(389)ポンプを撤去して水道直結工事をして本当によかった
前回、前々回と、世田谷のマンションで起きた水道トラブルの話をいたしました。
なぜ熱海でのDIYにまつわる話を中断してまで古い記事を持ち出したかというと、最近、水道直結工事をおこない、件のバルブとポンプから解放されたからであります。
■停電時に使用できないのが水道ポンプの最大の弱点
「直結工事?何を言ってるかわからん」と思う方も多いでしょう。前回の図で、あらためてマンションの水道の仕組みをおさらいしておきましょう。
公共の水道管から水量調節のバルブを経由して貯水槽に水を貯め、それを給水ポンプによって各戸に送る仕組みです。
一般的な戸建て住宅は公共の水道管から宅内に直接水道を引くことができるのに、マンションではなぜそんな回り道のような給水をしなければならないかというと、水道管の水圧だけでは、二階や三階、それ以上の高層階に水を届けることが難しかったからです。
そのため、ポンプによって加圧・増圧し、各戸に水を届けていたわけです。
しかし。
電力で動く水道ポンプは災害などの停電時には動かなくなってしまいます。本来、電力とは独立に使用できるはずの水道がポンプを利用している集合住宅では停電時に使用できないというのは困ったことです。
今年の6月、季節外れの猛暑により電力供給がひっ迫し「ひょっとして停電も?」というニュースが世間をにぎわせたのは記憶に新しいところで、震災などの非常時に水道が使えるようにしておくことはこれからの時代にはますます重要になると思います。
そんななかリサーチしてみると最近の公共の水道管は昔よりも水圧が強くなっていて、以前は直結が難しかったマンションでもそのまま上階に水を送ることができると知りました。
いつもお世話になっている現場監督のKさんに聞くと「うちの会社のビルも最近、直結工事をしましたよ」という話が。ならば、うちのマンションでも直結できるかもしれないと考えて現地調査してもらうことになりました。
現地調査の結果はまったく問題なしということでお願いすることにしました。
■水道直結工事にあたっての不安やハードル
当初、心配していたのが、直結工事によって水圧が弱まり、シャワーなどを使用する際に使いにくくなってしまうことでした。
賃貸マンションの内見に立ち会っていると、シャワーの水圧にこだわる方は一定数いらっしゃるので、ある日急に水圧が下がると不満を感じられる方がいるかもしれないと思ったのです。
しかし、聞くところによると工事前よりもむしろ水圧が強まるとのことなので、その心配はなくなりました。
ですが、水圧が強まるとそれはそれで従来よりも水道管に負荷がかかることになるので、漏水が起こりやすくなる可能性は否定できず不安はあるのですが、水圧が強まる度合いはそこまで大きくないのでおそらく大丈夫だろうという水道屋さんの見立てを信じることにしました。
さて、最後のハードルは工事費用です。見積もりはというと…
古いポンプの撤去費用・水道管埋設後の舗装なども含めて「140万円」でした。
「ああ、また100万円を超える出費か……」とは思ったものの、前回、水道ポンプを交換したときにも同じくらいの金額がかかったことを考えれば、安いとも思いました。
■それでも、直結工事にするメリットは大きい
一般的に水道ポンプの寿命は10年ほどと言われるようです。今後10年、20年とマンションを維持していくと定期的に費用がかかることになります。
ポンプは二連式になっており、ひとつが故障してももう片方が動作することで、致命的な事態を避ける仕組みになっていて、うちの場合のように片方が故障すると、そのタイミングで交換を検討せねばならなくなるのです。
それにくらべて直結工事は一度きりの工事ですから長い目で見るとコストパフォーマンスに優れているのは明白です。いつポンプが止まるかとヒヤヒヤしないで済むのもありがたいです。
これまでは貯水槽の清掃と衛生検査を毎年おこなわねばならず、その費用もかかっていました。
以前、貯水槽の清掃をするはずの業者が中で泳いだ挙句、その動画をSNSに挙げて見事に燃えた騒動などもメディアで報じられたりしましたが、なんだかんだで衛生的なリスクだってあるのは事実です。心配性な僕は、誰かが貯水槽のドアをこじ開けてイタズラしたら大変なことになるな、なんて思ったこともあります。直結工事をすることで、そういう心配から自由になれるのもメリットと言えるでしょう。
ちなみに、うちのマンションの場合、水道ポンプの手前に小さいクルマが停車できるくらいのスペースがあり、本来ならば駐車場として貸し出したいくらいなのですが、横には貯水タンクのトビラ、背後に水道ポンプという状況では、不測の事態が発生した際にクルマをどかしてメンテナンスせねばならず、とても他人様に貸すことはできませんでした。ポンプやタンクがなくなればこのスペースを活用することができるでしょう。
先ほどお話した停電時にも水道を使用することができるという点も含め、水道管を直結にするメリットはたくさんあると思います。
■平日の午後に3時間ほどの断水を経て無事に工事完了
これはやるしかないということで、数年前と同様、妻にまでお金を借りて直結工事をおこなうことと相成りました。
マンションのリノベーションとはちがい、工事をやると決めたら僕が考えたり関わったりする部分は少なく、ほとんど業者さんにお任せの状態だったのですが、唯一気をつかったのは直結工事当日の断水でした。
ポンプから水道管を切り替える工事である以上、一時的な断水は避けられません。断水時間はおよそ3時間。最近は在宅ワークも普及し、平日でも自宅で作業している方も多く、きちんとしたアナウンスが必要でした。
もちろん工事業者さんからお知らせをポスティングしてくれるのですが、チラシと一緒に捨てられてしまったりして見過ごされてしまう可能性も高いので、LINEやショートメッセージでの周知にも努めました。
当日は、折悪く熱海の窓の交換工事とバッティングしてしまい、やむなく大家不在での工事となりましたが、ほぼほぼ予定どおりの断水で済んでホッとしました。
心配していた水圧の件もほぼ問題なく、これまでと同じような使用感を維持しつつ、とくに漏水トラブルも起こっていません。おそらく入居者さん的には、一時的に断水があった以外、何も変わっていないと認識していることでしょう。
しかし、かつてバルブとポンプに苦しめられた大家的には、バルブが開いているときにだけ聞こえる「シュー」という音や、ポンプが作動しているときの「ウィーン」という音を聞くことがなくなり、不安や心配から解放された気分であります。
バルブやポンプのメンテナンスが不要になった今、この空きスペースを自由に使うことができます。手っ取り早くお金を生み出してくれるのは駐車場としての貸し出しですが、他に何か面白いアイデアがあればと思い、現在は思案している最中です。進展あれば、また記事にしたいと思います。