(264)窓のリフォームを中心に水まわりの断熱を考える
前回は水まわりのリフォームにあたって現状にどんな不満があるのかを列挙しました。
そこで気づいた最大の不満が「とにかく寒くて暖房がないこと」でした。今回は窓を中心に水まわりの断熱について考えます。
■ドアを移転して水まわりを区切って断熱の準備
まだ世田谷のマンションを引き継ぐ前、この山小屋で友人と暮らしていたことがありましたが、冬はびっくりするくらい寒かったのを今でもよく覚えています。居室内は灯油ストーブを炊いて温めればいいとしても、とにかく水まわりが寒くてトイレに行くのも脱衣所で服を脱ぐのもイヤでした。
間取り図をごらんいただければわかりますが、水まわりは廊下で玄関や階段とつながっています。
たとえ灯油ストーブなどを置いたところで、玄関から冷気は入ってくるし、暖気は階段を通って二階へ逃げていきます。水まわりの断熱を考えるなら、まず水まわりの空間自体を区切る必要があるのです。
そこでここにドアを設置しようと考えました。
ドアで水まわり(赤で示した場所)にフタをすれば、外からの冷気をさえぎり、暖気が逃げるのをふせぐことができ、寒さもだいぶ和らぐことでしょう。
ちょうどラッキーなことに、洗面を設けるためにドアをひとつ撤去するので、これをそのまま移設することができます。我が家のような古い家に急に新しい建具が入るとそこだけ雰囲気がチグハグになってしまうので、古い建具が使い回せるのならばインテリア的にもムリがなくていいと思います。
■窓の断熱について考える~脱衣所には二重サッシを
空間を区切ったら、次に考えたいのは窓の断熱。
先日、「日刊Sumai」の連載で窓の卸売りを手掛けるマテックス株式会社さんに取材をさせていただき「冬場、室内から逃げる熱のうち、窓やドアなどの開口部が48%を占めている」というデータを教えてもらいました。我が家の水まわりにはトイレ・脱衣所・お風呂の三カ所に窓がありますから、これらを断熱すればかなり温かくなるのはまちがいありません。
実は、マテックスさんに取材をさせていただいたのも今回のリフォームを念頭に置いてのことでした。
古い窓のリフォーム方法に4つも選択肢があることをはじめ、とても勉強になった取材でした。窓のリフォームをお考えの方はぜひ読んでみてください。
ポイントとしては、ひとことで「断熱」といってもどんな窓に工事するかによってベストな選択肢が異なってくるということ。
いちばんオーソドックスな選択肢が「内窓の取り付け」です。既存の窓の内側にもうひとつ窓を設置してサッシを二重にします。これによって断熱性能はもちろん防音性能も上がります。
デメリットは窓が二重なので開け閉めを頻繁におこなう場所に適さないという点。
我が家の場合でいうと、脱衣所の窓はほとんど開け閉めしないのでこの二重サッシがベストだと考えました。
これは工事後の写真。設置したのは樹脂製サッシ。熱伝導率の高いアルミとちがって熱を伝えにくく断熱性能に優れます――という情報もマテックスさんの取材で教えてもらったこと。こちらの記事をどうぞ。
築古の家にしか住んだことのない僕には驚くような新技術の話ばかりでした。
■開閉の多い窓におすすめなのは「カバー工法」
さて、頻繁に開け閉めする窓に最適なのが「カバー工法」です。
既存の窓をカバーするかたちで新しい窓枠を取り付ける方法なので、内窓とはちがってサッシは二重にならず開閉の手間がかかりません。
お風呂の窓やベランダの掃き出し窓のようによく開け閉めする場所に適しています。
今回の取材の後に初めて気づいたのですが、うちのマンションの一室にもカバー工法で窓が取り付けられた部屋がありました。
別の部屋の写真ですが、取り付け前の窓はこんな感じでした。
くらべてみると窓枠の幅が増し、手前に向かってせり出しているのがおわかりいただけるはずです。カバー工法は既存の窓枠の上から新しい窓枠を取り付けるので見た目がゴツくなって窓ガラスの面積が狭くなってしまうのと、施工に費用がかかるのがデメリットと言われます。
今回の水まわりでいうと、お風呂の窓は開閉しやすいカバー工法がよさそうだと思いました。
■窓をまるごと交換すれば雰囲気も一変できる
リフォームの自由度がもっとも高いのが「窓サッシ自体を交換する」という方法です。これについては説明はいらないでしょう。古い窓を枠ごと取っ払って新しくしてしまうという工事です。
手間とお金がかかるのがデメリットですが、そのぶん雰囲気をガラリと変えることができるメリットがあります。
我が家の離れはこのパターン。古い腰窓を撤去して大きなフィックス窓を設置しました。
ごらんのとおり劇的なリフォームが可能なので、雰囲気が一変するのが素晴らしいです。
今回の工事でトイレには換気扇を設置するのでもはや開け閉めは必要ありませんからサッシごと交換して一枚のフィックス窓にできたら見た目もすっきりした空間にできそうです。
ちなみに、窓リフォームの4つの方法にはもうひとつ「ガラスの交換」という選択肢がありますが、これはサッシをそのままにしてガラスのみを断熱性能の高いものに交換するという工法で、サッシに歪みのない比較的新しい窓におすすめとのこと。築50年越えの我が家のような築古家屋とは縁がない選択肢なので検討外としました。
■水まわりにエアコンを設置した理由
窓についてのリクエストも決まったので、最後に「断熱した空間をどうやって温めるか?」を考えねばなりません。これくらいの広さならば脱衣所暖房機を試すという選択もありえたのですが、僕はエアコンを選びました。
設置場所はここ。
トイレのドアの上です。
こんなところにエアコンをつけるなんて聞いたことがありませんが、もちろん明確な理由があります。それは夏に使用する冷房が関係しています。
実は水まわりに隣接している部屋は四方を別の部屋に囲まれていることもあって冷房がありません。
夏場はどうしても熱気がこもって暑くなりがちで、窓もないので外の涼しい外気を部屋に入れることもできません。
そこで、夏は水まわりとの間にある引戸を開けてエアコンを運転することにより、水まわりと一緒に隣室も冷やしたいと考えたのです。
一方、冬場は引戸を閉めて水まわりのコンパクトな空間だけを暖房で温めます。エアコンの暖房は寒冷地ではいまひとつ頼りないのですが、空間が狭いことと一時的に滞在する場所であることを考慮すれば十分だと判断しました。起床から就寝までエアコンをつけたままにしておけばトイレや洗面を使用するのも苦ではなくなるはずです。
かくして「洗面を設置したい」から始まった話は、水まわりを区切ってエアコンを設置する話にまで及んできました。
となると、気になるのは予算のことです。次回は、できあがったプランを元に工事業者さんに見積もりを出してもらいます。