(520)【日刊Sumai再録】築古のトイレを間取りを変えずにリフォーム(後編)
前回、古い間取りをそのままにトイレをリニューアルすべく便器を選んだものの、ますます狭く感じてしまうことが発覚してしまいました。
今回は続きとなる「日刊Sumai」の再録記事をお届けします。公開時のタイトルは「タンクレストイレに交換してわかった!適切な便器のサイズ」(2019年3月13日公開)。狭いトイレ空間に収まる便器を探し、リフォームを完了させます。
なお、前回と同じく再録にあたって一部写真の差し替えをおこない、文章のおかしいところを訂正したことをお断りしておきます。また、5年前の記事ですので、文中の商品については現在は取り扱いがない可能性があることをご承知おきください。
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【タンクレストイレに交換してわかった!適切な便器のサイズ】
昭和サイズで狭かったうえに、温水洗浄便座を載せたおかげで狭さの限界を突破してしまった、わがマンションの旧式トイレ。
便座の先から壁までおよそ26センチという狭さを少しでも改善すべく、暖房便座のみのタンクレストイレ「アラウーノV」の導入を目論みました。が、それでもやや狭くなってしまうことがわかり、ショックを受けたのが前回のお話でした。
果たして古いトイレの間取りそのままに、トイレを新しくして少しでも広くすることはできるのでしょうか?
■業者さんの提案でよりコンパクトなトイレに
前回検討した「アラウーノV」を入れても、便座から壁までの距離は24センチ。
途方に暮れる僕に業者さんが提案してくれたのが、別のタイプのタンクレストイレでした。
「うちの会社で戸建て用に提供しているタンクレストイレなら、もう少しコンパクトになるかもしれません」
聞けば「ベーシアハーモJ」というビルダー仕様のトイレで、タンクレストイレとしては標準的なタイプ(温水洗浄便座も付属)とのこと。
サイズ感はというと、こんな感じ。
便座の先から壁までの長さは30センチ。おー、広くなった!
ちなみに、これまで検討した便器をならべてみると……
比べてみるとトイレのサイズってちがうものですね。既存のフラッシュバルブ式のトイレが思った以上にコンパクトだったことがわかります。
現在、世間的にもっともノーマルなのはタンク式トイレでしょうから、これをタンクレスに交換すれば5~10センチは広くなるといえるでしょう。うちの場合、現在の便座よりも4センチ広くなったとはいえ、一般的に快適と言われる40センチには遠く及びません。
でも、トイレそのものを広くしないかぎり、これが限界。この4センチでギリギリアウトな使用感が軽減されると期待します。
■機能を絞るから最安値になるとは限らない
しかし、気になるのが予算のこと。
前回、検討した「アラウーノV」は、温水洗浄便座なしで暖房便座のみという珍しいタイプでした。機能を絞ったからこそ、なんとか予算内に収まっていたのではないでしょうか。
ウォシュレット付きでコンパクトな「ベーシアハーモJ」はもっと高いのでは?予算が大幅にオーバーするとなればあきらめるしかありません。
恐る恐る価格を尋ねると、意外や意外、見積もり的にはほぼ同額でした。
理由はいくつかあります。
「アラウーノV」に対し、「ベーシアハーモJ」はよりオーソドックスなビルダー仕様のタイプ。数が出る量産品は値が下がるということだと思われます。僕のように素人考えで機能を絞って経費削減を目指すよりも、おとなしく標準的でポピュラーな型を導入するのが正解なときもあるようです。
また、大手メーカーの製品につきものの「掛け率」の問題もあるはずです。今回、比較検討した製品はメーカーが違います(TOTOとLIXIL)。施工会社は、それぞれに得意なメーカーとそうでないメーカーがあり、それによってリーズナブルに提供できる商品が異なってくるのです。
今回、うちでお願いしている会社が、TOTOよりもLIXILに強かったため、「ベーシアハーモJ」がリーズナブルに提供できたということではないでしょうか。
ともあれ、予算の問題が解決したのはうれしいこと。
これで、めでたく工事となりました。
■完成後の使用感は「少しは広くなったかな」
完成後の様子はこちら。
壁の古いタイルは塗装で汚れを隠し、床にはDIYで六角形のタイルを貼りました。
壁は腰の高さから上をダークブルーで塗装してもらい、シックな雰囲気に。見た目的には大満足で、清潔感も感じられる仕上がりです。
さて、肝心の便座の先から壁までの長さを測ると、
29.5センチでした。図面上の数値が30センチでしたから、これくらいの誤差は仕方ありませんね。
リノベーション前が26センチですから、3.5センチ広くなりました。実際に座ってみた感覚ですが、「少しは広くなったかな」と感じられるていどの結果だと思います。
いろいろと思い悩んだ結果としては、少々物足りない感じもありますが「間取りをそのままにトイレを新しくしたい」という目的はなんとか達成できました。
内見の際にはトイレの狭さをしっかり説明し、実際に座ってみてもらったりしてサイズを確認いただけるよう配慮しました。
幸い入居を決めてくださったのは比較的小柄なご夫婦で、「たしかに狭いですけど、私たちにはジャストサイズです」と言っていただけました。まあ、大家さんへのリップサービスもあるでしょうが、物件全体でご満足いただけたのだと思うことにします。
どんな物件でも欠点はありますから、それをできるかぎり改善し、至らなかった部分はしっかり事前にご理解いただくということは大切だなと思った次第です。
■で、結局いくらかかったの?~費用のまとめ
最後に、今回の工事でかかった費用をまとめましょう。
赤で囲った箇所が今回、タンクレストイレの設置に不可欠な工事部分。(それ以外は、壁の塗装や換気扇の交換などのプラスアルファの部分です。ただし、DIYでおこなったタイル施工は含みません)
注意したいのが、便器を新しくすると、配管の都合で床を上げたりする作業が必要になることが多く、その分の費用がかかること。やり直した床には何らかの床材を貼る必要があり、トイレの交換と言っても追加の費用はいろいろと発生します。
どこまでリフォームするかにもよりますが、雰囲気を一新するなら最低でも15万~20万くらいは必要と考えるべきでしょう。
我が家はもともとコンパクトなトイレが設置されていたこともあり苦戦を強いられましたが、タンク式のトイレなら、新しくすれば劇的に広くなると思います。狭いトイレにお困りの方は検討してみてもいいかもしれませんね。
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さて、以上の記事では割愛しましたが、トイレの間取りを変えずにそのままにしたことで別のメリットもありました。
それはふだんならばドアを付け替えるために壊してしまうブロック壁を残せたこと。
この写真だけ見ると、みすぼらしいようにも見えますが、白で塗装して照明やスイッチなどをレイアウトし、みちがえるように生まれ変わりました。
詳しくは過去の記事をどうぞ。
トイレ単体だけでいえば、手間をかけたわりにいまひとつ広くならない結果となりましたが、そのおかげで既存のブロック壁を活かした個性的な空間を造れたのでトライしたかいがあったと思っています。
次回はトイレの床に張ったタイルの話をいたします。