(387)【日刊Sumai再録】大家としてフィジカル的にもっともツラかった水道トラブル

トラブルや失敗

今回はひさしぶりに世田谷のマンションのお話。過去の「日刊Sumai」の再録記事をごらんいただきます。公開当時のタイトルは「深夜に水道が故障!業者に教わったまさかの解決策とは?」(2017年11月29日公開)。

故障は故障でも「FMバルブの故障」というかなりマイナーなトラブルについての記事です。

文中にも説明がありますが、「FMバルブ」は貯水タンクに一定量の水を貯めておくようにするための装置で「定水位弁」とも呼ばれるそうです。

この「FMバルブ」が壊れて貯水タンクに貯める水のコントロールが効かなくなり、水があふれて出してしまい……というのがトラブルの概要。どうやって対応したかは記事をお読みいただくとして、なかなかにツラいお仕事でした。

なお、当時の原稿には編集サイドが用意してくれたフリー素材写真が挿入されていましたが、再録にあたってそれらを削除し、僕が撮影した写真に新しいキャプションを添えて掲載していることをお断りしておきます。


***


【深夜に水道が故障!業者に教わったまさかの解決策とは?】


こんにちは、「なんでも大家」のアサクラです。

最近、リノベーションに関する記事が続いていたので、「大家ってインテリアデザイナーみたいな仕事で楽しそう」と思われた方もいるかと思います。

今回はそんなみなさんの期待を裏切る、大家のツライお仕事「水道トラブルの対応」について書きます。


■水道管から謎の音が!? 貯水タンクから水があふれだし、パニック寸前に!

あれは、まだ肌寒さが残る春の夜のことでした。夜9時頃でしょうか、集合ポストに郵便物を取りに行くと、わきに設置された水道管から「ザーッ」という耳慣れない音がしています。

「あれ? いつもこんな音してたっけな?」

そう思っていると、たまたま帰宅してきた入居者の方もけげんな表情を浮かべます。

「なんか変な音してますね」

マンションの水道管
※後日あらためて撮影した写真。

でも、水道管の周辺を見まわしても、目に見えて「なにか」が起こってるわけではありません。ひとまず様子を見てみるか……そう考え、部屋に戻りました。

ええ、ほんとうはわかっていたんです、なにか異常なことが起こってるのは。でも、実際に困っているわけではないし、明日の朝、業者さんに相談すればいいなと思って不安にフタをしていたんだと思います。

でも、30分後に、もう一度様子を見に行くと、もはや目を背けようもない現実が待っていました。

貯水タンクのトビラ
※後日あらためて撮影した写真。このトビラのスキマから水があふれ出ていた。

貯水タンクのトビラの隙間から水があふれてきているのです!これは明日の朝どころか、一刻を争う事態です。

慌てて24時間対応の水道業者を呼ぶべく電話をかけました。30分ほどで到着するとのことでしたが、いてもたってもいられません。

貯水タンクのドアを開けて中を確認しようとしたのですが、先だって行った外壁修繕の工事で塗ったペンキのせいで、鉄のトビラが枠に張り付いて開きません。

こんなときに限って……イライラしながら工具箱をひっくりかえし、マイナスドライバーを取り出すと、枠とトビラの間の塗膜をぐりぐり断ち切り、ようやくトビラが開きました。

すると、貯水タンクから水があふれだし、水浸しになって水没状態になっていました。ドバドバとあふれた水は、すでに道路にまで流れ出しています。

いったいなにが起こってるのでしょうか?


■水道業者さんは語る!“水のトラブルは夜起こる”

午後11時、水道業者さんが到着しました。その方は現場を見るなり、開口一番「イヤな音してんなぁ」と言って顔をゆがめました。こちらの不安はますます高まります。

なにが起こっているのか聞くと、ざっくり可能性は二つとのことでした。

貯水タンク
※後日あらためて撮影した写真。このタンクから水があふれてきた。

ひとつは貯水タンクのなかにある、一定量まで溜まるとこれ以上水が流れ込まないようにする仕掛けがうまく作動していない可能性。

もうひとつは水道管から貯水タンクへの水の供給をコントロールしているFMバルブが壊れている可能性。

どちらにせよ、とりあえずは水を止めないといけないので、業者さんがバルブへと通じる水道管のハンドルをしめて閉じると、ずっと流れていた「ザーッ」という音がようやく止まりました。

止まったということは、一時的にマンションに水が供給されない状態ということであり、貯水タンクにある水のみでまかなうということです。

「貯水タンクの水が減ってくれば中を見られるので、少し待ちましょうか」

待っている間、いろいろ話をうかがっていると、水のトラブルの大半はこの時間に発生するという話を聞きました。

月夜

やはり、夜はみなさんがお風呂や料理で水をよく使うピークタイムのひとつで(もうひとつのピークは出勤前の朝)、必然的に水道管への負荷が増大しリミットを超えて壊れてしまうことが多いそうです。

「笑い話みたいに聞こえますけど、シャンプーを頭で泡立てたところで、水道が止まったなんて話も聞きますからね」

いや、ぜんぜん笑えないです、それ。


■管理人、バルブになる!? まさかの手動操作で朝まで寝られないことに…

ようやく貯水タンクの水が引き、業者さんが中をのぞきこむと……

「あ~、貯水タンクのほうではないですね。じゃあ、バルブかあ……」

またも渋い顔を浮かべる業者さんに、薄らぎかけた不安が再び高まってきます。バルブをチェックする業者さんに背中から思わず話しかけてしまいます。

あの……直るんですかね?

「う~ん、これは取り替えないとダメですね」

取り替える?ってことは……、

「明日の昼に工事になります」

がーん。

それまで、どうすればいいんでしょうか?

FMバルブ
※修理後に撮影したバルブ。保温材が巻かれていてわかりにくいが矢印の部分がバルブ。

「このFMバルブっていうのはですね、貯水タンクの水が減ったら水を送って、いっぱいになったら閉じるっていう役割をしてるんです」

ふむふむ。

「このバルブの近くにハンドルがありますよね。これをひねれば水道管を開けたり閉じたりすることはできるんですよ」

なるほど……え? それってもしかして……。

「朝まで手で開けたり閉じたりすれば、通常どおりに使えます」

この瞬間、安堵感と疲労感がいっしょに襲ってきたのを覚えています。

マンション中の水道が止まるような最悪の事態を避けることができたという安堵感。

これから明日の昼まで寝ずに「人力バルブ」にならなければならないという疲労感。

ああ、今夜は寝られない覚悟をしなければなりません。

幸い業者さんは非常にテキパキとした方で、早速、翌日の昼シフトへの引継ぎの電話をかけると、バルブ交換のための手続きをしてくださり、「じゃあ、朝までがんばってください」という励ましの言葉を残して帰っていきました。


■なんでも自分でやる大家が、管理委託を心の底からうらやましいと思うとき

こうなったらしかたありません。見ていた感じだと、貯水タンクの水は、水の使用量が減る夜中になればなるほど、減りが遅くなってきます。

水栓のハンドル
※後日あらためて撮影。このハンドルの開閉で貯水槽の水量をあるていどコントロールできる。

ですから、深夜なら数時間おきくらいにバルブを開きにきて、水が十分に供給されたら、また閉めれば大丈夫そうです。うっかり寝てしまうことのないように、待ち時間にテレビドラマでも見て夜を明かすことにしたのですが、いくら面白くても、ぜんぜん頭に入ってきません。ひとまずやることははっきりしたとはいえ、トラブルが起きたショックで心がザワザワしているのでした。

よせばいいのにネットでマンションの水道トラブルについて調べてしまい、バルブの不具合以外にもさまざまなことが起こることを知ってしまい、ますます憂鬱になりました。

こういうとき「自主管理はツライなあ」と心底思います。世の中の経済的に恵まれた大家さんたちは物件の管理を管理会社に委託していますが、もし自分もそうしていればあったかい布団にくるまって寝れたのに、と思ってしまうのでした。

結局、自室とバルブを往復しつつ悶々と夜を過ごし、朝になって再び水道が多用される時間をなんとか乗り切りました。

翌朝10時、昼シフトの業者さんがいらっしゃって現場を見てくださいました。やはり、昨晩の見立てどおりFMバルブの故障だそうです。

予定どおり、交換することになったのですが、実はこのあと、さらなる衝撃の事実が発覚することになるのでした……。


***


寒い夜にバルブを閉めたり開けたりは大家としての8年間の中でもフィジカル的にもっとも辛い体験でした。

次回はこの続きとなる「日刊Sumai」の再録記事。水道ポンプの交換の話をお届けします。

アサクラ

大家業。世田谷のマンションと東京西部の山奥にある小屋を管理&経営しています。最近は熱海に購入したマンションの一室をDIYで修繕中。ESSE online(エ...

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