(465)エアコンの故障でクーラーなしの別荘で夏を過ごす
今回はひさしぶりに山小屋の話。
東京とはいえ山奥に位置し、冷涼な気候の山小屋ですが、ときどきやってくる酷暑に備えていちおうエアコンは設置しています。
もともと床の間だった狭苦しい場所に取り付けられ、毎年数えるほどしか稼働しないため存在感は薄め。
すぐ真下に食器棚まで設置されているものの、スイッチオンすればちゃんと部屋を冷やしてくれていました。
2006年の設置以来、猛暑には活躍していたのですが、2019年の故障と修理を経て、今年の春に再び故障しました。業者さんにも「次、壊れたら修理は損かもしれない」と言われてましたし、17年ももったからそろそろ潮時。
すぐに交換工事を依頼すれば今年の夏に間に合うのはわかっていたのですが、ふとこんな考えが浮かんでしまいました。
「エアコンなしでひと夏過ごしてみたら、どんな感じだろう」と。
思えば、僕が子どもの頃にはエアコンなんて一台もありませんでしたが、夏休みもそれなりに過ごせていました。まあ、年々気温は上昇の一途をたどっていますから一概に比較することはできませんが、物は試し。もしガマンできないほどの暑さであれば、ゲスト用の離れに移動すればエアコンは使用できますし、チャレンジする価値はありそうです。令和の猛暑にエアコンなしの滞在は一体どうなるのか、レポートしてみます。
■前提:そこそこ標高もあり、日陰で冷涼な周辺環境
まず、山小屋の環境を確認しておきましょう。
場所は東京西部の山奥。標高は300メートル強です。僕がふだん暮らす世田谷よりも270メートルほど高い計算になります。
一般的に標高100メートルごとに0.6℃下がると言われますから、これだけで1.6℃ほど下がる計算になります。
家の裏には小川が流れており、水辺は涼しい空気が漂います。川の向こうには竹林が生い茂っていて、これが天然のグリーンカーテンになり、家にはほとんど日光が当たりません。おかげで冬はびっくりするほど寒いのですが、夏の暑さを和らげる環境はかなり整っているといえます。
■夜の山はしっかりと気温が下がるので窓を開ければ快適
今夏はごぞんじのとおりの記録的な猛暑。7月から猛暑日連発で毎日のように35°を超える天気予報でした。クーラーなしの生活を実験するにはうってつけすぎる気候といえましょう。
僕ら夫婦が山小屋を訪れたのも猛暑日でした。
我が家は夜中のクルマ移動が基本なので、到着は日付が変わるころ。クルマから降りると、外気は湿気を含んでいるもののひんやり涼やか。都心の暑さとは大違いです。
ただし、カギを開けて家に入ると、ずっと閉め切ったままだった室内にはじんわり暑さが漂います。いつもならエアコンで除湿をかけるところですが、それはできませんから窓を開けて換気することに。
窓を開けると外の涼しい空気が入ってくるので、窓際のソファにサーキュレーターを置き、涼しい空気が室内に行きわたるように工夫してみました。エアコンのようにさらりと涼しくはなりませんが、ふつうに過ごせる室温になりました。
土と緑が多い山奥では夜にしっかり気温が下がるのが、コンクリートで囲まれた都心との決定的な違いです。期待していたとおり、夜の山はエアコンなしでもまったく問題ありませんでした。
窓を開けたまま寝ると体が冷えてしまいそうな気がしたので、眠るときには窓を閉めてサーキュレーターも止めました。それでも朝までぐっすり。都心にいるときはうっすらエアコンをかけて寝ることが多いのですが、それとくらべるとぐっと快適な睡眠です。
■昼過ぎから夕方まではさすがにじんわりと暑い
朝9時。東京の天気予報を見ると、今日も35℃オーバーの暑い日になりそうだとか。
外はギラギラと太陽が照り付けていますが、窓は日当たりの悪い小川に面していますから、昨夜と同様、窓を開けてサーキュレーターを動かすと涼しい空気が入ってきます。
冷たい飲み物なども飲みながら、こまめに体を冷やして昼の暑さに備えます。
正午を過ぎたあたりから、窓を開けてサーキュレーターを回していても、室内にうっすら暑さが漂うようになってきました。もちろん、都心の殺人的な暑さにくらべれば全然ましですが、クーラーが使えるならそろそろ使いたいと思うくらいの暑さ。
山の家がこれだけ暑いということは、山を下りて市街地に出ると猛烈な暑さになると思われるので、ついつい出不精になりがち。世田谷から持ってきたおかずなどで昼ご飯を済ませると、食後ということもあり「暑いなー」とはっきり感じるほどに。
うすら暑い室内でグダグダしていてもしょうがないので、涼を取るのも兼ねて高圧洗浄機で庭のモルタル掃除。疲れるけれど水しぶきが気持ちいいです。作業後にシャワーを浴びてスッキリした気分のまま、扇風機を回して昼寝。気持ちよく眠れたものの、目覚めるとじっとり汗をかいていました。
時計は午後3時、一日でいちばん暑い時間です。東京都心は今日も37℃くらいまで上がったそうで、さすがの山小屋でもはっきりと暑さを感じます。暑がりではないうちの奥さんも「暑いね」とこぼすくらい。やっぱり、最近の日本の夏は異常ですね……。
ただ、換気したり冷たいものを飲んだりシャワーを浴びたりすればごまかせると考えれば、やはり山小屋はかなり涼しい環境なのはまちがいありません。なお、これが32~33℃くらいの夏日となると話は別で、エアコンなしでも換気だけで昼間もふつうに過ごせることを付け加えておきます。
■閉め切ってクーラーか、窓を開けて自然を受け入れるか――それが問題だ
さて、夕方になってヒグラシが盛んに鳴くころ、ようやく暑さも和らいできます。
窓から入ってくる空気も涼しくなってきて、徐々に心地よい室温に戻ってくるのがわかります。夜になると前日と同じく窓からの涼しい空気で快適に過ごすことができました。
かくして暑い一日が終わったのですが、僕が子どもの頃は夏休みってこんな感じだったな、と思い出しました。せっせと窓開けたり打ち水したりアイス食べたりして、暑さを和らげて過ごしていたんですよね。それが今ではエアコンのスイッチをオンするだけで、さらっと快適になって過ごせるのでやっぱりエアコンの力はすげえな、と実感しました。
で、クーラーなしの夏、どうなのよ?って話ですが、来年もこのままでもいいかというと、ちょっと微妙かな……。いや、夫婦二人で静かに過ごすだけならこれはこれでありかもしれないんですけど、お客さんを招いたり甥っ子家族が遊びに来たりして人数が増えると、暑さが増して耐えられなくなると思います。やっぱりエアコンの買い替えは必要だと思いました。
もうひとつ。エアコンなし生活の現実的なデメリットとして、外の涼しい空気を取り込もうとして窓を開けたままにしていると、外気に含まれた湿気も一緒に室内に取り込むことになり、部屋が全体的に湿気っぽくなることが挙げられます。
この問題については、これまで何度も考えてきましたし、僕の中でもいまひとつ正解が定まっていないところがあります。
上の記事でも書きましたが、単純に体感としての「快」を考えるなら、窓を閉め切ったまま冷房もしくは除湿が正解な気はします。ですが、窓を開けると虫の音や小川のせせらぎや草の匂いが室内に入ってくるのは、それはそれで風情があるなあと感じたのも事実です。
風鈴なんてのも窓開けないと意味がないですし。
ただ、我が家のような築50年オーバーの木造家屋では窓のサッシにもガタがきていて、網戸とサッシの間に細いスキマが開いてきたりしているので、夜の灯りに引き寄せられてて小さい虫なんかがどんどん室内に入ってきます。すると……
朝には床に無数のチビ虫の死骸が転がっていたりすることもあるわけで、なんといいますか、自然を楽しむことはそれに伴う「不快」も受け入れることなんだなあ、とあらためて実感した夏でした。