(36)リビングの床タイルは予算の壁に阻まれて
前回まで洗面まわりのモザイクタイル選びについて書きましたが、同時におこなったのはリビング部分の床選びです。
図面で言うと、この部分。
いろいろ試したいことはありましたが、DIYで床を貼るのは初めてですし、現実的な制約も無視することはできません。
ポイントを挙げると……
- 床材を既存の床に直貼りする必要がある(天井が低いので、なるべく床を低めに収めるため)
- 洗面まわりに貼るモザイクタイルとのマッチングを大事にしたい
- DIYで施工するので、難度の高そうな素材は避けるほうが無難
といったところでしょうか。
いちばんラクな選択肢として真っ先に思い浮かんだのはビニール製のフロアタイルです。
日刊Sumaiの連載でも書きましたが、最近のフロアタイルは非常によくできていて、パッと見は本物の木のように見える完成度。
フローリング材とくらべると驚くほど薄く、カッターでも切れるので施工も簡単。
これなら僕でも安心してDIYできると思います。
しかし、せっかく好き勝手に物件を作っていい機会に恵まれて、ふだんのマンションと同じ建材を使うのは、どうにもつまらない。
どうせなら、少々自己主張が強くなってもいいので面白い建材にチャレンジしたいところです。
とにかくタイル好きな僕は、洗面まわりだけでなく、リビングの床にもタイルを貼ろうと考えつきました。
以前、日刊Sumaiの連載で自由が丘にあるインテリアショップ「ダルトン」(DULTON)を取材した際に、異なるタイルを組み合わせて空間を区切っているのを見つけ、気になっていました。
我が家と「ダルトン」では広さもテイストもちがいますが、この発想を参考にしてタイルとタイルを組み合わせてみようかと考えたのです。
目をつけたのはこちら。
長江陶業の「ヴィクトリア」というレトロな柄のシリーズです。
名前は洋風ですが、使い方によってはレトロな雰囲気にもなりそうなタイル。
カラーバリエーションは3色。
こうして1枚だけ見ても、一面に敷かれた床のイメージは想像できないでしょう。
僕がこのタイルに出会ったのは、過去のカタログ(Vol.10)の10~11ページに掲載されていた写真がきっかけでした。
1枚だけ見るのとはまったく印象がちがうと思いませんか。
一面に敷くと古いホテルのロビーみたいな印象の床に仕上がりそう。
「ここに祖父の遺品である古い本棚を置いたら合うんじゃない?」なんてことも考えたりします。
ちなみに「ヴィクトリア」の商品紹介ページにはこんな画像も。
なるほど、フローリングを仕切るかたちで敷くわけですね。
さっき挙げた「ダルトン」の施工例と同じ発想です。
これは試してみたい。
ネックになりそうなのは、15センチ角という大きめのサイズです。
こういう大判のタイルを柱や壁のかたちに合わせてDIYでカットするのは僕の技術と道具ではちょっと難しいかもしれません。
まあ、そこは割り切って半端な部分を洗面タイルのボーダーを使って埋めればなんとかなると思ったのですが……しかし。
いざ具体的に施工面積と予算を計算したところ、完全に予算オーバーであることに気づきました。
このタイル、1枚およそ700円くらい。
15センチ角ということは、ふつうの30センチ×30センチのタイルシートと同じ面積をカバーするのに、4枚必要。
つまり、700×4で2,800円。
た、高い……。
以前、検討した4種類のタイルの価格をごらんいただければ、その差は歴然。
いちばん高かった「ニューヨーカーグラス」の1.5倍近くですから、リビング全体に施工すれば、予算はかなり必要になります。
リビングの施工面積をざっと計算したところ4.5平米強なので、単純計算で約200枚は必要。
ということは、700円×200枚で……14万円(!)。
……これはムリだわ。
少し背伸びをしてチャレンジしてみよう、なんてレベルではありません。
かくして、「タイル貼りによるレトロなリビング」計画は挫折したのでした。
気持ち的にピンときたものをあきらめると気持ちは落ち込むもので、しばらくリビングの床のことは放置していたのですが、しばらくして面白い素材に出会いました。
次回は、実際に床に採用することになる「西粟倉森の学校」のユカハリタイル「コグチ」について。