(378)アイアン塗料でタイルを塗装するなら塗りムラに要注意

前回、東急ハンズの店員さんに「タイルを塗装するための下準備」について教えてもらいました。
これを踏まえて、今回は実際にタイルの塗装にトライしてみます。
塗るのはこちらのキッチン。

壁に張られたピンクのタイルをはじめ、キッチン本体や吊戸棚など、全体をアイアン塗料のシルバーグレーで塗装します。
■まずはタイルにやすりがけして下準備

やすりがけする前のタイル。薄いピンク色が昭和を感じさせます。おそらく半世紀近く前のものと思われますが、目立った傷もなくきれいな状態で、タイルって本当に傷がつきにくい素材なんだと実感します。

120番の空研ぎ紙やすりをハンドサンダーにセットし、

前回教わったように同じ方向に向かってやすりがけをします。
しかし、実際にやってみると怖いくらい手ごたえがありません。いつもやすりをかけているときに感じるあの抵抗感がぜんぜんないのです。

当然、見た目的にもぜんぜん変化がありません。これって本当に削れてるのかな……と思って斜めから光の当たる表面をよく見てみると、

タイルの表面にわずかに筋状の傷がついていました。

やすりが当たりやすい角にも傷がついています。

やすりがけを続けると徐々に傷が広がり、光沢が消えていきます。
いちおう結果が出ていることはわかって安心したけれど、タイル一枚の光沢がなくなるまでまんべんなくやすりがけをするのは相当大変。
しかも、それなりに広いキッチンのタイルすべてにやすりがけするなんて、とてもじゃないですができません。早々とあきらめ、タイル塗装の部分を減らそうと決めました。

うまく塗装できなかったときのリスクも考え、水はねや油汚れがつきそうなメインの壁(赤で示した部分)には新しいタイルを重ね張りし、残りの部分=冷蔵庫やガスコンロやレンジフードで隠れる部分のみを塗装することにします。
■専用プライマーによる下塗りはわりとカンタン
やすりがけが終わったら、次はプライマーです。

前回もご紹介したアイアン塗料専用の下塗り塗料「ユニグランド」を使いました。
ちなみに、一般的にタイルを塗装する際には「ミッチャクロン」などが使われるようですが、
今回のように専用の下塗り剤があるなら、それを選んだほうがいいかもしれません。

さて、缶を開けると油性塗料ならではのきつめのシンナー臭が広がります。

あわてて窓を開けました。このプライマーも本番で塗るアイアン塗料も換気は必須。閉めきった環境で塗り続けると気持ち悪くなるので注意が必要です。

中身をよくかきまぜて、

容器に移したら塗装開始。

下塗りなのでムラなどは気にせずどんどん塗りました。

あっという間に塗装完了。やすりがけとくらべ、あっけないくらいラクな作業です。

せっかくなので、キッチン本体部分などにも塗装しました。

二時間ほどで乾きますが、表面に触れるとタイルならではのツルツル感がなくなったのがわかります。
■アイアン塗装は二度塗りが基本だが……
さて、ようやくアイアン塗料の出番です。

塗るのはシルバーグレー。やや青みがかった銀色が特徴です。

ハンズの店員さんに教わったように、一度目は専用のうすめ液でうすめて塗装します。

うすめ液は量が少ないのでたくさん用意しておくのをおすすめします。

いざ塗装開始。

プライマー同様、塗るのはあっという間でしたが、

うすめたせいか下地が透けた箇所が目立ちます。

タイル以外の塗装部分を見ても一度塗りでは不十分なことがわかります。

翌日、塗装面がしっかり乾いているのを確認して、二度目の塗装をおこないました。

今度はかなりしっかり塗料がのっていくのが感じられます。

下半分が一度塗りのみで、上半分が二度塗りが済んだ部分。ちがいがはっきりわかります。

二度塗りが完了し、しっかり色が付きましたが…

よく見ると、目地まわりなどに塗り残しがあるのに気づきました。

その部分だけ、小さい筆でタッチアップ。

気になったところを直すとキリがなく、けっこう塗りました。

キッチンの他の箇所も二度塗りしてアイアン塗装完了!のはずだったのですが……
■アイアン塗料をムラなく塗るのは難しい
翌朝、乾いたあとの壁を見てショックを受けました。

タッチアップして追加塗装した箇所がまわりになじまず、乾いた後も塗りムラが目立ちまくっているのです。
そう、アイアン塗料は重ね塗りしてできた立体的な質感を楽しむ塗料なのをすっかり忘れていました。先日ご紹介した「コンクリートエフェクトペイント」や珪藻土ペイントなどのように、気になる箇所を追加で上塗りしてもムラが目立たずなじんでくれる塗料ばかり塗っていたせいか、油断してしまいました。

これは以前、離れの階段を塗ったときの写真。こういうこってりとした仕上げが可能であるということは、塗りムラがかなり出やすいということでもあります。
今回のように塗り残しをタッチアップすれば、そのぶんだけが塗膜が厚くなり、はっきりムラとなってしまうのです。

この仕上がりにはガマンならないので、三度目の重ね塗りをすることにしました。
三度目で失敗すると自暴自棄になりそうなので、慎重に作業に臨みます。

使うのはこちらの10センチ幅の大きめのハケ。

タイルの幅とピッタリなので、一列ずつ塗装でき、ムラができにくいと考えたわけです。

ハケに塗料をつけすぎないように気をつけたら、

慎重にスーッと塗っていきます。なるべく一筆で塗るようにこころがけ、ハケをタイル面から離す際には目地部分を狙って、ムラが目立たないように注意しました。

塗装後。けっこう神経を使う作業でしたが、丁寧に塗ったおかげでかなりきれいに仕上がりました。

離れて眺めてもこのとおり。

塗装前(左)と塗装後(右)のちがいをくらべるとタッチアップの箇所が目立たなくなったのがわかります。「アイアン塗料を平らに塗りたいときはムラに細心の注意が必要」というのが今回の教訓ですね。

というわけで、無事にタイルを塗装することができました。しかし、しょせんは素人仕事なので、この塗膜がどのていど持つのかは未知数。今後、変化があればレポートしたいと思います。
次回は、塗装をあきらめた部分にタイルを重ね貼りします。