(145)【小さな家の小さな本棚⑥】ザック・クライン編『Cabin Porn Inside 小屋のなかへ』
緊急事態宣言も延長になった現在、みなさんはどうお過ごしでしょうか?
僕は、母屋の工事に支給する物品を搬入しなければならず、平日に一日だけ山小屋に行きましたが、遊びには行っていません。
割り切って別荘滞在を楽しむという選択肢もあるのでしょうが、以前も書いたとおり、緊急事態宣言下において別荘に滞在することはいろいろとリスクもあり、今のところ僕は仕事がないかぎり山に行くつもりはありません。
こんなときの気晴らしが読書です。
今回は最近愛読している本をご紹介したいと思います。
ザック・クライン(Zach Klein)編『Cabin Porn Inside キャビン・ポーン・インサイド 小屋のなかへ』(渡部未華子訳、2019年、グラフィック社)です。
「小屋を愛する人たちが集うサイト「Cabin Porn」から厳選された内観・外観写真を一挙掲載!」という帯文句がひとことで内容を要約してくれています。
表紙を飾っているのは、この本の編者でもありサイトの創立者でもあるザック・クライン氏が友人とともに作り上げた小屋。
「Cabin Porn」を名乗るだけあり、さすがの雰囲気です。
元のサイトもご紹介しておきましょう。
こちらのアーカイブページには世界各地から投稿された小屋の写真(これがどれも本当にきれい)がひしめいており、うっかりヒマなときにのぞいてみようものなら、あっという間に時間が過ぎてしまいます。
ぶっちゃけ、本を買わなくても、このサイトを眺めるだけで十分ぜいたくな時間が過ごせてしまいそう。
『Cabin Porn Inside』は、その膨大なアーカイブから85軒を選んで書籍化したもので、第一弾である『Cabin Porn』(日本では2017年出版)の続編にあたります。
こちらが「素晴らしい自然に囲まれた小屋の外観に焦点を当てたものだった」(序文より引用)のに対し、第二弾となる本書は「小屋のなかはどうなっているのか?」(序文より引用)という読者の疑問に応えることを意識して作ったそうです。
帯に取り上げられている小屋を順に見てみましょう(元が小さい写真なので解像度が低いのはご容赦ください)。
これはカナダのオンタリオ州ワンサウザンド島に建てられた「ワタリガラスの小屋(Raven House)」(元写真は52-53ページに掲載)。
暖炉を中心とした小ぶりな小屋です。
ゆったりしたキッチンも使いやすそうですし、奥に見えるロフトのベッドルームもいい距離感です。
シンプルでムダのない「ウィークエンドハウスのお手本」のような建物だなと思っていたら、こちらはAirbnb(エアビーアンドビー)に掲載されていました。
the Raven House (Airbnb)
これとは対照的にラフな仕上がりが魅力なのが、ウェールズの「回収品でできたAフレーム小屋(Reclaimed A-frame)」(元写真は220-221ページに掲載)。
A-frameとは言ってみれば「三角小屋」。
reclaimは「回収する」という意味で「改装工事をしている家から出た不要になった二重ガラスや木材を再利用」(219ページ)して建てられたそうです。
費用はなんと、たったの2,000ポンド!
日本円で30万円にも満たない低コストハウスです。
さすがに水回りはないのかもしれませんが、それにしても安すぎます。
製作には一年半を要したそうですから、タイムイズマネーと考えれば、ふつうの別荘に劣らぬ財力が投入された小屋と言ってもいいでしょう。
続いては「バハマの小屋(Brillhut)」です。
元写真は272-273ページに記載されていますが、ガラス窓で開放感もありブルーのキャビネットも印象的なキッチンです。
手がけたのはプロの建築家(brillhart architecture)とあって、納得の洗練された雰囲気。
このくらいになると、小屋というよりも別荘と呼んだほうがしっくりくるかもしれません。
「バハマ風の小屋「ブリルハット」を、コンテンポラリーなデザインでありながら、親しみのあるものにしたかった」(271ページ)という狙いが込められているそうですが、バハマの建築文化について何の知識もない自分が見ると、もはやただのおしゃれハウスですな。
寝室の天井に設けられた丸窓も素敵なので、brillhart architectureの作品ページにて写真をごらんになることをおすすめします。
Brillhut (brillhart architecture)
ちなみに、本書には、同じくbrillhart architectureが手がけた「草ぶきの家(THATCH HOUSE)」も掲載されており(274-275ページ)、こちらにも濃紺のキッチンが設えられています。
THATCH HOUSE (brillhart architecture)
窓から見えるエメラルドグリーンの海とかもうね、笑っちゃうくらいですよ。
いいなあ!海辺の別荘!
以上の3軒以外にも、レンジャーや消防士が使用していた古い火の見櫓を作り変えたという「ファイヤー・ルックアウト(Fire Lookout)」や、朽ち果てた古い建物を波型鉄板の外装ですっぽりと覆って大胆にリノベーションした「クロフト・ロッジ・スタジオ(Croft Lodge Studio)」など、個性的な小屋の数々が紹介されています。
タイトルどおり小屋好きを「ムラムラ」させる一冊と言えましょう。
一軒あたりの写真はだいたい2~3枚と多くはないのですが、ネットで小屋の名前をググれば、たいてい画像が見つかります。
パラパラとめくって、気に入った小屋を見つけ、それをネットで調べて……時間を忘れて楽しむことができるはず。
たとえば、先の「ファイヤー・ルックアウト」はAirbnbに掲載されていますし、
Crystal Peak Lookout (Airbnb)
「クロフト・ロッジ・スタジオ」は建築事務所の作品ページで紹介されています。
Croft Lodge Studio (Kate darby architects)
屋内に引きこもらざるをえない昨今、この本とネットを活用して、空想の別荘滞在はいかがですか。