(751)最近の家賃の上昇傾向とファミリー物件の強さに驚いた

お金のこと

賃貸の家賃が上がっているというニュースをよく耳にしますが、うちのマンションではもう2年ばかり空室が発生しておらず、実感する機会がありませんでした。

しかし、つい先日、空室となった親戚の物件の募集に関して相談を受け、世の中の変化に驚かされることとなりました。


■都内の約50平米の物件なのに賃料は「13万円」

まず、物件の概要についてまとめておきましょう。親戚の物件ですので詳細は伏せながら書くのをご容赦ください。

小さな鉄筋3階建ての3階部分になります。立地はうちのマンションと同じ世田谷区で、徒歩圏内に複数の駅がある好立地です。

物件の広さはおよそ50平米の1LDKで、リビングダイニングはおよそ16畳、もう一部屋が約6畳。風呂トイレ別という間取りですが、築年数は50年ほどで、設備はどれも相当古い状態でした。

室内イメージ

これはリフォームする前のうちのマンションの室内ですが、大体こんな感じの内装だと思ってください。床は賃貸でおなじみのクッションフロア

一体型洗面台

洗面もこれまた賃貸でよく見かける旧式の一体型洗面台。インテリア的にはお世辞にもおしゃれとは言えない状態だったと思います。

そんなこともあり、昨年2025年はじめの時点で退去があったときには賃料は「13万円」にまで下がっていたそうです。


■2025年の春には「家賃13万円から15万円にアップ」

都内で駅から遠くない物件としてはさすがに安すぎる感はあり、親戚からも募集にあたって家賃アップを狙うにはどうしたらいいか、相談を受けたのでした。

まず、不動産屋さんの見立てでは、リフォームなどなしで現状のままだと、近隣の類似物件と比較して「14万円」くらいの賃料が妥当なのではないか、ということでした。

僕もほぼ同じ見解で「このまま14万円で探すか」さもなければ「古びた部分を中心に部分的にリフォームを施して16万~17万くらいを狙うのがよいのではないか」と話しました。

内心は「300万くらいかけてガッツリとリフォームをかけて20万円越えの物件を作りたい」ところですが、あちら側の事情として「ビルの修繕費用なども必要で、室内のリフォームに割くことのできる費用はほとんどない」と聞いていたので、せめて部分リフォームで家賃アップを、と提案したのでした。

しかし、結局、予算的な都合からリフォームはおこなわず、傷みの目立つ箇所の最低限の修繕のみをおこなうだけで「15万円」で募集することになりました。

「15万円」という数字は親戚サイドから出てきた金額で、僕自身は「けっこう強気な値付けだな」と思ったのですが、これが驚くことに一か月ほどですぐに次の借り手が見つかったのでした。

不動産屋さんも驚いていたようですが、「最近は50平米以上のファミリー物件はどんどん人気が上がっているので、その影響かもしれません」と言っていました。

今思えば、僕はもちろん、プロである不動産屋さんも従来のエリアの相場観に囚われてしまい、時代の変化を把握できていなかったような気がします。

近年の都内の不動産の高騰ぶりは異常なほどで、以前ならマンションを購入できていたファミリー層が賃貸に流れてきているという話はニュースやSNSなどで耳にしてはいましたが、その実例をまさに目撃していたのでした。


■2026年の春には「家賃15万円から18万円にアップ」

しかし、それでは終わりませんでした。

2026年の春。昨年、入居した方がお仕事の都合でわずか一年足らずで転居することとなり、再びの募集となったのです。

昨年の成功体験もありましたし、室内もほとんど汚れていないので、今年もリフォームなどはおこなわず、現状のままで募集したいという意見には僕も賛成でした。

さて、いくらの家賃で募集するかについては、不動産屋さんが「16万円」という数字を出してきたのですが、親戚から出たのはまたも強気の「18万円」という値付け

個人的には「さすがにこの物件で18万円はないだろう」と思い、アドバイスもしたのですが、「高すぎるのは承知だが、最初はこの値段で様子を見たい」とのことでした。

室内イメージ

そういうことならということで、僕もその一助になればという思いで、がんばって物件の撮影をおこない、募集広告に掲載してもらったりしました。

募集を開始したのはゴールデンウィーク明け。例年ならば、春の繁忙期が終わって賃貸を探す人が減ってくる時期なのですが、一か月の間に5、6組の内見があり、反応は上々。この反響を見るに18万円という値付けが決して高くないのだとわかり、大変驚きました。このあたりで、どうやら僕は賃貸市場をめぐる昨今の事情について完全に見誤っていたようだとはっきり思い知らされました。

ほどなくして、そのうちの1組から「礼金を値引いてくれれば入居したい」という申し出があり、若干の交渉があって入居が決まりました。

僕などは、18万円で入居してくれるなら礼金なんてタダでもいいと思うくらいですが、親戚はそこもシビアに交渉していて感心しました。なんというか、ひょっとしたら自分は今の売り手市場においてはお人よし大家さんの部類に入りつつあるのではないか、とすら思った次第です。


■時代の流れの中でファミリー物件は奪い合いになっている

先ほども書いたとおり、根底にあるのは不動産市場の高騰とそれに伴う賃貸家賃の上昇という時代背景でしょう。

2022年には「13万円」まで下がってしまっていた家賃が、何のリフォームもなしに25年には「15万円」に上がり、翌26年には「18万円」にまで上昇するというのは、ひと昔前だったらまったく想像できなかった事態です。

正直、僕が大家を始めた2014年の頃は、築古物件のポテンシャルをリフォームで引き出し、家賃を上げるという方法論しかなかったところが、何もしなくても時代の波が賃貸物件の家賃を押し上げてくれる状況が生まれています。

もし昨年に僕の提案を採用して100万円くらいで部分リフォームをかけて17万円で借り手を見つけて、その方がずっと住み続けていたと仮定すると、今回のケース(リフォームなし、家賃18万円)とくらべて、「リフォームの手間がかかって費用が100万円余計にかかるうえ、家賃は1万円安い」という事態になっていたわけで、結果論になりますが、僕の提案よりも親戚サイドの判断が圧倒的に正しかったことになります。

さらに、ファミリーで借りることもできる50平米の物件だったことも幸いしていると思います。不動産屋さんと話していても、狭いワンルームについてはいまだ在庫がだぶついているような状況がありますが、家族で住むことのできる広さの物件は奪い合いのような状態になってきているようです。

僕が管理しているマンションにしても、ひと部屋30平米でギリギリ二人暮らしもできるというところが、ワンルームとくらべて募集の幅を広げて優位に働いていると思います。


■マンション大家はいつ家賃の値上げを考えるべきなのか

さてこの現状は、裏を返せば、以前のような家賃感覚でいると借り替えられる物件はどんどんなくなってきているということでもあります。

思えば、うちのマンションでもこの2年間、空室が出なかったのですが、それは「賃貸物件が全体的に高くなってきている影響で、現在の家賃が相対的に安く感じられるようになり、以前のようには簡単に引っ越し先が見つけられない」という事情が背景にあるのでしょう。

そういう世情を感じてのことか、最近、入居者さんからも恐る恐る「お家賃って上がったりするのでしょうか?」なんて質問されることも増えてきました。

これまたお人よしかもしれませんが、現在お住まいになっている入居者さんに対して家賃の値上げをお願いすることは当面は考えていませんし、正直にそう答えてきたのです。

というのも、物件の購入やリフォームにローンを組んでいる不動産投資家のみなさんとは異なり、僕のような相続大家は物件の取得に資金を費やしていないうえに、リフォームに際してもその都度自分や家族が資金を出し合って(銀行などの融資なしで)おこなってきたため、金利の上昇の影響はほぼないに等しいからです。

しかし、マンションの維持管理や修繕にかかる費用がジリジリと上がっているという事実はもはや無視できなくなりつつあります。築50年を越えたマンションはいたるところに不具合が出てきており、今年は100万円ほど投じて外壁の部分修繕をおこないました。

外壁修繕の資材

近年の物価高騰に加えてホルムズ海峡封鎖の影響で資材が高騰していることを考えると、これも5年前ならば70~80万円ほどでできたのではないかという思いも去来します。今はまだその差額を家賃に上乗せしようと思う段階には至っておりませんが、嫌な気配は感じます。

まず考えるのは、空室発生時、新しく入居者を募るタイミングにおいては市場に合わせて適正な家賃を設定する必要が出てくるということ。うちのマンションにおいてはリフォーム済みの部屋は大体11万円台後半~12万円くらいの家賃を設定してきましたが、次回の募集は12万円台の半ばくらいをめざすことになるのではないでしょうか。

一方、現在お住まいいただいている方に家賃の値上げをお願いする場合はどうかといえば、現在進行形の物価高騰が今後もますます勢いをまし、以前ならば100万でできた工事が200万をかけなければできないというくらいのインフレになったときなのだろう、と感じています。

そういう時代が来ると、10年前に設定した12万円という家賃は、実質的には半額くらいにまで下がってしまうことになり、大家である僕や家族の生活に関わってくる問題になります。そのときはいよいよ入居者さんにも相応の負担をお願いしなければならないでしょう。

また、うちのマンションは、あと数年のうちに足場を組んでの大規模修繕をおこなわなければならず、その額によってはある程度は家賃への添加を考えねばならないという事情もあります。まとまったお金を準備するつもりではありますが、物価の上昇に追いつけず資金が足りないという事態は十分に考えられます。

とまあ、話がやや広がり過ぎましたが、今回の親戚の物件の募集は僕にとっては非常に勉強になる話でした。次回の空室発生時に備え、いろいろと心の準備をしておきたいと思います。

アサクラ

大家業。世田谷のマンションと東京西部の山奥にある小屋を管理&経営しています。最近は熱海に購入したマンションの一室をDIYで修繕中。ESSE online(エ...

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