(357)熱海のリゾートマンションを内見して感じたこと
前々回、リゾートマンションを選ぶうえで検討すべき諸条件をまとめました。
今回は、実際に物件を見に行ったときの体験談をお話します。
相続大家である僕は、熱海にリゾートマンションを取得するまで物件を購入したことがありませんでした。つまり、人生初の不動産購入です。
格安別荘を検討する友人に付き添って内見したことはありますが、いざ自分が購入するとなると心持ちはまったく別物で緊張します。
内見などのために熱海に赴くときの交通手段は電車でした。僕は運転が苦手なので基本的に渋滞の少ない夜間に移動することが多く、時間の読めない昼間の移動にクルマを使いたくなかったからです。
新幹線は使いませんでしたが、横浜からは東海道線で一本。世田谷の自宅からの所要時間は約2時間でした。電車移動の距離感を実感できたのはよかったです。
案内してくれたのは地元の不動産会社さん。セールストークもなく、のんびりした雰囲気の年配男性でしたが、気になることを聞くとけっこうさばけた答えが返ってくる方でした。
たとえば、とある海沿いの物件を案内してくれたときのこと。室内を見せていただく前にいきなり「ここは管理組合がうるさいんですよね」といきなりネガティブ要素をぶっこんできました。
たしかに、入口の掲示板を見ると注意書きがびっしり。けっこう細かいことまで書かれていて、ちょっと窮屈そうな印象を受けます。なんでも住人による自主管理が徹底しているんだそうで。
今でこそ安値で叩き売りされるリゾートマンションですが、半世紀前は裕福な人だけが手に入れられるステータスシンボルでありました。不動産屋さん曰く、その頃に物件を購入し、現在まで維持している人はプライドの高い年配のオーナーさんが多いんだとか。購入時に面接が必要な物件もあるなんて聞くと、さすがにたじろぎます。
今や自分も立派な中年ですが、年配の方から見れば若造もいいところでしょうから、こういう物件を買うと苦労しそうだな……と感じました。
ただ、一般的にリゾートマンションは住人による維持管理への意識が薄く、気がつくと修繕費用が足りなくなっていたりすることもあると聞きますので、こういう「うるさい」マンションのほうが物件を維持していく意識が高いのだとも言えます。
不動産屋さんによると、住人を野放しにしてしまうと民泊禁止の規約があるのを承知で勝手に始めてしまうなんて事例も起こるんだそうです。少々の苦情が出てもオーナーは関西地方などの遠隔地に住んでいて知らん顔でトラブルになるんだとか。
トラブルといえば、コロナ禍前には中国人が熱海の物件を買い漁った結果、文化のちがいによるマナー問題も目立ったと聞きました。
こんな話を聞くと、さまざまな種類の人間が集まってひとつのマンションを共有・管理するのは本当に大変だな、と痛感します。
うちの世田谷のマンションは自主管理ですが、たまに小さなトラブルが起こると大家である僕が双方の意見を聞きつつ落としどころを探って解決に導くように努力します。それは、横並びの入居者さんに対して立ち位置の異なる大家さんだからできること。
リゾートマンションにかぎらず分譲の場合は良くも悪くも全員が平等なので、トラブル解決は当事者間でおこなうしかなく本当に大変だろうなと思います。ちょっと前まで他人事だった問題も、リゾートマンションを購入することでぐっと身近に感じることになりました。
熱海には住人専用の温泉大浴場を備えているリゾートマンションもたくさんあり、僕もそういう物件をいくつか内見しました。ある物件では、ラッキーなことにたまたま清掃時間だったため、大浴場の中を拝見することもできました。築古物件にもかかわらず大浴場の清掃は行き届いていて窓からは海が見えました。温泉にはこだわりのない僕でさえ魅力的に感じました。
ただ、先日も書いたとおり、温泉などの共用施設は設備の維持や更新に費用がかかりますし、他の住人とのコミュニケーションも増えます。偏見を承知で言いますが、マンションのような小さいコミュニティにおいては我が物顔でのさばる主のような老人が出現しがちで、共有施設でそういう人と接する機会が多いのはちょっと……と感じたのは正直な気持ちです。
残置物がたくさんある物件も内見しました。写真は片付け前の山小屋で撮影したイメージですが、ここまでひどくなくても汚れた家具や不要品にあふれた部屋は悪い印象を与えるものです。
しかも「この物件の価格には残置物の撤去は含まれていません」なんて言われると、処分費用と手間を上乗せして考えねばならないので面倒でもあります。
かつてゴミの山だった山小屋を整理した経験とくらべればラクだとは思いますが、それでも手間は手間。どうせなら空っぽな物件に手を加えたいと思いました。
その点、僕が最終的に購入した物件は半分解体されたような状態で、写真のように躯体があらわしになっているところも目立つ部屋でした。良く言えばラフ、悪く言うと廃墟。
洗面台やキッチンも「いったい最後に使ったのはいつだろう?」と思うような汚れでしたが、まあ、それは清掃や修理でなんとかなる問題。
不動産屋さん曰く「こんな状態だからお安いんですよ」ということでした。たしかにすぐには人が住めない状態ですが、逆に余分なものが取っ払われていて解体費用が安く済むので、そこは非常に魅力的に感じました。
このあたりは見る人次第でしょう。お世話になっている税理士さんに報告した際には「まあ、アサクラさんは特殊ですからね」と苦笑されましたから、僕のような考え方はマイノリティなのかもしれません。
内見時には可能な限り共用部の状態も見れるとよいですね。僕が購入したマンションのロビーや廊下は「ザ・昭和」な雰囲気ではありましたが、清掃も行き届いており、うらぶれた雰囲気を感じさせなかった点は好評価でした。
管理人さんをつかまえていろいろ話をしたら、すごく感じがよかったというのも大きかったです。ご夫婦で管理をされているそうですが、こちらの質問にもフランクに答えてくれました。ちょっと勇気がいるかもしれませんが、内見の際にはぜひトライするのをおすすめします。
僕の場合は、結局、最初に気になっていた物件を購入したので、内見で考えを変えたりしたわけではなかったのですが、いろいろな物件と見くらべたことでメリット&デメリットがより明確になったのはよかったです。やっぱり物件は実際に見なきゃわからないものですね。
次回は、購入した物件の室内を詳しくご紹介します。