(732)元入居者さんのリフォームを手伝う②工事プランを練る
前回、元入居者のKさんのリフォームを手伝うことになった経緯とリフォーム前の室内をご紹介しました。
Kさんが購入したマンションには、とある学術団体の事務局があったのですが、そこに出入りしていた関係者が僕の大学時代の友人だったという驚きの偶然もあり、ご縁を感じました。

事務所とあって、退去したあとの室内はガランとして殺風景でしたが、角部屋で上層階という好条件のおかげで、日の光もたっぷり入って明るい雰囲気が漂います。
今回はKさんと一緒に、いつもうちのマンションの工事でお世話になっている業者さんの力を借りながらリフォームプランを考えていきます。
前回お話したとおり、Kさんが物件を購入するまで待たねばならないという事情もあり、リフォームプランについて考える時間は十分ありました。
そこで、まずは僕とKさんとで室内のレイアウトについてアイデアを交換してみることにしました。

具体的にはベースとなるまっさらな間取り図を印刷し、

赤ペンでアイデアをメモして、それをカメラで撮影してLINEで送り、意見を述べ合うという感じ。
当初、僕はこんなふうに考えていました。

古いマンションのリフォームなので水回りは動かせないだろうし、壁などの造作も極力避け、ひとつの空間として広く使うのがいいのではないか。

「ダイニングスペース」と「ベッドスペース」の区分については低めの家具などを配置してゆるやかに分ければ十分だろうと思いました。
キッチンのレイアウトは多少変わるにせよ、部屋に入ってキッチン、奥にベッドというレイアウトがよいと思い込んでいたのです。
今思えば、僕がそう考えた背景には、この物件が事務所として使われる前、分譲当時の間取り図の影響があった気がします。

奥には畳敷きのスペースがあり、ここが寝室として想定されていたことがうかがえます。
しかし、やりとりをしていくうちにKさんの要望はまったく違うことがわかってきました。

これは実際に送ってくれた画像。
最初に見たときは「ずいぶん詰め込んだな」と面食らったのを覚えています。
というのも、この部屋の横幅はせいぜい4メートルくらい。そこにウォークインクローゼットとキッチンと通路をならべて配置すれば、それぞれがかなり窮屈な空間になってしまうと感じたのです。
でも、話を聞いてみると、この「詰め込み」には意味があることがわかってきました。

本当に大事なのはこちらのポカンと空いた広いスペースなのです。
つまり、窓に面した部屋の奥のスペースにゆったりしたリビングがほしいというのがKさんのいちばんの望みでした。

「ベッドルームで窓をつぶしてしまうのはもったいないな、と思いました。窓に面しているリビングを作ることを一番重視したかったんです」とはリフォーム後にKさん自身が語ってくれた言葉。
ということは、部屋の奥のスペースにリビングを確保することができれば、ベッドやキッチンのレイアウトにはこだわらないと考えることもできます。
そこで、Kさんの要望に沿うかたちで情報を整理して、僕のほうからこんなアイデアを出してみました。

ウォークインクローゼットはあきらめることになりますが、Kさんのアイデアスケッチにくらべてムリのない配置になっていると思います。これはKさんにも気に入ってもらえた様子でした。
とまあ、文章でダイジェストにするとあっさりとしてしまいますが、ここまでくるのにはかなりのやりとりがありました。今、振り返ってみても、このプロセスがいちばん大変だった気がします。

さて、Kさんが晴れて物件を取得した2025年の5月、現場にて業者さんもまじえてレイアウトを詰める作業をおこないました。

ベッドの位置、キッチンの位置にテープで印を付けながら、収まりを確認していきます。しょせんは素人ですから、僕らのアイデアがどんなふうに現場に落とし込めるかは不安もありましたが、業者さんからの提案もあって「キッチンをベッドの裏に配置したらいいかも」といった感じにプランがブラッシュアップされていきました。

業者さんが作成してくれた図面がこれ。現場でベッドスペースのサイズを話し合ったところ、キッチンと向かい合うように冷蔵庫やカップボードを置けば、より収納力もあって使いやすくなるだろうという提案でした。
部屋の大まかな骨格はこれで確定したのですが、Kさんからはトイレや洗面のレイアウトにリクエストが出てきました。

これまたKさんが自分で図面を加工して送ってくれた画像。「トイレには洗面を通らないで廊下からダイレクトには入れるようにしたかったんです」とのこと。なるほど、お客さんがきたときに生活感のある洗濯機や洗面の周辺を見られたくないという気持ちはわかります。
このリクエストも組み込んで、最終的なレイアウトが決まりました。

業者さん曰く「洗濯機を搬入する幅を確保するのがなかなか大変でした」とのこと。洗面の端とトイレわきの壁との間をギリギリで通して洗濯機を搬入することになるそうです。こういうポイントは実際に設計していただかないとわからないもの。無事に収まって感謝です。
そんなこんなでいろいろありましたが、プランが固まって無事に工事が始まることとなったのでした。

僕も何度か現場をのぞきに行きましたが、いつもうちのマンションで工事をしてくれている顔なじみの大工さんがせっせとがんばってくれているのを見ると、やはり安心感がありました。
自分が施主のときは工事が始まってからもあれこれと決めなければならないことも多くて苦労するのですが、今回はアドバイザー的な立ち位置だったせいか、立ち会っただけでほとんど苦労しなかった気がします。

その理由はKさんがリフォームを楽しんでいたからだと思っています。
「○○で悩んでいるんですが、アサクラさんはどう思いますか?」とアドバイスを求められることはあっても、基本的には自分でどんどん決めていける人だったので、プランが決まったあとは僕の知らないうちにどんどん工事が進んでいったな、といってもいいくらい。
次回は、完成した室内をごらんいただきます。


















