(569)築古マンションのボロい室内がリフォームで生まれ変わるまで
前回、リフォーム後のピカピカの室内をごらんいただきました。
今回は、リフォームにいたる道のりを振り返ってみたいと思います。
■リフォーム前はとにかく古くて汚い部屋だった
僕がマンションを引き継いだころ、10年をゆうに越える古株の入居者さんが数名いらっしゃいました。大家としては長く住んでいただけるのは大変ありがたいことですが、そういう方が退去したあとのお部屋というのはどうしようもなく汚れていることもありまして。以前、ご紹介した23年ぶりの空室なんてひどい状態でした。
この部屋ほどでないにせよ、今回の部屋もなかなかの状態でした。
まずはリフォーム前の間取りからごらんください。
前回ご紹介したリフォーム後の間取りとくらべてみれば、間取り自体は大していじっていないことがわかるはず。
では、玄関ドアを開けたところからどうぞ。
なんだか暗くてジメジメした雰囲気。
洗面には築古の雰囲気は漂うものの、背面のタイル、ノーマルな洗面ボウ、ミラーキャビネットなど、今見ると僕好みの構成です。うちのマンションは先代が中途半端なリフォームを施した際に一体型洗面台が導入された部屋も多いのですが、それとくらべれば古い洗面のほうが百倍かっこいいと思います。ただ、8年前の僕にはこれを上手に残してリフォームするという発想はまだなく、結局、すべて新しい設備と入れ替えになりました。
キッチンです。年季の入ったブロックキッチンと、油でベトベトで吸い込みの悪い換気扇。後付けの配管などがゴチャゴチャしているのも気になります。このキッチンは今見ても取り替えるしかない感じがします。いや、がんばれば熱海のときのようにリメイクできるのかもしれないけど、どうなんだろう。
リビングです。土足で暮らしてたの?ってくらい床が汚いのが気になる。
リビングから隣の寝室を見たところ。破れて染みの付いた障子が、この部屋の古さを物語ります。この数年後、障子を残した和室っぽいリフォームなども手がけることになるのですが、当時の僕にそんなアイデアはなく、このへんもすべて廃棄となりました。
いつも書いていますが、うちのマンションの方針は「最低限度の手直しで家賃を維持する」ことを狙うのではなく、「しっかりリフォームして家賃を上げる」のを目指しています。その意味で、ここまで室内が汚いとフルリフォームをためらう気持ちは一切なかったのでそこはよかったといえばよかったのかもしれません。
■壁を造作して室内窓を設けるアイデアは予算オーバーで没
さて、フルリフォームとなると、どんなふうにインテリアに仕上げるか、夢が広がります。
間取りを大胆にいじるアイデアも含めて、いろいろとアイデアスケッチを描きました。
中でも試したかったのがリビングとキッチンの間に壁を造作してもらい、室内窓を設けるというアイデア。
この部屋を手がけるちょっと前に、実家の一部をリフォームして賃貸の部屋に改造したことがあったのですが、この部屋に設けた室内窓が気に入ったのが影響しています。
室内に窓があると、空間に遊びができて面白いのです。
トビラの開口部を山型にするのも同じ部屋で試して気に入ったから。
印象に残る形ながら、曲線のアーチ型よりも施工費用が安価なのも魅力です。
しかし。
間仕切りの壁を造作するってそれなりにお金がかかるポイントなのも事実。見積もりを取ったところ、
ズドンと予算オーバーとなりました。あの当時は空室発生が続き、毎年のように300万円規模のリフォームを繰り返していたのでうちの台所事情もかなり苦しく、どんなにがんばっても350万円が限度でした。というわけで、壁の造作と室内窓のアイデアはあえなくお蔵入りとなりました。
でも、今振り返ると、壁を造らなくてよかったとしみじみ思います。壁を造ると引き戸のように開け放って広い空間として使う柔軟性がなくなりますし、何より冷暖房が効きにくくなります。もしあのとき壁を設けていたら、区切ったキッチンにもクーラーを取り付けなければ、なんて話になっていたかもしれません。
■キッチン、洗面、壁紙とフロアタイルを選ぶ
室内窓はあきらめたものの、予算が許す範囲で新しいことにもチャレンジしました。
その代表が以前もご紹介した業務用キッチンの導入です。
自室のリフォームで業務用キッチンを初めて採用し、その魅力に気づいた僕は、ぜひお客さんの部屋にも導入したいと思いました。
前回紹介したとおり、60センチの一槽シンクと60センチの作業台に、120センチのコンロ台をL字に組み合わせて予算を抑える工夫をしました。
壁面に取り付ける収納も、いわゆる吊戸棚ではなく、業務用キッチンにテイストの近いステンレスのパイプ棚(IKEAのGRUNDTALシリーズ)をたっぷりと取り付けることに。
寸法を見ながら、収まりを検討するのもなかなか大変でしたが、やりがいもあって楽しい作業でした。
一方、こちらは洗面のアイデアスケッチ。選んだのはおなじみのサンワカンパニーが取り扱うガラスの洗面ボウル(「ビードロボウル・スクエア・ミルキーホワイト」廃番)。それまで陶器の洗面しか採用したことがなかったので一度ガラスも使ってみたいと思ったのです。
組み合わせた照明はボール型のランプで、オーデリック(ODELIC)の「OB-172-611LD」。
ほぼ同じ型の後継品「OB-172-611LR」がまだ販売されているようです。次々と廃番になるインテリア業界ではロングセラーと言えそう。
リフォームのときは必ずといっていいほどショールームをまわりますが、特にサンゲツにはお世話になりました。
品川のショールームは実際の部屋を意識したディスプレイが秀逸で、いつも参考にしているのですが、
アクセントウォールに貼った壁紙はディスプレイされていたものが一目で気に入って採用しました(当時の品番は「FE-3981」、現在は「FE76836」)。
このとき、壁の前に置かれたミディアムブラウンのキャビネットとの組み合わせが素敵だったので、これを真似して床材の色にミディアムブラウンを取り入れることにしたのでした。選んだのは同じくサンゲツのフロアタイル「ロングプランクオーク」(WD326・廃番)です。
マンションの事務所にサンプルを置いて白い壁との相性を確認しているところ。いつもいろいろと頭を悩ませるのですが、素人なので最終的にどう仕上がるかはほとんど想像がつきません。
ただ、想像がつかないなりに、ひとつひとつの素材を真剣に選ぶと、それなりに見れる部屋になることだけはわかってきました。リフォーム後の室内をごらんになりたい方は前回の記事をどうぞ。
■予算不足で照明器具は妥協したのが心残り
振り返って心残りに思うこともあります。
それは、予算に限界があって照明を最安値のものからしか選べなかったこと。
寝室の照明はIKEAのアルミ製のペンダントライト「FOTO」で「1,499円」。
キッチンの照明は同じくIKEAのスポットライト「TROSS」で「1,499円」。
リビングの照明は手持ちの余りものにニトリの麻のシェード「1,420円」を取りつけました。
8年前ということもありますが、どれも激安ですね。そんな中でも部屋にマッチして安っぽく見えないものを選んだつもりですが、本当はもう少し予算を割いて照明選びをしたかったのが本音。
こちらのお部屋にお住まいの方とは親しくさせていただいているので、近いうちに照明器具の取り換えを提案してみてもいいかな、なんて思っています。