(260)入居者用のマニュアルを作成してあらためて気づいたこと
コロナ禍であいかわらず自粛の日々が続いています。昨年のような得体の知れない恐怖感は薄れたものの、不必要に人と会うのは避けているという方も多いでしょう。
マンションの入居者さんにゲストハウスとして使ってもらっている山小屋もあいかわらずの開店休業状態で今年はまだ稼動日はゼロ。山小屋自体は単体で利用できるのでコロナ感染のリスクはきわめて低いのですが、わざわざ山奥まで出かけることをためらう気持ちがあるのかもしれません。
そんな一方で、まだ山小屋に宿泊したことのない入居者さんから問い合わせを受けたりもして、夏あたりから少しずつ使ってもらえそうな気配もしています。
悩ましいのが案内の問題です。
いつもなら初めての方には僕がクルマを出して世田谷のマンションから山小屋まで一緒に行きますし、電車でいらっしゃった場合でも最寄り駅まで迎えに行くようにしています。そのついでに「山小屋をどんなふうに利用するか」という簡単な説明を対面でおこなっていました。
ところが、コロナの影響で一緒に移動したり、対面で案内したりすることがはばかられる状況になってしまいました。初めての訪問でも入居者さんが僕と顔を合わせずに自分たちだけで単独で宿泊するという事態も想定しなければならないのです。
そこで、今まで説明していた事柄を簡単なマニュアル(取扱説明書)にまとめることにしました。前置きが長くなりましたが、今回は宿泊者用のマニュアルを作成して気づいたことをまとめます。
■山小屋へのアクセスから入室まで
まずはアクセスのこと。
最寄り駅からでも徒歩40分という立地では、ふつうならまず歩こうとは考えません。でも、せっかく自然豊かな場所に来るのだから駅から小屋までトレッキング代わりに歩くのも楽しいので、地図を用意することにしました。
昔とちがって今はスマホの地図アプリがあれば、どんな場所にでもたどりつける時代ですが、それも電波が飛んでいればの話。山小屋の付近は携帯電話の電波状況が不安定でキャリアによってはほとんどつながらないこともあります。その意味でも地図は必須と言えるでしょう。
到着したら次は入室です。
もともと単独で使用することを前提にリノベーションしているので、ドアのわきにはキーボックスが設置してあります。事前にメールなどでお知らせしたキー番号(定期的に更新)を入力し、カギを取り出します。
ボックスの上には小さなライトもあり、夜間の来訪時でもカギの取り出しは可能です。
でも、夜の山道は街灯も少なくて初めて来る人にとってはちょっと怖いかもしれないですね。
■快適な滞在のために空調の説明は欠かせない
部屋に入ったらあとは思い思いに過ごしていただくだけですが、快適な滞在を過ごすには空調が大事です。
前回、山小屋での滞在でベストなのはエアコンを利用することなのではないかと書きましたが、到着直後の室内は熱気がこもってしまっているので、まずは窓を開けて換気するのがベスト。屋外の涼しい空気を室内に入れて室温を適度に下げてからエアコンのドライ運転で湿気を取り除くのがおすすめです。このへんについてもマニュアルで説明することにしました。
不在中に室内の湿気を外に逃がしてくれる「カライエ」についての説明も悩ましいですね。世の中のほとんどの人はこの機械について知りません。24時間365日稼働し、基本的にオフにする必要のない機械ですが、滞在中だと動作音が気になるという人もいそう。マニュアルには「うるさければスイッチをオフにしてください。でも、帰宅時にはオンにしてから帰ってください」と案内することにしました。
■禁止事項で山小屋に潜む「危険」を再認識
大家である僕が不在で入居者さんが単独で宿泊する場合、もっとも周知が必要なのが禁止事項です。
その筆頭が火気厳禁というルール。山小屋での火事の恐ろしさは以前も書きましたね。
都会で生活しているとなかなか実感できないのですが、タバコのポイ捨てやバーベキューの火の不始末からびっくりするような大きな火事が起きてしまいます。山小屋での遊びの醍醐味はアウトドアにあるとはいえ、焚火やバーベキューは禁止ということでマニュアルに明記しました。
階段からの落下も怖いですね。とくに子どもは階段を見つけると意味もなく昇り降りしたくなるみたいです。二階の開口部にはネットを張って、落下防止の対策をしてはいますが、階段そのものはどうしようもありません。こればかりはお父さんお母さんに目を離さないよう注意してもらうしかありませんから、マニュアルでもしっかりと注意を促しました。
緊急時の連絡手段も大事です。先ほども書きましたが、山小屋では電波がつながりにくい場合がありますから、緊急時に携帯を使用することはできない可能性があります。
そんなときのためにこの小屋には母屋の電話機の子機が置いてあります。着信音は消してあるのでふだんは存在感がありませんが、いざというときにここから電話をかけることができることも説明しています。
それにつけても自分で案内すれば「ひとこと言い添えるだけで済むこと」をマニュアルにしてみると「細かいことまでうるさい感じ」や「押しつけがましい感じ」がしてしまいそうでなかなか難しいです。このあたりはいずれ入居者さんの意見なども聞きながら改善していこうと思っています。
■離れの小屋は母屋のバックアップでもある
ところで、この山小屋の利用についてはマンションの賃貸契約には含まれていません。不動産業者さんにも相談したのですが、こういうウィークエンドハウスというのは一般的な賃貸契約の枠からははみ出ていますし、あくまでうちのマンションが提供するエクストラのサービスという位置づけになっています。
「不動産の契約」はともすると堅苦しい法律の話になりがちですが、最低限のルールさえ守ってもらってカジュアルに使ってもらいたいと思って試行錯誤しています。
マニュアルにも「不測の事態で使用できなくなる場合もあります」という注釈はつけたのですが、実は今年の梅雨の期間もしばらく「メンテナンス期間」という名目でお休みをいただいています。コロナ禍ですし、どうせ訪れる人もいないのですが。
実は今、母屋の水まわりの改修をしていて週末ごとにタイルを張ったり壁を塗ったりしているのですが、そのあいだトイレが使えなかったりお風呂に入りづらかったりするので離れの小屋を僕が使用しているのです。
こんなふうに離れが予備の住宅設備として機能するというのは予想しなかったのですが、たいへんありがたいと感じています。
次回からは母屋のトイレの改修を含む、水まわりのリフォームについて書こうと思います。洗面を設置するだけのつもりが、思ったよりも大がかりな工事になってしまいました。