目を迎えて民泊として生まれ変わりました。そんな「スミレアオイハウス」の宿泊体験記をお届けいたします。
■武蔵境駅から徒歩20分の静かな環境
降り立ったのは武蔵境駅。

新宿から約20分、三鷹のお隣の駅です。駅周辺を歩いてみると、生活に必要なお店はすべてそろっていて暮らしやすそうでありながら、ゆったりとした並木道もあったりして環境は良さそうです。

目的地である「スミレアオイハウス」までは歩いておよそ20分ほど。駅からは少々遠いですが、そのぶん静かでのんびりとした雰囲気なのはうれしいです。

なんといっても目を引くのは、正面の3分の2を覆う4面のガラス窓でしょう。外から丸見えのリビングというのは大胆に感じる設計ですが、箱をストンと置いたようなシンプルな外観なので、とんがった目立ち方はしていません。ちなみに、玄関は向かって左側にあります。

玄関ドアはミニマムサイズですが、正面のガラス戸も開けられるので、これで十分なのでしょう。
■リビングは窓と吹き抜けで開放感抜群
9坪ハウスという呼び名どおり、「スミレアオイハウス」の建坪はたった9坪、1フロアの広さはおよそ30平米しかありません。間取り図をごらんください。

実を言うと、僕が妻と暮らしている世田谷のマンションの広さが、この1階部分と同じ9坪(30平米)なのです。
「スミレアオイハウス」には2階があるので、延床面積としては我が家より広いのですが、生活に必要な水回りのそろった1階部分の広さは我が家とほぼ同じ。
どんなふうに感じるか興味津々だったのですが、一歩足を踏み入れて広々とした空間に驚きました。

外観の特徴でもある大きな窓と吹き抜けのおかげで、リビングは実際の面積よりもずっと広く感じます。とても我が家のリビングと同じ6畳とは思えん……。

中央の丸テーブルを囲むように4脚のイスが置かれていますが、狭苦しさはまったくありません。イスがすべて3本脚で統一されているのも素敵です。お茶をいれて丸テーブルに腰かけると、まるでカフェにでもいるようなゆったりとした時間が流れます。

こちらは2階。吹き抜けがあるため2階の床面積はわずか6坪ほどしかありませんが、壁で仕切られていないのでやはり狭さを感じさせません。天井と窓がもたらす開放感こそ、この家のいちばんの特徴だと思います。
コロナ禍で「おうち時間」が長くなる昨今ですが、こんな家なら在宅での仕事も苦にならないかもしれませんね。
■造作家具から間接照明まで細部に気配りが感じられる
面積ほど狭さを感じさせないのは、随所に造り付けの収納が備えられており、スペースがムダなく活用されているからでもあります。

こちらはキッチン。カウンターの左側には引出しもあります。

余計な取っ手などのないシンプルなデザインが、すっきりとした印象を与えます。

手がけたのは、この家全体のインテリアデザインを担当した小泉誠さん。先ほどご紹介した丸テーブルやイスも、小泉さんがデザインしたものだそうです。

造作といえば、洗面の下に洗濯機がコンパクトに収められているのも注目です。右の穴は洗濯物を入れるためのもので、鏡の裏にはキャビネット。洗濯機まわりに漂いがちな生活感を感じさせない工夫が詰まっています。

間接照明が効果的に使われているのも印象的でした。

畳が敷かれた部屋の小さな床の間のようなスペースや、石のタイルが張られた玄関など、必要なところを控えめに照らし出してくれます。細部に気配りの感じられる丁寧な造りに感動しました。
■木材の経年変化もみどころのひとつ
築21年を迎えての経年変化も「スミレアオイハウス」の魅力のひとつ。

無垢のパイン材を用いた床は20年の時を経て、古民家のような風格を感じさせる床に変化しました。完成直後の様子を写真に収めた冊子を拝見したのですが、当時の床はまっさらで白に近い色味の床でした。

これはこれできれいですが、日光による日焼けや生活の傷や汚れで変化した後の姿には「風格」とも呼べるような味わいが感じられます。たった20年余りでこんなに変わるとは驚きました。
よくパイン材は柔らかいので床に向かないと言われますが、経年変化を積極的に楽しめる人にはむしろおすすめなのかもしれません。

もともとは白っぽかった柱もこのとおり。美しい飴色に変化しています。
「木の家」を建ててみたいという方は、時間を経てどう変わっていくか気になるところでしょう。「スミレアオイハウス」を訪れてみれば、その答えを自分の目で確かめることができます。
■リビングでゆっくりテイクアウトやお茶を楽しむ
名作建築を原型とした建物ながら、「スミレアオイハウス」にはいわゆるデザイナー住宅にありがちな気取りはありません。21年の時を経たこともあってか、初めてでも落ち着いて過ごせる雰囲気が漂います。いい意味で暮らしと地続きの宿と言えるでしょう。
宿泊場所に「ピカピカのインテリア」や「エキゾチズム」を求める人には向きませんが、いつもとはちがう家でちがう日常を体験してみたい人には打ってつけです。

コロナ禍ということもあり、僕らは外食を避け、テイクアウトで夕食を取ることに。訪れたのは老舗のお肉屋さん「マイスタームラカミ」。精肉をはじめ、ハムやソーセージ、コロッケなどの揚げ物、弁当やケーキまでラインナップは豊富です。

ハラミ焼肉丼と鴨肉とレバーを買いましたが、どちらも「さすがお肉屋さん」と唸らせられる味でした。

食後には、高架下にあるカフェ「オンド(Ond)」で買ったコーヒーとケーキをいただきました。カウンターつきのキッチンで妻がコーヒーをいれてくれました。

聞けば、このポットも小泉さんがデザインしたものだそうです。

こんな家なら、ステイホームも楽しいです。
■パンとコーヒーで優雅な朝のひとときを

寝室として使ったのはリビング横の畳敷きのお部屋。ほとんど仕切りのない「スミレアオイハウス」で唯一仕切れるのがこの部屋です。

あえて引戸を使わず、朝陽で目覚めるのも気持ちいいです。

障子から柔らかい光が入ってきて、自然と目が覚めるはず。

朝食は「スミレアオイハウス」を管理する萩原葵さんに教えていただいたパン屋さん「パサージュ・ア・ニヴォ」で。かつて萩原さん一家が使用していたという食器でいただきました。

優雅な朝のひとときです。

チェックアウトは12時なので、午前中はのんびり過ごしました。

帰りは、三鷹を経由して玉川上水沿いを散歩して吉祥寺まで歩きました。この機会に、多摩エリアを満喫してみるのもいいですね。
●9坪の宿 スミレアオイハウス/東京・三鷹市にある建坪9坪の一棟貸の宿。


















