(30)ミシン台を流用した洗面づくりは計画と調整が大事
今回から洗面について書きます。
完成した物件を見慣れてしまうとプロセスを忘れてしまいそうになりますが、過去に描いたメモやスケッチを引っ張り出したりしつつ思い出してみます。
出発点が祖母の遺した洗面台なのはまちがいありません。
以前も書いたとおり、書庫のガラクタを整理しているときにミシン台を見つけ「これで洗面台を作ろう」と直感的に思いつきました。
2017年の夏頃のことです。
本体とミシン台が一体となっており、とにかく重くて場所も取る足踏みミシン。
邪魔といえば邪魔ですが良い意味で雰囲気と存在感もあり、最近はインテリアとして再評価されているようです。
もともと重たいミシンを置くための頑丈な作りなので、洗面ボウルを置くことも十分可能です。
ただ、もともとの用途と異なる設備に流用する以上、洗面ボウルや配管の収まりなどについては慎重に考える必要があります。
最初のメモがこちら。
水栓は前にも書いたとおり、サンワカンパニーの「ラベンナ」に決めていました。
壁付け式の十字ハンドルは洗練された雰囲気の中にもレトロさが漂っていて、前から使ってみたかったのです。
一方、洗面ボウルはいろいろ迷いました。
この時点では、ミシン台内部に実験用シンク(Lixil S-106)を埋め込もうと考えていました。
まわりの壁や床にタイルを貼ることは決めていたものの、どんなものを選ぶかは悩んでいる最中だったと記憶しています。
次のスケッチです。
前回のメモにくらべ、気合が入ってきました。
丁寧に描くと、完成時のイメージが湧きやすくなるのがいいです。
ミラーについては秋田木工のものを手に入れるめどがついたところ。
照明は、以前から母屋にあった古いものを使うつもりで書きこんでいます。 (これについては、現在(19年春時点)でも悩んでいるところ)
2017年末に工事担当のKさんに渡したスケッチです。
今度は自分なりに寸法をまとめて、実際の工事に落とし込めるかの意見をあおぐのが目的です。
検討していた実験用シンクですが、現場での打ち合わせの結果、あきらめることになりました。
埋め込むにはミシン台の中のスペースが狭いこと、可能だとしても手間(費用)がかかることが理由です。
代わりに選んだのはサンワカンパニーの置き型の洗面ボウル「ハトリア プレート」。
クセのないシンプルなデザインと平たい形、ギリギリ収まる大きめのサイズ感、リーズナブルな価格と三拍子そろったはずだったのですが……。
サンワカンパニーのショールームで実物を見たところ、予想より大きく感じたため検討し直すことに。
やはり、実物を見るのは大事です。
同程度の価格帯の中で、もう少し小さめの候補を2点挙げ(「ハトリア ピアット」「ソイトップ」)、サイズ感に注意しながら、ミシン台の写真の上に描き込んで比較しました。
こうして比べると、やはり「ハトリア プレート」はちょっと大きすぎてアンバランスになりそうだと感じました。
完成時の高さも問題です。
ミシン台は高さが77センチ。
この上に洗面ボウルを置くとすると、高さは80センチを超えるのは確実。
洗面ボウルのいちばん上(あふれ面)の高さが80センチだと、身長165センチの人が心地よく使える高さと言われているようですから、不特定多数が使用するにはちょっと高すぎます。
せめて洗面ボウルだけでも低めに収めたいと考え、「ソイトップ」(13センチ)より浅めの「ハトリア ピアット」(10センチ)を選びました。
あらためて水道業者さんに現場でミシン台と「ハトリア ピアット」の寸法を見てもらい、なんとか配管は収まるだろうという確認も取れました。
こういう手間は、もし通常の洗面カウンターを設置してもらうだけならまったく必要ありません。
「洗面カウンターはこのあたりに標準的な高さで」とひとこと伝えれば、だいたい事足ります。
いつものマンションの工事では、そんな感じでほぼ問題ありません。
ミシン台を流用した洗面は雰囲気があっていいですが、そのぶん手間もかかると覚悟しておいたほうがいいでしょう。
とくに配管やボウルの収まりの問題については、個々のミシン台の形状によって事情が異なるため、工事業者さんとしっかり打ち合わせることをおすすめします。
さて、水栓・洗面台・洗面ボウルなど、大まかな構成は決まりました。
次回はタイルを選びます。